表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

10/15

吟遊詩人はダンジョンで生命を歌う~専業吟遊詩人がはずれジョブ? いやこれ無敵でしょ~

このシリーズは設定厨が思い付いた設定を元に第一話分だけでっちあげてみた、というシリーズです。

設定だけなので続きとか考えていません。

もし、続きが読みたいという奇特な人が居たら、適当にパクって自分で書いてみてください。コメントに作品URL張っていただければ読みに行きます。

 アーガス冒険者学校の卒業試験は、冒険者ギルドでの登録審査でもある。ここで優秀な成績を収めたパーティーは、Fランクを飛ばしてEランクとしてん冒険者活動を開始することができる。

 特に、実際に訓練用ダンジョンのクリア時間を競うダンジョンアタック試験は審査における重要度が高い。

 ただ、この試験に参加するためにはダンジョンアタックに適したジョブ構成のメンバーを同期の中から集める必要があるため、参加パーティーはそんなに多くない。


「ふむ、今年の卒業生は魔法使い系のジョブ適正者が少ないですなぁ。ダンジョンアタック試験の参加パーティーが少ないのはそのせいですかな」

 冒険者ギルド幹部が冒険者学校の主任教師から受け取った受験予定メンバーをざっと見渡してコメントを出す。

「ですが、その分参加するパーティーは即戦力級の選りすぐりですぞ。特に、1番目の『狼牙風風団』は大口も叩きますが実力は確かです」

「ふむふむ、なるほど。……おや、この『不死身合唱隊』というのは?」

「!? あ、あいつら性懲りもなく……。い、いえ、そいつらは無視してください。専業吟遊詩人4人というふざけたパーティーですんで」

「全員が専業吟遊詩人!? 今年は4人もいたんですか。珍しいですね」

「いや、例年であればジョブ適正判定で専業吟遊詩人が出た時点で入学させないのですが、今年から非常勤で講師をされているワマンチ導師が特別クラスを立ち上げるとおっしゃって……」

「ほほう、あの王立研究所から来られたワマンチ導師が……」


 冒険者学校の主任教師はよほど腹に据えかねていたのか、恨み骨髄とばかりに愚痴をまくしたてる。


「王立研究所でどんなに凄い研究をしていたのか知りませんが、所詮は現場を知らぬ頭でっかちの学者ですよ。スキルのシナジーがどうとか訳のわからないことを言って、ことあるごとにやつらに実地講義を引っかき回されてこちらは大迷惑ですよ。

 吟遊詩人の能力アップの魔法歌はMP消費がありませんからレベルが低いうちはそれなりに使えますが、レベルが上がれば魔法使いや僧侶がもっと有効なバフ魔法を覚えます。

 魔法歌は術者が歌っている間だけしか効果を現さず、歌っている間吟遊詩人はなにもできない。しかも、知能のあるモンスター相手だと敵も強化されてしまう。酒場で小銭稼ぎするくらいにしか役に立たないはずれジョブが、サブ、メインでもなく、よりにもよってメインサブが両方の専業なんて、冒険者を名乗ること自体が間違っている」


「はあ、大変なんですな……」

 冒険者ギルド幹部は主任教師の勢いに気圧されて生返事をする。


 吟遊詩人は冒険に使えるジョブ専用スキルが事実上魔法歌しかない。他のスキルは陽気な演奏で場を盛り上げたり、古代の伝承に詳しかったりといったダンジョン探索では余り役に立たないものばかり。その魔法歌も主任教師の言うように使い勝手も悪く効果もさほど強力とは言いがたい。

 故に、メインサブともに吟遊詩人のジョブ適性を持つ専業吟遊詩人は冒険には向かない、とされている。寄りにも寄ってその専業吟遊詩人だけのパーティーがダンジョンアタック試験を、というのは確かに正気を疑うところである。


 主任教師の言うとおり、狼牙風風団はなかなかの成績を上げた。駆け出しの冒険者だと2層のボスがやっとという難易度の試験ダンジョンの3層最奥の到達証を持って戻ってきたのだ。

「どうです、狼牙風風団は優秀でしょう」

「ふむ、しかし、3階層ボスのファットオークの討伐はしていないようですね。いったいどうやって到達証だけさらったんですかな」

「さ、さぁ、臨機応変に上手くやったんでしょう。なにせ、絡め手もできるバランスの良いパーティーですからな、狼牙風風団は」

「おや、何やら楽しそうな話をされておりますな、ぜひわしも混ぜていただけるかな」

 主任教師と冒険者ギルド幹部に、初老の導師が声をかけた。

「ワ、ワマンチ導師……なぜここに」

「ご挨拶じゃのう、受け持った生徒の試験結果を見に来ただけではないか。そろそろあやつらが出てくる頃かと思ってな。ほほ、噂をすればなんとやら」

 そう言うと、ワマンチ導師は、ダンジョン横の転送ゲートを指さした。

 ゲートから無傷の不死身合唱隊のメンバー出てくる。

「ばっ、ばかな……転送ゲートから出てくるだとっ!? あの無能共が5層のボスを倒したとでも言うのか!?」

「ほほう、確か、5層のボスと言えばゴブリンメイジとコマンダーゴブリンが率いるゴブリン小隊でしたか。あれを単独パーティーで倒すとなるとDランクも考えなくてはなりませんな」

