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17/20

魅せるチカラ、部分武装

アクションランキング2位となっていて正直びっくりしています!

これも皆様のお陰です!

ありがとうございます!

「はい、しましょう!」





…とはならなかった。



――――――――――

「………は?」

もう一度言われた。

それだけ意味が分からないと言った感じだ。



「だからさ、キスだよ!キス!」

自分で言ってて恥ずかしくなる。


「……あなたにほんの少しでも期待した私がバカだったわ」

抱えていた俺の腕を乱暴に振りほどき、サイクリードに向かって歩こうとする。


「ちょっと待てって!」


「黙りなさい変態」


「話を聞けっての!」

全く話を取り合おうとしない。



「…キスする意味が分からないわ」


「俺の全身武装フルアーマー

の発現条件なんだよ!」


「そんな話、信じられるわけないでしょう」


「ぐっ……!」

確かにそうだ。

全身武装フルアーマー

に発現条件という前提がまずおかしな話だ。



「それに……キスをするなんて、そんな軽々しくする行為ではないわ。

…なんとも思ってない人とするなんてごめんだわ」



「なんとも思ってないわけないだろうがっ!」

口調が荒れて怒鳴るように、それでも今の純粋な気持ちを正直に伝える。


「えっ?」

火野は驚いたような声をあげる。


「身をていしてサイクリードからの攻撃をたった一人で全て受け持つ。

そんな簡単には出来ない行動が出来るような女の子をなんとも思わないわけないだろ!」


「ちょ…!え、そ、その……あぅ」

火野は顔を赤く染めてもじもじする。


「でも…助けてもらっていて俺は悔しかった。

誰も守ることが出来ない自分を。


だからこそ今度は俺が助ける番なんだ!

誰でもないお前をだ!

火野!いや、エリス!」


エリスの肩を掴む。

「ひぅ…!え、え、え、な、なに………?」


「キスしてくれ」

キスする行為が軽々しくないことは分かっている。

だからこそ俺も覚悟を決めてもう一度伝える。



「「…………」」

両者無言となり、俺はエリスの気持ちを待つ。



そして、長い沈黙の中コホンとエリスが咳払いをした。


「私…ファーストキスなの」


「えっ?」


「だから…ちゃんと気持ちを込めて、してちょうだい」


「本当かっ!ありがとう!」

感極まって抱きしめる。


「ななな、なに抱きしめているのよ…!」


「あ、すまん…」

ばっと手を離す。


「べ、別にいいから…早くして……」


「…分かった」

俺はエリスの肩を掴み直し、顔を近づける。



「んっ………!」

そして俺はエリスと口づけをした。

唇に触れあう確かな感触。

柔らかくほんの少しの甘さを含んでいた。

鼻をくすぐるエリスの匂い。

心臓が激しく動いてるのが分かる。



「んっ…ふあぁ……」


五秒間ほどしただろうか。

少しずつ口を離していく。


「っ……!」

すると急激に感じる身体の変化。

身体の内側から溢れだす熱。

雷に打たれたように身体が痺れる。

しかし嫌な気持ちにはならなかった。

それどころか、どこか清々しくなっている自分がいる。


身体への痺れが止まり、頭の中に流れる全身武装フルアーマーの真名。




「……刀鞘くん」

エリスの目はトロンとしている。


「もう大丈夫だ。

これでエリスを助けることが出来る。

…けど大事なファーストキスを奪う形になっちまった」

守りたいからとはいえやり過ぎたのではと思ってしまう。



「気にしなくてもいいわ

ちゃんと私を大切に思ってることも伝わってきたし、それに…ちょっと嬉しかった」


「エリス…」


「だから――――ファーストキスを奪った責任は取ってもらうわよ」

有無を言わせないエリスの言葉。


「わ、分かった」

迫力に負けて素直に頷くことにした。


「それじゃあの化物をさっさとなんとかしてきなさい」

サイクリードは俺たちに興味を無くしたのか広場をあとにしようとする。


「…ああ!」

俺はサイクリードの方を向く。




「ふう……」

一度目を閉じて集中し、呼吸を整える。



「――――よし」

あせる気持ちを抑えその真名を告げる



ソウル命令コマンド

黒装こくそうッ!」



………………………………………………………………………………………………………………………………………………………?






