突然の地獄
お久しぶりです。というか、久しぶりすぎて忘れている方もいるでしょうけど、何年かぶりに小説を書いてそれを投稿しようと思います。
久しぶりなのでつたない出来かも知れませんが、楽しんでいただけると幸いです。
武谷幹夫。
5月5日生まれの17歳で、ごく普通の高校2年生。容姿普通、成績は中の上、運動神経は良い方だが運動部の生徒には勝てない。
帰宅部。趣味という趣味もなく、部屋でスマホから漫画を読むかゲームをするだけの毎日を送っていた。親からは毎日のように勉強しろだの、身体を鍛えろだの煩いのだが、正直いってそんなに乗り気ではなかった。陽キャでもなければ陰キャというわけでもない、目立った特徴を持たない一般的な男子高校生を絵に描いたようなモブ。
そんな俺の、否、俺達の日常がある日突然崩壊し、この世界が地獄と化するなんて一体誰が想像しただろうか?
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
「幹夫!」
「・・・・優希か」
「何ぼんやりしてんのよ。もうすぐ1時間目が始まるでしょ」
「ワリィ」
あまり思考が働いていない俺に、隣の席に座る超絶美少女が呆れた表情で声をかけてきた。いつもの事だ。
彼女の名は出島優希。
容姿端麗で成績優秀、友達も多くに描いたようなキラキラした陽キャ女子で、俺が通っている連勇高校のマドンナ的存在。長く艶やかな黒髪とベージュ色の瞳、そして抜群のスタイルといった神様が気合を入れたみたいに完璧美少女。
そして、俺とは幼稚園の頃からの幼馴染という名の腐れ縁。
「どうせまた遅くまでこっそりゲームでもしてたんでしょ」
「違う。何となく寝付けなかっただけだ」
事実だ。昨夜は何となくゲームする気も、漫画も読む気にもなれずにすぐにベッドに潜り込んで眠りに就こうとした。
けれど、どういう訳かなかなか寝付く事が出来ず、気付けば日にちを跨いで夜中の3時であった。
「寝付けなかったって、何で?」
「分からない。ただ、昨夜は何だか背筋が凍りつくような感じがして、すごく嫌な予感がしていて・・・・・・」
「何それ、意味分かんないんだけど」
「俺も、自分で何を言っているのか分かんない」
だけど、あの日は何となく嫌な予感がしていた。その嫌な予感が何だったのかは、何故そう感じたのかも分からないままであった。
だが、それを母さんに言っても呆れられてしまった。当然だ。自分でも何を言っているのか分からないんだもん。
「まったく・・・・・・そんなんじゃあんたの将来が心配だわ」
「お前に心配される筋合いはない」
学校では男女問わず人気の高い優希だが、俺からすれば口うるさいだけの幼馴染でそれ以上でもそれ以下でもない。むしろ嫌いだ。正直言って関わりたくない。
「し、仕方ないから私が幹夫の、お嫁さんになって支えてあげるわ。幹夫って、私がついていないとダメだもんね」
「社会人になっても俺と一緒にいたっても良いことなんて何もないぞ」
「何なのよ!」
怒る優希だが、俺は別に優希に恋愛感情を抱いた事なんてなければ、仲の良い友人以上の関係を望んでいるわけでもない。優希は俺と将来結婚するつもりでいるが、俺はそんなつもりはない。こんな美少女を幼馴染にもって何を言ってんだと思うかもしれんが、優希と結婚するなんてまっぴらごめんだ。それが俺の偽りなしの本音だ。
「そんなことよりも、先生来たぞ」
「また誤魔化した」
ご機嫌斜めだな。放課後に一緒に遊んであげないと、いつまでたっても不貞腐れたままになって益々面倒になる。本当にこの女嫌だ。
「ま、放課後待たずに授業が終わった後にでも構ってやるか」
なんてことを小声で呟くと、教室に入ってきた先生の目の前に突然半袖半ズボン姿の小学生くらいの男の子が現れた。
「何だね君は?学校はどうした?何でここに来ているんだ?」
先生はその男の子に声をかけているし、クラスの連中はいつそこに男の子が立っているのかを疑問視する声が上がった。
だが、俺はその男の子を見た瞬間に昨夜感じた悪寒と同時に、言いようのない恐怖が全身を襲った。
逃げろ!
