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 映画館に向かう途中、純粋に気になった俺はキャプテンイタリアンさんに尋ねてみる。


「どうして俺のことがわかったんですか?」


 不意に名前を呼ばれたから無意識に反応してしまったが、あの時はまだ俺の顔を知らないはずだ。それなのにどうしてキャプテンイタリアンさんは俺が「優」だということがわかったのだろうか。


「ふぇ? それは......声だ! 声! たまたま優が独り言を話しているのが聞こえたんだ」 

「そうだったんですか。俺達運がよかったんですね。あの中じゃ探すのが大変ですから」

「そ、そうな」


 ただの偶然だったのか。それにしても、その反応。ちゃんと話聞いてたのかな?


「じゃあ、その髪は......地毛ですか?」


 サングラスのせいでよく見えないが、顔の作りの雰囲気は日本人っぽいし。しゃべり方も肌の色も普通なのに髪の色が金ってことは染めているのか? でも、金髪に染めている教師なんて聞いたことないぞ。


「そんなわけないだろ。これはかっ、染めているだけだ」

「そうなんですか!? キャプテンイタリアンさんの学校の校則は大分ゆるいんですね」


 うちの学校の校則は一般的だと思うけど、担任の鬼寺先生の指導は特別厳しいからな。校則がゆるい学校が少しうらやましいな。


「あっ......そ、そうだ。うちはゆるゆるだからな。私も髪を染めていにゅのだよ」

「にゅ? だよ?」


 すると、キャプテンイタリアンさんは大きな咳払いをし、前を歩きながらこちらを見ずに話す。


「あんまり質問すると女の子に嫌われてしまうぞ」

「す、すみません」

「ばか」

「え? 今なんか言いました?」

「だから! 質問をするな!」

「すみません!」

「ほら、チケットを買うぞ」


 んー女性と会話することはこんなに難しかったのか。今まで何も考えていなかった。これからは気を付けていかないと。


 券売機のところへ行き、俺はタッチパネルを操作する。


「それで今日は何を見るんですか?」

「んーじゃあ、選んでみろ」


 第一関門が来た。おそらくこの回答しだいで今後の展開が変わってくるだろう。ここは慎重にいかなければ。


 俺は上映中の映画一覧を見る。その中でパッと見て面白そうなものはアニメとアクション、サスペンスとアドベンチャー、そして恋愛映画だろうか。


 キャプテンイタリアンさんの性格からして好きなのはアクションとアドベンチャー映画だろう。ここは無難にアクション映画を選ぶか。


「これなんてどうですか? クレイジー・スピードってやつ」

「ほぉー面白そうじゃないか。優にしてはいい判断だ」


 よかった。アクションで正解だったみたいだ。


「チケットも無事買えたし、次はドリンクとフードを買いに行くか」

「あ、すみません。俺、先にトイレに行ってきていいですか? 漏れちゃいそうで」

「ったく。じゃあ、買っといてやるからドリンクを選べ」

「ドリンクですか?」


 こ、これは第二関門か? 選んだ飲み物で印象が変わるのだろうか。ここはブラックコーヒーとかを選んでかっこつけた方がいいのだろうか。


「え、えーっと......」

「ここはそんなに考えなくていい! 好きなものを選べ」

「え? そうなんですか? じゃあ、カルピスでお願いします」


 どうやら取り越し苦労だったみたいだ。


「普通のでいいんだな」

「はい。炭酸は苦手なんで」

「ふっガキだな」

「苦手なんだからしょうがないじゃないですか」


 炭酸が飲めないんじゃないからな。嫌いなだけだからな。


「わかったから。早く、行ってこい」

「はい。じゃあ、お願いしますね」


 そう言い残し、俺はトイレに向かう。


 それにしても、いつも通りだな。顔を合わせていてもいなくてもキャプテンイタリアンさんはキャプテンイタリアンさんだった。いつものように話し、いつものように笑う。それだけは変わらないようだった。


 これって、もしかして企画倒れじゃないか? キャプテンイタリアンさんを女性だと意識して接するって話だったのに。今まで全然意識していないぞ。


 もちろん、所々注意されていることには気を付けているけど、根本的なところが―


 その時、俺は予想外な人物を目にする。


「椎名!?」

「青井くん?」



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