オム焼きそばを作ろう
昨日は、オレが村に帰ってきたと言うことで、ちょっとしたパーティーを開いた。
村人はオレがいない間に少し増えていた。
森ではぐれていた村人が集まってきたらしい。
ここでの生活も定着してきたみたいで、猟も少しだけやっていて、肉があった。
畑はとりあえず、必要な広さ耕したところみたいだった。
種は提供したので、今日から植えて行くらしい。
ちゃんと芽が出てくれたらいいな。
オレの方は、今朝からオム焼きそばを作ることになる。
特にやらないといけない訳じゃないので、ゆっくり惰眠をむさぼっていた。
でも、いい加減目が覚めた。
久々の自分のベッドは良いな。
広いし寝やすい。
窓の方を見たら・・・エイティ!
エイティが一緒に寝てる!
とりあえず、頭をなでてやる。
『なでなでなでなで』
「ん・・・んん。あ、おはようございます、ご主人様。」
「ああ、おはよう。」
「昨日は皆さん遅くなったので、私もご主人様と一緒に寝てしまいました。」
「いっしょに!?」
「はい、どーきん?」
誰だエイティに変な言葉を教えているのは!?
今日は、追求しないと・・・・んーっと伸びをしたところで、左側に人がいることに気づいた。
セリカだ。
やばいな。
左右にかわいい子がいるなんて、もはやハーレム。
いや、親子的なのか!?
とりあえず、セリカの頭もなでておくか。
『なでなでなでなで』
「んー」
しまった。
つい触りたくて起こしてしまった。
「ユーイチ様、おはようございます。」
「おはよう。」
「んー・・・昨日は飲み過ぎました。」
そうかも。
ただ、もう昨日のことは途中から覚えていない。
こんなに飲んだのはいつ以来だろう。
ついつい、次の日の仕事に響かないように、セーブする習慣がついていたな。
いよいよオレって、本格的に社畜だったなぁ。
それが今では、両手に華だよ。
天国か!?
ここは天国なのか!?
「どうしたんですか?ユーイチ様、顔がニヤけています。」
そりゃあ、ニヤけるさ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
さて、起きた。
完全に起きた。
コーヒーを飲みながら一人で思った。
オレはダイニングのテーブルの椅子に座っていた。
右後ろには、ゴスロリのメイド服を着たエイティがが控えている。
うーん、メイドっぽい。
テーブルの向かいには、セリカが座っている。
うーん、いちいち幸せだ。
「ところで、エイティも一緒に座ろう。一緒にコーヒー飲もう。」
「でも、私はメイドですので・・・」
「メイドだけど、家族じゃないか。一緒に食べて、一緒に飲もう。」
「はい、ご主人様。」
オレは、今日の計画(と言うほどの物かどうか・・・)を伝えた。
今日は、オム焼きそばを作る。
オムレツが載った焼きそばで、オムレツがふわふわのやつを考えている。
ナイフでオムレツを割くと、花のように広がって、焼きそばの上に広がるやつだ。
ちょうどエイティもいるので、ケチャップでハートを書いてもらって、『もえもえきゅん』をしてもらおう。
オムレツって料理も、焼きそばって料理も知らない人2人と、料理をほとんどしたことがないオレが、オム焼きそばを作ろうと言うのだから、うまくいくわけがない。
何度か失敗しながら共に上達しようと言うわけだ。
共通の課題をクリアすることで、連帯感などを共有して仲良くなっていく作戦も隠れている。
難しいのは、レシピが分からないことだ。
クックパッド使いたい!
ネット大事だな。
オレには『ヘルプデスクさん』がいる。
レシピを聞いて、メモに書き写せばOKだ。
■焼きそば部分の材料
焼きそば麺・・・1袋
豚肉・・・スライス1枚
キャベツ・・・1枚程度
紅ショウガ・・・少々
焼きそばソース・・・適量
青のり・・・少々
■オムレツ部分の材料
たまご・・・3個
牛乳・・・少々
バター・・・少々
塩コショウ・・・少々
こんな感じか。
要するに、焼きそばを作って、その上にプレーンオムレツを載せればOKと言うことだろう。
あとは、オムレツの真ん中をナイフで切って、左右に切り開けば良いのだ。
とりあえず、今回は最初なので、全部日本の材料で作ることにした。
オレとセリカ、エイティは3人でキッチンにいる。
ここでランチ用にオム焼きそばを作ろうと言う計画だ。
最初は、ぎこちなくてもいいのさ。
「さあ!3人でオムライスを作ろう!」
「「「わー」」」
「あの・・・ご主人様、オム焼きそばって、どんな料理なのですか?」
「そうか、エイティは、オム焼きそばを知らないか。」
「すいません、私も分からないです。」
そうか、二人はこの世界の住人だ。
エイティについては、この世界の料理だとしても知らないかもしれない。
完成品をポンと作って見せれば良いわけだが、オレも作ったことがない。
しかも、卵料理だ。
最初の何回は失敗することを想定しているし・・・
脳内ヘルプデスクさんに写真を印刷してもらった。
オレは、写真をテーブルの上に置いて言った。
「これがオム焼きそばだ。」
「え!?ご主人様、今どこから出したんですか?」
「ユーイチ様、この緻密な絵はどうやって書いたんですか!?」
二人とも食いつくところが違う・・・
そして、肝心なオム焼きそばについては、まだ話題にもなってない・・・