 不死身合唱隊の面々は5層までの到達証に加え、3層、4層、5層のボスの魔石を試験官に提出する。


「5層ボスの討伐クリアを確認! 不死身合唱隊、ダンジョンアタック試験、歴代初の満点です」


 冒険者ギルドの関係者や、新人勧誘のために来ていた先輩冒険者たち、なぜかやってきていた王国騎士からどよめきの声が上がる。

 そんな中、異議を唱える声が二つ。


「い、インチキだ、なにかズルをしたに違いないっ!」

「そうだそうだ! 吟遊詩人だけのパーティーでどうやってモンスターを倒すんだ」

 声の主は主任教師と狼牙風風団だった。


「やれやれ、自分とこの生徒の能力も把握しとらんのか。それでよく主任教師なぞつとまるのぅ。

 そんなに疑問なら狼牙風風団と不死身合唱隊で模擬戦をやってみれば良いではないか」


 ワマンチ導師の鶴の一声で、急遽模擬闘技場がセッティングされることとなった。


「というわけで急遽開催となりました第24期アーガス冒険者学校卒業生最強を決めるこの戦い、実況はこの私、試験官、解説は王立研究所スキル開発室長兼冒険者学校非常勤講師ワマンチ導師、冒険者ギルド幹部でお送りいたします」

「よろしくどうぞ」

「まかせるがよい」


「さて、それではまずは狼牙風風団の方から見ていきましょう。パーティー構成は軽戦士狩人、格闘僧侶、盗賊軽戦士、魔法使い召喚士とバランスの取れた定番ジョブで固められています。冒険者ギルド幹部さん、いかがですか」

「火力とスピードに優れたパーティーですね。しいて弱点を上げるなら防御と回復が比較的苦手で一度崩れると脆い、というあたりでしょうか」


「なるほど。一方の不死身合唱隊は、なんと4名全員が専業吟遊詩人。さすがにこの構成は前代未聞ですが、ワマンチ導師、一体どうしてこのような編成になったのでしょう」

「うむ、ポイントはスキル構成をそろえることにある。メンバーのスキル表を見てみるが良い」

「なるほど、確かに4人全員のスキル構成がまったく同じですな。

 魔法歌は『命の賛歌』一つだけなのですな。あとは汎用スキルのHP強化、耐性強化、オートカウンター……はて、HP共有というスキルは初めて見ますな」

「これは、オートカウンターがメインのダメージソースということですか。しかし、汎用スキルのオートカウンターは発動率が低い上にダメージ倍率も低くて、ないよりまし程度の効果だったと思いますが……」

「そのあたりは試合を見てのお楽しみじゃ」


「おや、双方準備が整ったようですね、それでは試合開始です

 狼牙風風団は戦士職の3名が前衛に出て距離をつめます。魔法使いはどうやら高火力の呪文を使うようで長い詠唱に入りました」


「吟遊詩人に直接攻撃手段はないとみたんでしょう、最大火力で一気にけりをつける作戦ですね。まあ妥当なところでしょう」


「一方の不死身合唱隊はその場で動かず『命の賛歌』を歌い始めました。これは確かHPを回復する魔法歌ですよね。しかし、効果は微妙ということで戦闘で使われることはほぼなかったと記憶しておりますが……。

 おっと、真っ先に突撃した盗賊軽戦士がレイピアで渾身の付きを放つ! 不死身合唱隊は避けられない……いやまったく微動だにせず攻撃を体で受ける! これは大ダメージだぁ


 続く二人もそれぞれ相手を定め捨て身の全力攻撃。不死身合唱隊は誰一人反撃しない、これは袋だたきだ。

 これは一方的な展開に……おや? 不死身合唱隊、誰一人反撃しないが倒れもしない。防具もろくに着けていないのになぜか」


「ふふ、これがHP共有の効果じゃよ。

 このスキルはよく似たスキル構成のもの同士で発動するレアスキルでな、発動者のHPを全員で合計して共有するのじゃ。

 不死身合唱隊は全員がHP強化のスキルを5レベルで取得して居るから、HPだけは中堅冒険者のタンク職並みにある。それが4人共有で4倍になる」


「なるほど、聞いたことがあります。確か、双子のタンク職が初めて発動させたスキルしたか。ただ、全員が受けたダメージを蓄積するので、それぞれが殴られているとやはりすぐに倒れることになるはずですが……」