「何も……変化しないぞ……」

自分の身体を見ても何か変わってる風には見えなかった。


「どうなってんだ…?」

自分の身体の変化を感じられない。

もしや失敗したのだろうか。

最悪の状況を脳裏をよぎる。




『それは完全に封印が解けたわけじゃないからよぉ』



「ッ!?」

突然聞こえたその声には聞き覚えがあった。


「さっきの女の声…

どこから話しかけてんだ?」

見渡してもそれらしく人影はない。


『あなたの頭の中に直接話しかけてるの。

封印が少し解けたおかげで其方と此方で会話も可能になれたわ♪』

やはりさっきの光景は間違いではなかった。



「そんなことより完全じゃないってどういうことだ?」

驚きはしたものの、サイクリードを倒す方が先だ。



『簡単に言うと呪いの解けたのは一部でしかないの。

つまり使えるチカラもその一部ってわけよ…ふふ』



「でもその一部でさえ発現しないってのはどういうわけだ?」

説明の通りならその一部は使えるはすだろ」



『さっきあなたが唱えたのは全身武装フルアーマーの名前。

でも一部となると呼び名も違うし唱える言葉も違うのよ』



「呼び名…?」


『ええ。

その名も部分武装セクションアーマー


本来、全身武装フルアーマーは機動力に優れているけど、隠密行動をするときだと、

かえって目立つのよ。

そんなときに使われるのが他でもない部分武装セクションアーマーってわけ。

でも全身武装フルアーマー

ほどの威力がないからめったに使われない…って習ったでしょ?』

すまんが身に覚えがないな。


「つまり呼び名を変えればいいんだな」



『そう。

ソウル

命令コマンド

ではなく

スピリット

命令コマンド

全身武装フルアーマーの真名の後ろに“蛇”って付け足したら発現するわよ』




スピリット

命令コマンド…」



『それともう一つ、とても…とても大事なことを伝えないといけないの』



「…なんだ?」

声色が真剣さを増す。



『私の名前…クローリアっていうの、短くクロアって呼んでね。

覚えてね絶対に♪』


「…………それだけか?」

その言葉にどうしても気が抜けてしまう。



『ええ♪

……それにさっきのキス、嫉妬しちゃったわぁ。

あんなに情熱的にしちゃって…ふふふふふ』


「そ、それは、その…雰囲気で…はい」




『まあ今回だけは許してあげましょう。

重たい女は嫌われるからねぇ♪』



充分重いです、とは言わないでおこう。


『言葉にしなくても伝わってるわよ?』



「うっ…すみません」



『いいわよ別に♪

それより早くあの汚い汚物を倒してきなさい』

サイクリードの事を言ってるのだろう。



「ああ…任せとけ!」



気を取り直してもう一度集中する。



スピリット

命令コマンド


黒装蛇こくそうじゃッ!!」


右腕が急速に熱くなることを感じる。

すぐに熱を保ったまま、光の粒子が右腕を包む。

部分武装セクションアーマーが展開する。




「これが…部分武装セクションアーマー…」


見た目は硬質化されたプロテクター。

指の関節は簡単に曲がるし窮屈な感じはしない。

色は純粋な赤色。

表面は網目が広がっていた。



『そうよぉ。

そのチカラが黒装のほんの一部ってわーけ♪』



「すげえ……!」

俺はそのチカラに歓喜を上げる。




「ガアアアアアアアアアアアアァァァッッ!!」

サイクリードは咆哮を上げ、翼を広げている。



「っと、そうだった。

今はあいつをなんとかしねーと」

サイクリードの雄叫びを聞き、気持ちを切り替える。



「―――――行くぞ!」


サイクリードに向かい地面を駆ける。

全身武装フルアーマー

部分武装セクションアーマー

には恩恵として肉体向上も備わっている。

普段の何倍ものスピードで迫る。



「ギ、ガァァァ!」

接近に気づいたサイクリードは俺に向けて右腕を振り下ろす。


「おおおおおおおおっ!」

駆けた勢いを活かし、滑り込むようにサイクリードの右腕の下を通過する。



『サイクリードの腹部は強固な鱗で覆われていないわ。

狙いどころはそのね』

クロアはそう言ってサポートをしてくれる。


「よっしゃあああっ!」

足に力を込めて軽く数メートル飛翔する。

目前に迫ったサイクリードの腹を右の拳で叩きつける。




「グ、ガッッッ!」

サイクリードは少し苦悶を上げる


『効いてるみたいね~♪』


「そう、みたいだな」

ゆっくりと着地する。

どうやらエリスのように炎で攻撃するより直接叩いた方がダメージが大きいようだ。

これは運が良い。



「もう一発叩き込む!!」



「ギギギギギギギギッッッ!!!」

俺がもう一度飛び込もうとすると、サイクリードはとっさの判断からか俺との距離をとる。





『今ので警戒されたようね』


「ぽいな。

とりあえずもう一度胸元まで近寄るか」

追い討ちを掛けるため、サイクリードとの距離を詰めようとする。



「ガアアアアアアアアアッッッッ!!!」

するとサイクリードは乱暴に両腕を振るう。

駄々をこねる子供のように周囲を乱暴に破壊する。



「っと!…ちょっと近づけねーな」

足を止め距離をとる。



『なら片方の腕を使えないようにすればいいわよ♪』



「軽く言ってくれるが簡単にはいかねーだろ。

てか、どうやって使えないようにするってんだ?」



『簡単よ。

サイクリードは人間と同じように腕の関節があるし痛覚も同じ。

そこを狙って痺れを起こさせるのよ。

それにサイクリードは人間と違って関節は比較的に脆いし…もしかしたら砕けるかもしれないわね」

クスクスと笑いながら提案してくる。



「そんなことよく知ってんな」



『まあねぇ♪』



「…まあ、その案に乗るか」

狙うは左腕の関節。

回り込む必要もあるから多少危険ではある。


…だがうじうじ考える前に行動する。


そしてサイクリードの正面に向かって走る。



「ガアアアアアアアアアッッッ!!」



「おおおおおおおおおおっっ!!」

サイクリードの乱雑な攻撃を避けるように右に左に転がりながら一発も食らわず、隙を探す。


そしてサイクリードは左腕で殴りかかってくる。



(ここっ!!)