これが異世界か。
なんだ、楽しいじゃないか。
改めて、写真がどんなものかと、オムライスがどんなものか説明したところで、進めるか。
ちなみに、写真は説明が面倒なので、魔法ってことにして説明をごまかした。
「魔法」って便利だな。
テーブルの上には、食材を並べた。
「ユーイチ様、この透明の膜に覆われている細いのは何ですか?」
「透明の膜?ああ、これはビニールだ。中身は麺だよ。」
エイティは、オレの出す食材を色々見たことがあるので、特に疑問はなかったらしい。
セリカも、冷食とかは作ったけれど、そういえば、ビニールはなかったな。
「肉ってこれは何の肉ですか?こんなに薄く切った肉を見るのは初めてです。」
セリカは何を見ても感動するな。
エイティは、世間ってものを全く知らないので、オレが言うことや、することなんかは、何でも受け入れるな。
お父さんエイティの将来が心配だよ。
「これは豚肉だな。まあ、オークみたいなものだ。」
「オーク・・・」
「次は、キャベツ。」
「見たことない葉っぱです。」
葉っぱって・・・
「セリカの畑にも、そのうちこれが生えてくるよ。キャベツだ。」
「キャベツ・・・」
一個一個これやんの?
二人は食材のひとつひとつに興味を持っているみたいだけど、「少々」の材料だし、割愛しよう。
そのうち慣れてくるさ。
包丁と、まな板を取り出した。
「わ!また何か出た!」
セリカは面白い!
エイティは、オレがすることはすべて正義だな。
一通り野菜を洗ったり、フライパンを洗ったりした。
もう、セリカにとっても水が蛇口から出るのは常識になりつつある。
驚いたりはしない。
良い傾向だ。
キャベツと豚肉を切った。
切るのはこれだけだし。
「なるほど、食材を切るためのナイフと板ですね。」
セリカは興味津々だ。
エイティも覚えようとして乗り出してみている。
そうか、オレ一人でやる必要はないんだ。
まな板と包丁、食材を人数分出した。
最初からこれをすればよかったけれど、オレは万能でも何でもない。
思いついたことはできるけれど、思いつかないことはスルーされてしまうのだ。
『トン・・・トン・・・』
エイティのゴスロリメイドが包丁を持って料理をしているのは良いな。
何かわくわくする。
セリカの普段着も何か彼女が家に来てくれて、料理をしてくれている感じがして良い。
もう、きっと、オレは変態だな。
コンロは横に3人並ぶのも変なので、カセットコンロを出して、横に3人並んだ。
なんか面白い。
普通の生活で、カセットコンロを3つも持っている家なんかないだろう。
色々な意味で、この世界ならではだ。
豚肉とキャベツを炒めた。
ここら辺は、一緒に炒め始めていいみたいだった。
ここでまたセリカが、油をひくところに食いついた。
食材がくっつかないようにとか、いろんな意味があると思うけど、オレにとって、フライパンに油をひくのは当たり前だ。
炒めていると、この『炒める』と言う調理法がセリカの村にはなかったみたいだ。
そもそもフライパンがなかったみたいだから、鉄板で『焼く』とか、鍋で『煮る』とかはあったけれど、『炒める』って調理法がなかったらしい。
『揚げる』とかもないのかも。
今度ゆっくり聞いてみよう。
そこに、焼きそば麺を入れるのだけれど、事前に温めていた方が良いから、袋を少し開けて、水を少しだけ入れて、電子レンジで1分チンした。
それをフライパンに投入~。
急に我に返ったけど、オレって異世界で何してるんだろう。
日本では料理なんてほとんどやらなかったのに。
ほとんど毎日コンビニ弁当だった。
食費が結構かかる割に、全然いいものを食べていた感覚はない。
食べるために働くと言うよりは、働くために食べて、働くために寝ていたような・・・
もう、あの世界には戻りたくないな。
異世界ばんざい。
「ご主人様、泣いてる?」
「煙が目に入っただけだから大丈夫だよ。」
エイティに心配されてしまった。
誰かに心配されるのって気持ちいいな。
人はこういう時『幸せ』って感じるんだろうな。
こんなことを考えているうちに、焼きそばはほったらかしだったが、良い具合に焼けた。
焼きそばって、焼くんだな。
オレの焼きそばと言えば、カップ麺だったから、全然焼いていなかった。
あれは、『焼きそば』じゃなくて、『茹でそば』だな。
ちゃんと料理をしたら気づくことって多いな。
オレの日常ってダメダメだったな・・・
やきそばは、良い具合に炒まってきたので、焼きそばソースをかけて絡めてみた。
「ユーイチ様!これは何という調味料ですか!?すごくいい匂いです!」
「焼きそばソースだよ。」
食べた経験がなくても、やっぱり焼きそばっていい匂いなんだなぁ。
3人とも焼きそばは比較的簡単にできた。
皿に移して、紅ショウガや青のりをかけたら、二人とも真似している。
なぜそうするのかとかは、一旦どうでもいいらしい。
とにかくオレの真似をしていた。
そりゃあ、初めて見る料理だ。
そうなるわな。
さあ、ここからが問題のたまご料理だ。
とりあえず、たまご3個をボウルに溶いて、牛乳を入れたものを作った。
ここまでは問題ない。
フライパンにバターを引いて、ここからが勝負だ。
溶いたたまごをフライパンに入れて、箸でかき混ぜながらフライパンを前後に振る!
