扉・3
僕の死んだ祖母は、海辺の切り立った崖の上にある何やら恐ろしげな洋風の家に住んでいた。
そのいつでも薄暗い家の一番奥の扉。
開かずの扉として開けることを禁じられた扉がある。
子供のころ以来にこの家に訪れた俺はこの開かずの扉を開いてみることにした。
あの頃の僕は祖母のギョロついた目に怯え、あまりここに来たがらなかった。
だいたい開かずの間なんてものがある時点で恐ろしいではないか。
扉にはカギがかかっているうえに誰も入れないように木の板まで打ち付けてある。
これで呪いのお札なんて貼ってあったらそのままお化け屋敷として経営できそうだ。
僕は恐る恐るバールで打ち付けてある板の釘をすべて抜いた。
次はカギだ。だがこれは扉の木が腐っているので少々強めに蹴れば開けられそうだ。
いつも気難しい顔をして、俺が何かしようものならどこからでも見ていそうなあの目。
今思うと怖いという外見の印象以外あまり祖母のことを知らなかった気がする。
もう少し俺から話しかけてあげていたら、もうちょっと違う印象を持てたのではないか、とも思う。
僕は複雑な気持ちのまま、開かずの扉を勢いよく蹴り開けた・・・
* * *
そこに広がっていたのは、僕の幼いころの写真であった。
壁一面に俺の笑っている顔があふれている。
写真だけではない。僕が怒られながら書いたひらがな練習帳。窓ガラスを割ってしまい取り上げられたサッカーボール。敬老の日に送った手紙。
僕と祖母との思い出たちがそこにはきれいに並んでいた。
気難しい祖母は子供の僕ににどう優しく接すればいいか分からなかったのだろう。
だから厳しく当たったり、興味なさそうにしていたりしていたんだね。
だけど本当は俺のとこを気にかけていてくれた。愛していてくれた。
それを知られるのが恥ずかしくて開かずの扉なんて言って僕との思い出を隠していたんだね。
だけどこの一番真ん中にある写真をみて僕は分かったよ。
生まれたばかりの僕を満面の笑みで抱いている祖母の写真。
ごめん。ばあちゃんは本当は優しい人だったんだよね。
ごめんね。気づいてあげられなかったんだね・・・。
開かずの扉の向こうには、優しいおばあちゃんの笑顔がありました。
(おしまい)




