2話 鑑定さん登場
少しグロい場面があります。苦手な方はご注意ください
か弱い女性一人相手にこの量は正直頭おかしいんじゃないですかね?
「......」
私の周囲には化け物達が今にも襲いかかってきそうなほどに殺気を放っている。
もう、いつ死んでもおかしくない感じだ。
「どうしよう......」
アニメの主人公とかはこんな逆境こそ燃えるとか言ってるけど実際にそう言う場面に遭遇したらいかに、苦しまずに死ねるかなんて考えしか思い浮かばない。
アニメの主人公はきっとマゾだよね。
「ん......?」
そんな事を考えていたのだが、周囲のおかしな事に気付いた。
魔物達は一向に襲いかかって来ないのだ。
まるで私を観察してるような、内側まで見られているような気持ちの悪い感じがする。
これは私が動いたら殺しに来るとかそう言う感じですかね? 怖くて指一本すら動かないけどさ。
一番近くにいる魔物は先ほどの巨大ネズミ五匹だ。
その内四匹は私から少し離れているがいつでも攻撃のできる間合いと言うかそんな感じの距離である。
一匹は私の目の前に頭を裂かれて絶命している。
「鑑定とか出来たりしないのかな......」
ふと、そんなことを思って私の前にある巨大ネズミの死体をじっと観察すると、視界に文字が浮かんできた。
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ジャイアント・マウス
魔物
レベル23
スキル:破砕
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名前は見たまんまか。
やっぱり魔物であってるんだね、レベル23か。結構高くないか? やっぱり上限は99なのだろうか?
とりあえずもう少し詳しいことが知りたい。
おや? どうやら鑑定で見えた情報も鑑定出来るっぽいな。結構便利だ!
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ジャイアント・マウス
危険度 A
全地域に存在するグロウマウスの最終進化個体。
超集団で生活するグロウマウスとは異なり、一桁規模の群れで生活するようになった個体。
大きさや凶暴さも増しており、非常に危険な個体。
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は? いやいや、ナイフ1発で頭裂いたら死んじゃったじゃん。え? これはナイフが強いって認識で合ってるよね? 私が強いってことだと嬉しいな!
あ、私を鑑定したら自分の事とかわかるんじゃないかな。
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アスカ・ニシミヤ 女性 18歳
魔女
レベル4
HP60/60
MP1500/1500
STR12
VIT8
スキル
火魔法Lv.10、水魔法Lv.10、風魔法Lv.10、土魔法Lv.10、雷魔法Lv.10、光魔法Lv.10、闇魔法Lv.10、火耐性、水耐性、風耐性、土耐性、雷耐性、光耐性、闇耐性、鑑定Lv.10、魔力操作、魔力感知、剣術(短剣)Lv.1、幸運Lv.2
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思った通り、できた!
それにしても18歳? 若返っているのかな?
と言うことはシュバルはそれなりにマシな容姿にしてくれたってことか。早く鏡を見たいな。
でも、最後の幸運ってなんだ、バカにしてるのか。現状を見ても幸運だね、ありがとう。とか言えると思っているのか。
それとも今まで殺されなかったことに対して幸運だと思えってか......?
でも、 チート性能なのは間違いないと思うのだ!
こんなにMPも魔法もあるのにレベル4とはね!多分さっき巨大ネズミ倒した時に少しレベル上がったのかな? それに、もっと強くなれるなんて夢のようじゃないか!
......今のこの状況を抜け出せることが出来たならね。
つい興奮してしまったが今も周りには殺気をだだ漏れさせている魔物達で溢れかえっているのだ。
あ、こいつらを鑑定してみたら突破口とかわかるかな?
早速鑑定してみるか!
ブワッ!
「くぅっ!」
何これ!? 何これ、何これ!?
一気に情報が頭の中に入ってきて情報過多で頭吹っ飛びかけたよ!!
うぅ、まだ頭痛いし......そりゃそうだよね、こんだけいれば頭が痛くなるのもわかるよ......うわ、HPが少し減ってるし!
うん、とりあえずわかったことは、ここにいる魔物ほとんど最強クラスだわってことだけ。
魔法さえ! 魔法さえ使えれば! とか思ったけど私の魔法で倒せるかすら怪しいんですけど。
そんな時、痺れを切らしたのか一匹のトカゲ兵士みたいなやつが叫びながらこちらへ迫ってきているのが見えた。すごい速い。
その勢いで手に持った大型の鉈で私を切りつけてくる。
あ、死んだ。相手が振りかぶった瞬間に悟ったね。
しかし、次の瞬間目の前まで迫っていたトカゲ兵士は足元が縺れてバランスを崩したのだ。
そのお陰で軌道がずれて頬を掠める程度になった。
「あっぶな〜、これが幸運......?」
その隙に少しトカゲ兵士から距離を取ろうとした瞬間、周りから身が竦むほどのけたたましい雄叫びがそこかしこであがる。
「「ぐおぉぉぉお!」」
「「くいぃぃぃい!」」
「「ごおぁぁぁあ!」」
「「ぎゅぁぁぁあ!」」
「「きえぇぇぇえ!」」
咆哮だけで衝撃波が生まれるほどの凄まじい咆哮の数々。
「うっるっさっ!」
その轟音に耳を塞いで顔を顰める。
次に訪れた衝撃は足元からだ。
今まで動かなかった魔物達が次々と私に迫ってくる。それも尋常じゃないほどのスピードで。
その大量の脚が地面を踏みしめる衝撃は地震の比ではないくらいの揺れが私を襲う。
「わっ! わっ、わっ!」
その揺れに倒された直後、私が立っていた場所に剣が振り下ろされる。ズガン! と剣よりも棍棒のような音を立てて地面を砕く。
目の前の地面に大きな穴、それも剣によって作られるほどの怪力の持ち主と目が合う。
次の瞬間私は逃げることに徹する。
「無理! 無理無理無理無理! こんなの無理でしょ!」
敵に背後を向けたその先にも魔物はいた。
大きく口を開けてこちらを噛み殺そうと迫る牙。無意識に体を逸らす事に成功したが右脚の太ももから下を持っていかれる。
「ぐぅぅっ!!」
痛い。
痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
足から体力の血が出てる。
HPがどんどん減っていってる。
前世では痛みなんて感じる前に即死したからよくわからなかったが、死に直結する痛みというのは言葉に言い表せないほど痛い。ただひたすらに痛いのだ。
その痛みでのたうち回っていたら次は拳が私を襲ってきた。
転がりながら回避したつもりだったのだがあるはずのものが無くなっていた。
右腕がえぐり取られていたのだ。
気付いた時には拳による攻撃の余波で、吹き飛ばされている途中だった。
HPが1桁まで減ってる。
もうダメだ、死ぬのか。
そんな考えを浮かべていると空中に佇む龍が大きな口を開けブレスを放ってきた。
「死ぬのか」
全ての命を刈り取るであろうブレスが迫る中、思考はとてもゆっくりとしたものだった。
また、死ぬのだ。
こんな魔物に蹂躙される。二度目の人生、こんな所で終わってしまうのか。まだ転生させられてから一時間も経っていないのに。
嫌だ。まだ死にたくない
まだ何もしてない、死にたくない。生きたい、生きる。まだ、死ねないっ!
次に視界に写ったのはどこか見覚えのある空間だった。
夜遅くに更新すみません。