ばれる
「酷いな、僕はただ美しい物が好きなだけさ!」
そうジュリオは反撃するが、今の状況では何とも説得力にかける。
むしろ素直にロリコンと言ってくれた方が、まだよかった。
そのぐらい、ジュリオの心酔っぷりは常軌を意していた。
「あの、副団長、そのぐらいで…」
エリックは段々真っ白になっていくロードに、助け舟をだした。
散々振り回されたロードは、先程受けた蹴りの影響も有り、すっかりグロッキー状態だ。
このままでは、抱きしめられすぎて圧死によって潰される。
ロードは必死に声を振り絞って制した。
「とにかく、離してください…!」
「ジュリオ、そこまでにしておけ」
「えー…仕方ないなぁ」
いかにも残念そうな声音で、渋々とロードの身体を解放した。
上司に言われたから仕方なく離しただけなのだろう。
その上司はため息を吐くと、再びロードに向き直った。
「それで君は……ただの町娘ではないだろう。
そこの二等兵は空から降ってきたと言ったが、どこから来たんだ。
それにその容姿……」
そう言うとアロンザはロードの眩しい程に輝く銀髪を目に写す。
ロードの眩しい銀髪と瞳は、彼女は知る由も無いが、どこの国でも稀な色だった。
エリックは平凡な茶髪、ジュリオはくすんだ灰色、そしてアロンザ自身は漆黒の黒髪。
ロードが特注で誂えさせた運動用の服装も含めて、いわば異質の存在だった。
しかしそんな異質な色合いでも、この国では唯一心当たりがある人物がいる。
産まれた頃から病弱なせいか、その姿は国民やアロンザすら見たことがない、ディセンシアの王女。
先日10歳にして初めて、貴族向けの披露目会に参加されたと聞いた。
確か近衛兵の聞き伝えでは、見たこともない、美しい銀髪だったと聞いている。
しかし、途中で体調が悪化したのか、挨拶もそこそこに部屋に戻られたとか。
少女の容姿はその王女に、当てはまってはいる。
だが王女は、噂では庭園を一周することすらま間ならないと聞いていた。
見た目はいかにも儚げな容姿だが、今目の前に立っている、先程見事な立ち振る舞いを披露した少女とは、到底思えない。
その疑問はジュリオも感じていたのか、こちらを向いて頷いた。
「単刀直入に聞く。
まさかとは思うが、君はロード王女ではないか?」
何故ばれた……?
ロードは疑問に思う。
彼女自身、気付かれる可能性も考えていたが、こうもあっさり見破られるとは思っていなかった。
まず自分の顔は父親とアザレアとカッシオ、それに数人の使用人にしか知らないはずだ。
お披露目パーティーでも、アザレアは自分は日差しを気にして深々と帽子を被っていたと聞いている。
アロンザは容姿に注目していた、顔以外で目立つものといえば、この銀髪。
きっと聞き伝えに髪のことを聞いていたのだろう、もしかしたら珍しい色合いなのかもしれない。
そう結論付けたロードは、すぐさま次なる一手を打った。
「もしこの髪の色を見て判断されたなら、違います。
私は、王女様に憧れて、染めました。」
「染めただと?」
アロンザの反応に、やはりそうかと安堵した。
「はい。
王女様の銀髪は民の間でも噂になっております。
王女様の様な髪色になりたいと思い、染めました」
「ふむ、なるほどね」
ジュリオは納得したように頷く。
「たしかに、若い娘達の間では、染め粉なる髪染めの粉が人気らしい。
美容に関心がある女達の間では、大流行しているんだってさ」
「そうなのか」
「団長は流行りに疎いからねー」
どうやら誤魔化せた様だ。
この世界にも、髪染めがあるみたいだな。
「はい、私はただの町娘です」
「なら、すまなかったな引き留めて。
うちの隊に救護室があるから、そこで打たれた腹を治療していきなさい。」
「わかりました」
「それと、うちの色々面倒に巻き込んでしまったな。
何か褒美や要望があるなら、できる限り聞き入れよう。
ひとまず君が助けた二等兵に言ってくれ。」
「ありがとうございます…」
「さあジュリオ、仕事に戻るぞ」
「えー」
不満げな声が上がった。
ジュリオからはもっと彼女と戯れたい、そういう本音がだだ漏れだ。
「まあ仕方ないか、
そういえば君の名前をまだ聞いていなかったね、何て名だい?」
「私はロー…」
「ロー?」
ロードは咄嗟に本名を名乗ってしまいそうになったが、慌てて訂正した。
「ローズです。」
ディセンシア初代女王と同じ名を口にしてしまった。
しかしロードよりはマシだろう。
「へぇー
じゃあまた会おうね」
名乗るとジュリオは笑顔のまま、ロードの顔に自身の顔を近づけ、耳元でぽそりと呟いた。
「
ローズ 王女様」
ハッと顔を上げると、ジュリオは邪気の無い笑みで微笑んでいた。
やはりこの男、油断ならない男だ。