サイクリードの左腕に向けて斜めに飛ぶ。

スレスレでかわし、サイクリードは左腕を戻そうと腕を後ろに下げる。

下げる腕目掛け、ジャンプする。

サイクリードの腕を曲げるタイミングを見計らって拳を放つ。



「おおおおおおおおおおおおっ!!!」

まさしく狙った通り、左腕の関節にジャストミート。


「ガアアアアアアアアアッッッッ!!!!」

サイクリードは先程よりも苦痛な声を上げる。

確かに骨を砕いた感触があった。




「ギギギガアアアッッッ!!!」



『っ!いけない!』


サイクリードは左腕ではなく動く右腕で空中にいた俺に目掛けて腕を伸ばしてくる。


(っ…!やばい!)

空中では避けることが不可能だと思った俺は、さっさに自分の右腕を振るい対抗する。



「グッッ!!」

力負けにより10メートルほど吹っ飛ばされる。



「がっ…!」

重い一発屋を食らうもなんとか耐える。



「くっ…おい!今の完全にパワー負けしてるぞ!」

クロアに話しかける。

態勢は悪かったがパワー勝負なら相手のパンチの威力の方が上だった。

次に防げず、まともに食らったら死ぬかもしれない。


『でもあっちも痛がってるようだし効いたみたいよ?』

確かにサイクリードは右腕を痛がってるように苦悶の表情をしている。


『それに完全に目覚めてない状況じゃちょっと無謀よね』



「目覚めてない…?」

どういうことなのか?

要領が掴めない。




『右腕をみて見なさい』



「右腕…っておい!部分武装セクションアーマーがもう砕けてきてるじゃねーかっ!」

今まで戦闘中で気づかなかったが、黒装蛇の表面はボロボロになっていた。




『よく見なさい。

表面の鱗だけが剥がれてきてるだけよ』



「…あ…本当だ」

中の装甲は傷一つついていなかった。

それに言われてみるとこの網目は鱗のようにも見える。


『実はね、黒装蛇ってまだフルパワーじゃないの。

その鱗が完全に剥がれたら完全なチカラを発揮できる仕組み

今は…だいたい八割ほど剥がれてるわね』



「つまり今は八割のチカラが発揮できてるわけか」



『いいえ』


「なに?」


『完全に目覚めるまでは本来のチカラの十分の一しか使えないのよ。

つまり…さっきの攻撃や相殺したのはたった一割だけのチカラってわけ。

凄いでしょ♪』



「っっ!!たった一割でこんなに…強いのか」



『あとちょっとでフルパワーよ。

だからほら、あのブサイクリードをなんとかしてなさい』



「あ、ああ!」

激励により我に返り、トドメをさすためサイクリードに近寄る。

てかブサイクリードって…



今、右腕しか使えないはずのサイクリードには簡単に近寄れる。





そうした油断があった。

サイクリードは右腕だけを振るう。


俺は慣れたように右に避ける。

一瞬視線をサイクリードの腕に遮られる。

すると高速に移動するサイクリードの尻尾が迫ってくる。



エリスに斬られていたが十分な長さや太さを持ったその凶器は、防ぐことも避けることも出来ず俺に命中する。


尻尾の一撃をくらい校舎に突っ込んでしまう。



「刀鞘くん!!」

エリスがその瞬間を見て声を上げた。




「ギギギギギギギギガガガガガガガガッッッ!!」

サイクリードはしてやったりといった感じな顔をしている。









『大和はすぐに油断するんだから…。





…どうやら完全に目が覚めたようね。

ここからが真の黒装蛇よ。



そのチカラ、魅せてやりなさい』



「――――――分かってる。

もう油断はしない」


表面が全て剥がれて内側が見える。

先程よりも荒々しいドス黒い装甲が顔を覗かしている。

純粋な黒色。

漲るチカラを体で感じる。


「確かにこれは…負ける気がしねえ!」

駆ける速度も一段階上がっている。



「ギガッ!?」

サイクリードは突然のことで反応出来ない。

そして即座に懐に入る。



「オラァ!」

一発、腹に叩き込む。


「ガァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!」

サイクリードは衝撃で4.5m後ろに下がる。

たまらず声をだし、口から胃液のようなものさえ出てくる。


「これなら…」



『ええ、絶対に勝てるわ』

その確信を含んだ声に

勝利の女神が存在するとしたらこんな声なんじゃないかと思えた。


さてサイクリード編も次でフィナーレです!


カッコ良く頑張ってください!

4000pvありがとうございます!!

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