転生者食堂~異世界の料理、作ります~
このシリーズは設定厨が思い付いた設定を元に第一話分だけでっちあげてみた、というシリーズです。
設定だけなので続きとか考えていません。
もし、続きが読みたいという奇特な人が居たら、適当にパクって自分で書いてみてください。コメントに作品URL張っていただければ読みに行きます。
自由貿易都市ニヌンの宿場外の片隅に、不思議な食堂がある。商業ギルドでそんな噂を耳にした。
「おや、旦那、例の食堂に興味がおありで。行くなら護衛の冒険者を一緒に連れて行くことをお薦めしますよ」
ギルドの仲買長が言うには、一部の冒険者にだけ通じる符丁のようなものがあるらしい。高級店には上流貴族や豪商だけに通じる特別サービスとしてそういう工夫をする店もあるが、冒険者相手というのは珍しい。
今回、道中の護衛に雇った冒険者は変わり者だったが、素晴らしい働きだったし、慰労も兼ねて夕食をごちそうすることにした。
「店の前に縦長の旗があるからそれを目印にしろ、と言っていたが……あれかな?」
縦長の旗と言うから、紋章旗のようなものを想像していたが、L字型の細長いポールに固定された『縦長の旗』といか形容しようがない布旗だった。
「テンセイシャショクドウってマジか……」
護衛の冒険者の一人、コーノがその旗を見て驚いていた。魔法文字とも違う見たことのない言葉で何か書かれているのだが、どうやら読めるらしい。聞いたところ、彼らの故郷の文字だそうだ。ちなみに、あの縦長の旗は『ノボリ』と言うらしい。
店は至って普通の宿場の飯所で、そんなに高い店というわけでもないようだ。ただ、所々に見たこともない言葉の張り紙がしてある。
「珍味を出すのかと思ったら、メニューは普通だな。値段もちょっと高めだが高級というほどではないし」
「あー、そっちは普通の人向けのメニューだからだな。店員さん、『ニホンゴ』のメニュー持ってきて」
コーノが張り紙を指さして店員を呼びつける。そして、持ってきたメニューを見て、コーノは笑い出した。
「こりゃ傑作だ。何があるのかと思ったら、『サイゼリア』に『ココイチ』に『ジロー』に『ヨシノヤ』ときたか。くっくっく、やっぱテンセイシャって元は庶民ばっかりなんだな」
聞けば、この『ニホンゴのメニュー』に並んでいる品目のほとんどは、彼の故郷の店の名前だそうだ。彼の故郷では『チェーンテン』といって、たくさんの店で同じ味の料理を出すブランドがあるらしい。その中でも、特に安くて有名なところがメニューには並んでいるそうな。
国中で有名な店というと、高級店というイメージがあるが、安くて有名というはちょっと想像が付かない。
「面白そうだな、私も何か頼んでみようか。お薦めはあるかい、コーノ」
「んー、値段の割にそんなにすげーのが出てくるわけじゃあないぞ。俺は思い出補正があるから多少高くても懐かしむことができるけど、所詮はジャンクフードだ。舌の肥えた旅商人にゃあちょっと物足りないと思うぞ」
そう言ってメニューを見せて内容を軽く説明してくれた。確かに、一般向けのメニューに比べると全体的に価格は高い。
「あー、でも惜しいなぁ、なんでケンタッキーないんだよ」
「お客さん、テンセイシャだよね。食べたい料理があるなら料理長連れてくるから、ぜひ相談して」
コーノのつぶやきを聞いた店員は、そう言い残して厨房に居る店長を呼びにいった。
「コーノ、その、テンセイシャってのは故郷の国の名前か何かかい?」
「あー、いや、テンセイシャってのは、たしか、こっちだと渡り人って呼ばれてるんだっけか」
渡り人なら聞いたことがある。確か、この世界とは異なる世界からやってきた人間のことだったはずだ。噂では、凄いスキルを持っていて伝説的な活躍をするとか。なるほど、若くして優秀な冒険者だと思ったが、渡り人だったのか。
「ということは、ここの料理長も渡り人なのかな」
そんな話をしていると、先ほどの店員が店長を連れてやってきた。
「残念ながら私は渡り人ではありません。ただ、ちょっと変わったスキルを持っているんですよ。ちょっと失礼」
店長はコーノの手を取ると、瞳を閉じて精神集中を始めた。
「私のスキル『味覚共感』が発動しました。食べたい味を記憶をたどって思い出してください……そう、なるほど、骨付きの鳥の肉の揚げ物ですか。この味は……ハーブ系の混合スパイスかな。肉も脂身たっぷりで柔らかい……ならチークーのモモ肉が良さそうですね」
手持ち無沙汰にしている店員が、同じく状況がつかめていない私に店長のスキルを説明してくれた。
店長は他人の記憶の中にある料理の味をそのまま感じ取れるスキル『味覚共感』を持ってるそうだ。もちろん、料理の腕も一流で、豊富な食材知識でもって感じ取った味をものすごい精度で再現した料理を作れる、と。
ただ、再現のためには正確に思い出してもらわないといけないので、一度食べただけの絶品料理のような記憶のあやふやな料理は再現できない。つまり、何度も食べたなじみの料理限定の能力、ということになる。
しかし、なじみの味なんてものはいつでも食べられるからなじみの味なのであり、がんばって再現したところでたいして金にならない。そこで、こちらの世界にはない料理の味を知る渡り人に目をつけたらしい。
渡り人はユニークで強力なスキルを持っていることが多く、その能力を活かして優秀な冒険者となっているから、けっこう金も持っている。こちらの世界では食べられない味を再現すれば、高い金を払って食べに来てくれる、という寸法だ。
「そんな渡り人たちの思い出の味を再現したのが、この『ニホンゴのメニュー』に書かれている料理なのよ。私は読めないんだけどね」
そして30分後、コーノの目の前に『ケンタッキー』という骨付き肉の揚げ物が運ばれてきた。コーノは目を輝かせて肉にかぶりつく。
「うまっ!? マジでオリジナルバーレルそのまんまじゃん、うわー、懐かしい」
満面の笑顔とは、こんな顔のことを言うのだろう。コーノは年に似合わずどこか達観したところのある若者だったが、今は実に美味そうに肉を頬張っている。
せっかくなので私も一ついただいた。ハーブとピリ辛いスパイスの効いたとても濃い味付けの料理だった。なるほど、これはこれで美味いが、上流階級の貴族が好むような上品な味とはほど遠い。ただ、安酒のつまみにはとてもよさそうだ。
「いやぁ、比較的手に入りやすい食材で再現できて良かった。これはメニューに加えておきますね。食べたくなったらいつでもお越しください」
「おう、ひいきにさせてもらうぜ」
コーノはすっかりこの店を気に入ったようだ。なるほど、こういう商売か。上手いこと考えたものだ。
グルメものの基本路線がそのまままるっと使える設定だと思います。
第一話と言うことで、店にやってきた転生者ではない客の視点での描写になりましたが、本編はこの食堂で働く料理人や、転生者の客を主人公にするのが良いでしょう。
味を再現するために食材を探したり、再現する料理にまつわる思い出なんかを語らせても良いかもしれません。




