それが決定的な差
自分でもこんなに動けることに驚きを感じる。
リハビリも兼ねて、1年ほど前から主に体術、それと剣術を習おうとした。
ただ看護師や医者の手前、大手振ってするわけにもいかず本を読んで独学でやっていた。
基礎本を買い、体を慣らそうと思ったが驚くほど早く自分が地盤となる基礎を簡単に学んでいった。
というより、身体は一度学んだことがあるように平然と基礎を可能としていた。
それから中級、上級と技を磨いていったが、自分の中には『反復練習』のような感覚が離れなかった。
ふと思うことは、記憶がほとんどない入院する前の自分。
自分は何者で、一体何をして過ごしていたのか。
両親を亡くしたらしい俺には、教えてくれる者は誰も…いなかった。
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新木は組み伏せられたことに驚きの表情を見せていたが、すぐに顔色を変えて余裕の笑みを浮かべる。
「組み伏せたごときで勝った気になってんじゃねえだろうなぁ…?」
「…何をするつもりだ?」
俺は問いかける。
押さえつけられてる状況で何が出来るのか、と。
「分かんねぇなら身体に教えてやるぜぇ!」
新木の台詞せりふにゾクッと、まるで危機を知らせるように身の毛がよだつ。
「…ッ!まさか!」
その可能性はない。
と、勝手に思い込んでいた。
「ソウルコマンド…虎撃!」
まさかとは思ったが、全身武装を装備しようとした。
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昨夜の寝室での事。
「これは大事なことだから覚えておくといい」
そう切り出した酒見先生は、俺が反省文を書いてくるのを忘れており急いで書いていた時の事。
なんですか?と尋ねると
「配られた学生証の重要案件という所に全身武装の制限という項目がある。
最初の方のページだ。開いてみろ」
言われたようページを開いてみる。
書かれていた内容はこうだ。
規則に、全身武装の使用には制限がある。
教師に許可を貰うこと。
競技場など、専用の場所以外での使用禁止。
緊急時には使用を許可する。
つまり、前に模擬戦を申し込んできた火野エリスのような勝手が許されたのは彼女の家事情によるところが大きいということ。
規則を破ると停学、もしくはある機関によって制裁、そう書いてあった。
「つまり教師の使用許可がないと、使えないってことですね?」
「まあよほどの馬鹿がいない限りは、そういう事だ」
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いくら怒りで頭に血が上っていても使ってはこない、そう確信していたが…
「くッ!」
拘束を解き、バックステップで新木から離れる。
「ひゃははははは!」
新木は笑いながらゆっくりと立ち上がる。
彼の身体は光の粒子に包まれている。
すると、足下から装甲が顔を出す。
そのまま身体全体が装甲に行き届く。
装甲の色は少し薄めの青、俊敏型に分類される。
火野エリスほどの力強さは感じないが、彼女とは違い速く動くことに長たけている印象をうける。
新木は口を開き、こう言い放つ。
「減らず口が叩けねえような圧倒的暴力で、てめえを叩き潰すッ!」
その言葉を皮切かわきりに新木は足に着いてあるブースターで、俺との間合いを恐ろしく速く詰めてくる。
そのスピードは火野のトップスピードを超えてくる。
目の前にまでくると、装甲により強化された右のパンチを放ってくる。
(まずいッ!避けきれねえ!)
避けようとするも全身武装を装着し、速さや肉対面でも強化された新木の一撃を逃れることは出来ず、重い一撃を腹にくらう。
「かはッ…!」
勢いで5メートルほどぶっ飛ぶ。
「手応えが悪い…チッ!ギリギリで後ろに下がってパンチの威力を和らげやがったな」
新木の推測は正しく、咄嗟に後ろにジャンプしたはいいが、それでも物凄い威力であった。
骨は折れていないが油断していたら折れていただろう。
(まずい…次に同じことをされたら確実に意識が飛ぶ)
状況が一変。刀鞘は危機的状況に陥ってしまう。
呼吸をゆっくりと整える。
「まあ、所詮悪あがきだ。次で確実にとどめをさしてやる」
新木がさっきと同じように間合いを詰めるような姿勢をする。
(来る!)
次の一撃に備える。
「やめんか!!貴様らッ!」
いきなり聞こえてきた制止の声に俺と新木は、声の方向に顔を向ける。
するとそこには酒見先生と複数の先生がいた。
「さ、酒見先生!?」
俺がなぜ突然現れた酒見先生の名前を呼ぶ。
「新木君!勝手に全身武装使うのは学園の規則により禁止されているはずです!知らなかったでは済みませんよ!」
男の先生が新木に向けてそう告げる。
「…チッ!」
新木はつまらなさそうに舌打ちをする。
そして、全身武装を解く。
「あなたにはそれ相応の罰が与えられます。
仕方ありませんがあなたを連行します。
分かりましたね?」
「あーあーうざってえなぁ」
そう言いつつも素直に連行されそうになる新木。
「…ッ!ちょっと待て!まだそいつには-」
「刀鞘」
まだ彼女に謝らしていない、そう言おうとしたが酒見先生によって止められる。
「事情は周りにいた野次馬に聞いた。
それでも貴様にも悪い点があった。
そうだろ?ならば貴様にもそれなりの罰も与えられるだろう。
今は大人しくしていろ」
「でも!」
「………」
酒見先生の無言の圧力を放つ。
「…分かりました」
仕方なく俺は了承する。
そして連行されそうになっている新木と目が合う。
「勘違いしてるようだから教えてやるが、助かったのはてめえだ。
自分の運の良さに感謝してろ出来損ない」
ヒャハハハハと汚い笑い声を上げながら連行される。
「ッ……!」
確かにあのまま戦っていたら確実に負けていただろう。
それがどうしようもなく悔しく、情けないと思った。
そしてまだ唖然としたままの織音の方を見て一言告げる。
「…ごめんな」
謝ることしか出来なかった。
「ッ!あなたは…悪くない…!」
悲痛な声でなにも出来なかった俺を励ましてくれる。
「…ありがとう」
なんとかお礼だけを告げて、俺は早足で広場から去っていった。
新木を謝らせることが出来なかった不甲斐ない自分をこれ以上見せたくなかった。
新木は三日間の停学が言い渡された。
新木の仲間は全身武装を使わなかったので停学は免れたが大量の反省文を書かされるそうだ。
そして俺の罰はというと
「俺を何をしたらいいんですか?」
夜になり酒見先生の部屋に戻り尋ねると、
「何か上手いものを作れ。それがお前の罰だ」
酒見先生は笑顔でそう応えた。
聞くと、暴力行為を行った示しをつけるため、名ばかりの罰を受けるだけのようだった。
「先生…ありがとうございます」
素直に俺は感謝を告げる。
もし同じ部屋で過ごさずにいたら大量の反省文を書かされていたかもと思うと、部屋の手違いも悪くなかったかもしれないな、と。
「ふっ、これからはあまり私を困らすなよ」
そんな事を気づいたのか酒見先生は穏やかな目をしていた。
俺は、少し気持ちが晴れたのを感じながら自分の出来る最高の料理を作り、酒見先生に美味しいと言ってもらえたのだった。
酒見先生優しいなあ。
今回はちょっと主人公残念でしたが、そろそろ襲撃編に入ってきます!
大和くんに頑張ってもらいましょう!




