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あなたが望むなら

「ガァァァァァァァァァァァァ!」

サイクリードは乱暴に、両の腕を振り回す。

スピードはデカイだけあってそれほど速くない。

が、それでも一発貰うだけでも致命傷は免れないだろう。


「っ…!」

火野はギリギリの間合いで全ての攻撃をかわす。

しかも、避けながらも隙を見て長刀、燃月での反撃を休めない。



自分よりも何倍も大きい敵を翻弄するその姿を、俺はまるで踊っているように思えた。


「ギィィィィィィ!」

サイクリードは不意を突き、鋭い尻尾で火野を貫こうとしてくる。


「ふっ!」

それを火野は紙一重で避ける。

それだけでは終わらず、幅20センチほどの太さもある尻尾を伸縮している隙に、燃月で斬り落とした。


「ギィィィィィィィィィィィィ!」

サイクリードは声を荒げ、怒り狂った表情をしている。



「長引かせると私が不利ね…」

すると火野は距離を取るように

空に高く上昇する。

全身武装フルアーマーはコントロール次第で空も飛べる。


「これでもらって寝てなさい」

火野は燃月を持っている右腕を、投げ槍をするかのように後ろに下げる。


固有能力ワンオブスキル

キィィィンという耳に響く音と共に長刀、燃月の刀身が赤く染まる。





煉華トライ

鳥刻フェニックス…!」

サイクリード目掛けて燃月を投げつける。


投げ放たれた燃月は全身炎を纏っていく。

そして炎は形を変え、鳥のように形成されていく。


全長およそ八メートル。

炎の塊となった燃月は、まるで生きているかのようにサイクリードに向かっていく。



「ギィィィィギィィィィギィィィィ!」

まだ尻尾を斬られたことがショックだったのか、火野の攻撃を避けることが出来ずに直で喰らう。


「ガァァァァァァァァァァァァァァァァ!」

火野の固有能力ワンオブオリジンを直で受け、炎に包まれたサイクリードは悲痛な声を上げる。


「…す、すげえな!やっぱり火野家ってのは伊達じゃねえんだな…」

あまりの驚きに開いた口が塞がらない。



「はっ、はっ、はっ、はっ…!」

しかし大技を繰り出した彼女の心器はかなり消耗したのか、呼吸が乱れていた。

そして、火野はゆっくりと下降していく。


「も―――」

もしかして倒したのか、と俺は言おうとした。

別に楽観視していたわけではない。

あれだけの攻撃を受けたら致命傷はおろか、倒れていたっておかしくない、そう思った。


しかし、サイクリードは炎の中から平然と抜け出したのだ。

所々鱗が燃えている箇所はあるが、硬い甲羅に守られた本体は大したダメージにはならなかったのだ。


「しぶといわね…!」

火野は苦虫を潰したような顔をしながらも、息も整ってない状態で再度アタックを仕掛ける。


「ギィィィィィィィ!!」

サイクリードは近づいてくる火野に向けて右腕を振り落とそうとする。

その動きはまるでハエを追っ払うような簡単なものだった。



火野は今までの華麗な動きが嘘のようにあっさりと攻撃を受けてしまう。



「きゃああああああ!」

女の子のような声を上げながら火野の身体は吹っ飛ばされる。


空中で幾度も身体が回転し、地面に直撃する。

地面を抉るほどの威力であったが、それでも勢いの止まらない身体はさらに七・八回ほど回転する。



「火野!」

偶然飛んできた方向に俺が避難していた場所と一致していた。


吹っ飛ばされた線状に体を滑り込ませ身体全体で受け止める。


「がはッ……!」

勢いは止めれたものの、衝撃で呻き声を上げる。


「あ、あなた…!何て無茶なことを…!」

見れば火野の全身武装フルアーマー

は幾つもヒビが入っていた。


「お前を…助けたいと思ったら、勝手に身体が勝手に動いてたんだよ」

代償としてあばら骨を何本か折れたかもしれない。

でも少しでも助けたかった。



「………あ、あなたって本当に……」


「なんだ?」

火野は俺から視線を外す。

顔が赤くなってるのが見える。


「……なんでもないわ」

そして火野はふらふらの身体で立ち上がる。


「…助けてくれてありがとう。嬉しかったわ」


「お、おい!そんな身体でなにしようってんだよ!」


「なにって、さっきから言ってるでしょ。あの化物を足止めするのよ」


「もうボロボロじゃねーか!まじで死んじまうぞ!」

全身武装フルアーマーは大きな力を与えるが完全に破壊されてしまうと廃人になってしまう。

心が核の全身武装フルアーマーだ。

完全に破壊されるとはつまり心という部分が破壊されるということと同意なのだ。



「大丈夫よ。私はこんなところで死なないし、死ぬつもりもないわ…

私にはまだ…しなくてはいけない使命があるの…」


そして、火野は一歩ずつサイクリードに向かっていく。


「お、俺は…!」

俺はなにをしているんだ!

彼女一人で行かせて、指をくわえて見てるだけなんて情けないにもほどがある…!



チカラ…火野やこの学校にいる全員を守れるようなチカラ。

誰かに期待するんじゃなく、自分。

人頼りじゃない!自分の力で助けたい!



「クソッタレェェェェェェ!」

何も持たない俺はサイクリードに向かって走り出す。

無駄死にだって構わない。

見てるだけなんて耐えられなかった。






『あなたは何を望みますか?』


不意に頭のなかに流れた声に走りながら無意識で反応する。

何を望むか?そんなもんは決まってる…!

今。彼女を救えるのなら。



「火野…火野エリスを助けるチカラだ!」



その瞬間俺の意識はブラックアウトした。

2000pvアクセスありがとうございます!!

とうとう次話で大和が動き出します!

乞うご期待!

誤字脱字ありましたら教えてください!

感想もお待ちしております!

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