「なに、簡単なことじゃ。命の賛歌で受けたダメージ以上に回復して居るのじゃよ」

「そんなバカな、命の賛歌での回復量は僧侶の初級ヒールにも劣るものだったはずですが……」


「命の賛歌は術者の生命力と熟練度によって回復力が上がり、回復量も固定値ではなく最大HPの割合、いわゆるパーセント回復をする魔法歌じゃ。普通の吟遊詩人は後衛じゃからしてHPはたかがしれておるから効果も薄い。効果が薄いから使われず熟練度も低い」

「そうか、それでHP強化を5レベルも獲得しているのか……いやそれにしてもこの回復量は……」


「何も不思議ではないぞ、不死身合唱隊はHP共有でHPがタンク職の4倍になっておる。故に命の賛歌の回復力も4倍、最大HPも4倍になっておるからパーセント回復もさらに4倍で通常の16倍回復するのじゃ。

 あとはじゃな……、熟練度が高いので4人での輪唱が発動して効果もさらに4倍じゃ。あ、ちなみに、対象限定も発動して居るから回復するのは味方のみじゃぞ」

「つ、つまり毎ターン通常の64倍のスピードで回復続けていると……」


「うむ、一点特化で熟練度が高い故、単体の回復力も初級ヒール以上にあるからの。それが64倍じゃ。毎ターン王都の大司教にハイヒールの支援をもらっているのと同等の回復をしておる。攻城兵器で集中砲火でもせん限り彼らを倒すことはできぬよ」


「なるほど、これはまさしく不死身と言えるでしょう。

 しかし、回復しているだけでは攻撃が……ああーっと、ここで狼牙風風団の魔術師が倒れたぁ! 一体何が起こったのか!」

「魔法使いの全力ファイアーボールにオートカウンターが発動しましたな。

 汎用スキルのオートカウンターは5回に1回程度の確率で受けたダメージの半分を相手に与えるスキル。HPの少ない魔法使い相手なら半分のダメージでも一撃でノックアウトしても不思議ではない」


「なんと、これはいけません、狼牙風風団が攻撃を繰り返せばいずれオートカウンターの餌食になってしまう。それまでに不死身合唱隊のHPを削りきらないと狼牙風風団には勝ち目がありません」

「ふむ、これは詰んでますね。不死身合唱隊は耐性強化のスキルも持っていますからバッドステータスも受けない、魔法歌はMPを消費しないから無限に回復し続ける」



「狼牙風風団の残る前衛3名も全力攻撃がたたって1分経たずにカウンターで満身創痍、戦意喪失だぁ!

 一方の不死身合唱隊は元気に歌い続けております。これは勝負ありました、文句なし、不死身合唱隊の完・全・勝・利です!

 どうですか、解説のお二方、戦いの総括をお願いします」


「いやはや、見事の一言です。専業吟遊詩人がはずれジョブ? いやこれ無敵ですな」

「これがスキルのシナジーじゃよ。

 ダンジョンのモンスターは敵対者を愚直に攻撃し続ける性質を持っておるから、無限に回復しながらオートカウンターでダメージを与え続ければ勝てぬ敵は居らぬよ。経験を積んで魔法歌とHPをさらに強化すれば、スタンピードすら止めることが出来るじゃろうて」


「さすがはスキル研究の大家、ワマンチ導師ですな。ギルドから王立研究所に派遣を依頼して本当に良かった。

 まさか初年度からこれほどの逸材を育成していただけるとは、期待以上の成果ですぞ」

「いやなに、今年は本当に運が良かったのじゃよ。専業吟遊詩人が4名もそろうなど、二度とあるまいて」


 冒険者ギルド幹部とワマンチ導師の会話に、主任教師が割って入る。


「は、派遣を依頼したですと? どういうことですか、冒険者ギルド幹部どの」

「なに、冒険者ギルドから王立研究所に依頼して、ワマンチ導師を派遣していただいたのですよ。

 ここ最近の冒険者学校卒業生は、卒業試験で優秀な成績を取ることに特化しすぎて現場で使えないものが多くて困っていたのですよ。それで、幹部会議で監査とてこ入れが必要との結論になりましてな。

 監査も兼ねておりました故、冒険者学校にはだまっての形になりましたが、もう隠す必要はありませんな」

「そ、そんな……」

 主任教師はがっくりと崩れ落ちた。


 これが、後に数十年ぶりとなるSランクパーティーへと昇格する不死身合唱隊の伝説のはじまりであった。


昔、DS版のFF3で吟遊詩人×3+風水師というイロモノパーティーを使ってたんですが、それをなろう的にアレンジしてみました。

イロモノだけどMPもアイテムも消費せず無限回復するのでめっちゃ強かった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