頭の中で誰かが俺に向かってそう叫んでいるように感じた。
「幹夫?」
「駄目だ・・・・・・近づいちゃダメだ!」
俺の声に気付いた先生が一瞬こっちを向いたが、その瞬間に男の子は先生に飛び掛かり、先生の首に思いきり嚙み付いてきた。よく見るとその男の子は、顔に生気が宿っておらず真っ白な肌をしており、目も虚ろになっていた。
噛み付かれた先生は、悲鳴を上げる間もなく顔から血の気が引いていき、あっという間に全身がミイラの様なカラカラになってバタンと倒れた。
先生が倒れると同時に男の子は離れ、生気の宿っていない目でこちらを睨みつけていた。よく見ると、男の子の身体が透けていて後ろの黒板が見えていた。
生きた人間ではない。
「ゆゆゆ、幽霊だあぁ!」
一人の男子生徒の声と同時に、周りにいた他の生徒たちが悲鳴を上げて一斉に立ち上がって逃げ出そうとしていた。
だが、幽霊はあの男の子だけではなかった。周りをよく見ると、年齢も性別もバラバラの幽霊が俺達を囲っていて、逃げまとう生徒たちに襲い掛かってきた。
更によく見ると、幽霊たちに殺された生徒や先生たちの身体からも魂のようのものが出てきて、ソイツ等までもが俺達に襲い掛かってきた。
「ちょっと!何なのよアレ!?」
隣の席に座っている優希は、現状に思考がついていけず座ったまま震えていた。
「・・・・・・クソ!」
動けないでいる優希の手を引き、俺は外に出る為に教室を駆け出した。幸い、相手は実態を持たない為捕まる前に駆け抜けていけば、相手の身体をすり抜けていく事が出来た。注意すべきは手と口。
「ちょっと幹夫!」
「いいから走れ!」
「でも、そこら中幽霊だらけだよ!」
確かに、突然湧いてできた奴だけでなく、ソイツ等によって殺された生徒たちの魂までもが幽霊になって生き残っている生徒たちに襲い掛かってきた。
「全員が幽霊になって襲い掛かってきている訳ではないみたいだが、この数は面倒だ!」
中にはこの世に留まらず、光の玉となって天に上るものもいた。むしろこっちの割合の方が多かった。
「じっくり見ると、普段から素行の悪い生徒や性格の悪い教師ばかりだな。それにしては数が多すぎだな」
「よくこんな状況で冷静に観察が出来るわね!」
「うるせぇ!」
優希がパニック状態にある為なのか、俺は自分でも恐ろしいくらいに冷静でいられた。
だけど、何とか外に出たはいいが辺りは死霊になった生徒や大人たち、更には上空にも数えきれないほどの幽霊がプカプカと浮かんでいた。
「信じられない数だわ・・・・・・」
「そりゃ、ここ何百年もの間に何十、何百、もしくは何千万もの人が命を落としていると思ってんだ」
事実、空に浮かんでいる幽霊たちは着物を着た人はもちろん、軍服や甲冑を身に着けている人までもいた。
「そんな・・・・・・」
「だけど、これはどうしたらいいんだ」
校舎の中だけでなく、木陰や空にもたくさんの幽霊たちで埋め尽くされていた。更には、その幽霊たちを狙って黒い人影のようなものまでもがそこら中にいた。
「まるで地獄だ」
この瞬間、当たり前だと思っていた日常は、俺達の住んでいた世界は突然何の前触れもなく地獄の世界へと変わっていった。
初めて書くローファンタジーですが、温かい気持ちで読んでいただけると幸いです。
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