たまごが固まってきたら、まとめる・・・のだけれど、中々まとまらない。
まとまらない。
時間が短いのか!?
もたもたしていたら、段々たまごに焼き目が付いてきた。
なんだ、これでも火が強いのか!?
そういえば、たまご料理は火加減が難しいって言っていたような・・・
オムレツっぽくまとまったけれど、失敗だ。
固まっていて、全然ふわふわしていない。
これじゃあ、お手本にならないな。
セリカは、オレのオムレツもどきを見て、真似して作っていた。
でも、火が強い!
調節ってものを知らないのか!?
強火だ強火。
焼きそばを作っている時と同じくらい強火だ!
でも、オレの真似をしてフライパンを動かしながら、箸でカシャカシャ混ぜていくと、すごい速さでたまごがまとまっていく。
写真で見た形にまとめているみたいだが、なんとなく箸とフライ返しで形になっている。
「すごい!ちゃんとオムレツっぽい!」
「本当ですか?嬉しいです。」
いつの間にかエイティも真似してやっているみたいだ。
エイティのが褒められたからか、真似して強火でがしゃがしゃやっている。
ところが、こちらもなんとなくオムレツっぽくまとまってきた。
・・・と言うことは、オムレツは意外にも強火で短時間に調理するってことか!
オレも、失敗オムレツは横に置いておき、新しくたまごを準備して、今度は強火でやってみた。
3人ともそれなりにオムレツっぽいのができた。
そーっと焼きそばの上に載せた。
真ん中を割って、左右に開けば・・・おお!なんとなくオムレツっぽい!
セリカも、エイティもそれらしく完成していた。
すごいぞ、2人とも。
一番見た目がひどいのはオレだった。
やっぱ、料理は向いていないのか?
でも、楽しかったからまあいいか。
3人は、それぞれ自分のオム焼きそばを昼飯にすることにした。
追い焼きそばソースは、別に誰も反応しなかったけれど、マヨネーズはセリカが興味津々だった。
マヨネーズの説明って・・・意外となんて言っていいか。
そもそも、これって、ドレッシング?調味料?
いやー、改めて知らないことはたくさんあるものだ。
「「「いただきます」」」
それぞれ、食べてみると・・・
「美味しいです!ユーイチ様!こんなに簡単なのにちゃんとしっかりした味がします!」
セリカは気に入ったようだ。
よかった。
エイティはどうかな、と目をやると。
フォークで上手に食べてた。
「どうだい?自分で作ったオム焼きそばは。」
「私にも料理ができました。食べ物って袋を箱に入れてつまみをひねってチンって言ったら食べられるのだと思っていました。」
ここにひどい現代っ子がいる!
まあ、オレが悪いんだろうな。
これまで食べ物をほとんど食べられない生活だったわけだし、食べられるようになったと思ったら、冷食かレトルトだよ。
そりゃあ、料理ってそういうものって思うよな。
オレの悪い影響だ。
少しづつでも、3人で料理ができるようになったら、楽しくなるだろう。
「どうだった?エイティ、美味しかったか?」
「はい、ご主人様やセリカ様とご飯を作ったり、食べたりできて幸せです。」
「せ、セリカさま~~~!?」
セリカが過剰反応した。
「ご主人様の奥様なので、セリカ様とお呼びしたのですが、他の方がよかったでしょうか・・・」
「セリカ様って、私はそんなんじゃ・・・」
セリカが軽くパニックだ(笑)
「セリカは、オレの嫁だから、セリカ様で良いんだよ。」
エイティが不安そうにしているから、オレは二人に言った。
それにして、セリカも、エイティも、かわいいなぁ。
セリカはオレと同じくらいの歳ってことなので、17歳くらいか。
エイティは12歳くらい。
高2と小6か。
お姉さんと妹って感じかな。
二人を抱き寄せて、キューっと抱きしめた。
「ど、どうしたんですか、ユーイチ様」
「ご主人様、くすぐったい・・・です。」
「いやいや、今この瞬間オレは幸せを感じている。いいな、村は。」
セリカも、エイティも、満更じゃない顔をしている。
「また料理を作ろうな。」
「今度は、村の料理もご馳走しますね。」
「もっと練習してご主人様に食べてもらえるようになります。」
いいなこの空間。
気分がいいから、昼は畑仕事にでも行ってみるか。
この時、気分がよくて、その後に起こるとんでもない事はまるで想像がつかないでいた。




