最終話:『明日を貫く、僕らの翼』
超満員のコンサートホールに、五色のレーザーと大歓声が渦巻く。
今やユイは、世界中の誰もが知る国民的なパイロットへと成長した。
ライブが最高潮を迎えたその時、俺たちのインカムに警報が鳴る。
政府からの緊急出動要請。最大級の侵略者が現れたのだ。
ステージ裏のドックで、ユイは出撃の準備をしながら俺を見つめた。
少しだけ潤んだ瞳で上目遣いになり、俺の服の裾をそっと掴む。
「……ゲンおじさん。あの日みたいに、おじさんの上に座って、
操縦したいな。そうすれば、私、もっと集中できると思うから」
一瞬、心が揺らぎかけたが、俺は苦笑いしてその小さくて温かい、
ユイの頭を優しく、愛おしむように撫でてやった。
「バカ言え。今のあんたは国民的スターだ。ライブの真っ最中に、
おっさんと二人乗りして出撃したら、ファンが暴動を起こすぞ」
「ユイなら大丈夫だ。一人でも、世界で一番強いんだからな」
俺の言葉に、ユイは少しだけ不満そうに唇を尖らせたが、
すぐに悪戯っぽく、いたずらな笑みを浮かべて俺を見上げた。
「……じゃあ約束。帰ってきたら、また膝の上に座らせてね?」
「ああ。最高の整備をして、ここで待ってる。……行ってこい!」
「うん!……ユイ、サオトメ零号機、出撃!!」
ステージが割れ、光の粒子を纏った人型ロボットが、
二万人の絶叫と、鳴り止まないアンコールの拍手の中へせり上がる。
リボルバーが咆哮を上げ、ユイの駆る鋼鉄の王者が夜空へ放たれた。
その背中を、俺はただ誇らしく、いつまでも、いつまでも、
眩しいライトを浴びながら、力強く見送り続けた。
――サオトメ技研の物語は、ここから世界の伝説へと変わる。




