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ブラッドカラー  作者: 福乃 吹風
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69話 エルラド族の楽園

 心地い風に、小鳥たちの鳴き声、ベッドキャノピーのカーテンが日差しによってキラキラと光っていた。ミライをウバンに託して何日私は眠っていたのだろうと上半身を起こす。

 みんなは無事かなと私が着ている服を眺めていたら、リア様、気分はどうですかとシフォンの声が聞こえて、そっちに目をやると私と似たような衣服を纏っていた。


「シフォン…?ワイズがずっと待ってたんだよ。なんでここに?」

「余はキアを守るために、選ばれた者というべきしょうか。あまり地上でしてきたことを思い出せないでいるのですが、キアとティル様だけの思い出ははっきり覚えているのです」


 嘘でしょとシフォンの顔に触れておでこをくっつけさせ、治癒能力を試してみるも効果はないっぽい。思い出せないことでシフォンは悲しそうな瞳でいた。


「キアは?」

「エンディードが凶暴だったということで、まだ儀式が行われている状態です。リア様のエンディードは大人しかったので体内から消滅しました」


 エンディードが私の体内に消えたんだと胸に手を当てていると、シフォン様と走ってくる少女が来る。


「シフォン様、もうすぐ儀式が終わりますので、立ち会いをお願いします」

「わかった。それじゃあ、リア様、後ほど」


 シフォンは儀式が行われている場所へと行ってしまわれ、私もと行こうとしたら少女が大の字となっていけませんとなぜか少女に怒られてしまった。



「リア様はキア様の立ち合いに行くことはできません。パトレア様がお呼びになっているのでそちらにお連れします」

「あの、あなたのお名前は?」


 はっと思い出したかのように、大の字になるのをやめ、スカートを少々あげ、礼儀正しくお辞儀をする。


「大変失礼いたしました、リア様。私はパトレア様の元で働かせていただいております、スターリと申します。以後お見知りおきください」

「よろしくね、スターリ」


 では行きましょうと笑顔で言われ、パトレア様というお方に会いに行くことになった。どんなお方なのだろうと階段を登り到着したら円形に並ぶように椅子が七つあり、中央から左にはピットが座っている。一番左にはネフィラのそっくりな子と一番右にはカディーラ団長もいた。それ以外はまだ知らない人たち。

 スターリはお連れいたしましたと告げた後、階段を降りて行ってしまわれ、中央にいるお方がパトレア様なのだろう人が喋り出す。


「目が覚めたようだね、リア。気分はどうだい?」

「はい、大丈夫です」

「混乱するのは承知していますよ。ここがどこなのかも、リアには知っておいてもらう義務がある。ある種族のことはすでに耳を入れたようだね?」


 ドロップが教えてくれた種族、イルラナ遺伝子を持つ子をエルラド族と言っていた。カディーラ団長は知られたくないことで、ドロップを排除しようとしたこと。


「私がイルラナ遺伝子を持つエルラド族の末裔。私は父がノールト王国ルワードの子ですよね?それなのになぜ」

「ルワードは私の愛弟子。私の遺伝子を使わせ、子を生ませたのです。それがルワードの子たち。ですからリアやノア、キアはルワードの実の子ではないということ。これ以上リアたちが穢されないようにと保護したまで」


 私がこの人の実の子なのと衝撃すぎて驚いていると、周りに座っている人たちは私を見て、微笑んでいた。


「リア、一つあなたを罰ししなければならないことがあるのです」

「罰?」


 聞くとネフィラのそっくりさんの隣にいる人が喋る。

 

「ミライを連れて来なかった。ミライがエンディードを出さないようにと連れてくるよう、パトレア様は指示を出した。それなのにカディーラはリアを尊重し、置いてきた。カディーラの指示に従わなかったリアには罰を与えなければならない」


 エンディードを消すことがここではできたのに、私はミライをウバンに託してしまった。ミライが多くの犠牲を出さないようにこの人たちは動いていたってことなの。

 私の選択肢は間違っていたのかなと考えていると、カディーラ団長の隣に座っている人が私に告げる。


「ミライのことは忘れ、宿っている子を愛しなさい。それがパトレア様のご指示。逆らえばもっと大きな天罰を与えなければならない」

「そんな。ミライを忘れることはできない。それにこの子はミライの」


 言おうとしたら遮られ、パトレア様が宿っている子について教えた。


「すでに私の力でティルの遺伝子に変えさせました。ミライの弟妹ではなくなったのです。ティル、入ってきなさい」


 階段を登る音が聞こえそちらに身体を向けると、パトレア様たちと同じような衣服を着てその後ろには死んだはずの館長がいる。ティルは私の隣に来て、私がつけている指輪を外そうとするから、反射的に動いて一歩下がった。

 こんなの間違ってると思っても、館長に指を曲げないよう固定され、ワイズのと指輪を外される。


「ティル、返して!」


 館長に捕まってしまい、ティルはその指輪をパトレア様に渡してしまった。パトレア様はよろしいとティルを下げさせ、今度はティルが持っている指輪を私の手にはめようとする。

 嫌だ、嫌だってばとジタバタしていたら、階段を駆け上ってきてやめろよとキアが現れた。


「おや。まだ目覚めないかと思っていましたよ」

「姉貴を苦しめて何が楽しいんだよ!姉貴はミライのために弟か妹を作ったんだ!今すぐ元に戻せ!」

「言葉を慎みなさい、キア。スターリ、キアを降ろさせなさい」

「申し訳ございません、パトレア様。キア様、参りましょう。ここにいたら、キア様の心が奪われてしまいますよ。さあ早く」


 心が奪われるという言葉にキアと目が合うも悔しそうな瞳をして、スターリと一緒に行ってしまった。キアの背中を見ていたら左腕に指輪がはまってしまい、体に異変が起きる。

 何これと館長は私をゆっくり床に寝かせ、脈がだんだんと早くなっていき、ワイズとの思い出やみんなとの思い出、ミライの思い出が消え始めていくのを感じた。消えないでと鷲掴んでも掴めなくて、忘れたくないよと思いながら瞼が重くなって目を閉じた。


 リア、リアという声にはっと起き上がるとそこにいたのはティルだった。私、今まで何をしてたんだっけと思い出そうとも思い出せないでいたら、ティルが私を抱きしめる。


「ティル?」

「僕はもうリアから離れたりしない。今は僕との子が生まれるまでここで過ごすようパトレア様から指示をいただいてるよ」

「何も思い出せなくてごめんね」

「過去は過去だ。無理に思い出さなくても新しい思い出作っていこう」


 そう言ってくれてありがとうと告げていたら、キアがとても機嫌悪そうにして私たちのことを見ていた。声をかけようとしたけれど、キアは私の部屋を出てしまう。

 ティルは私のお腹に耳を当てていて、どっちかなと呟いていた。


「ティルはどっちがいいの?」

「んー僕的には後継ぎもいるだろうから、男の子でもいいけど、リアみたいな可愛い女の子でもいいかな」

「もう。私だったら女の子かな。男の子はもう」


 フラッシュバックのような感覚で、だあと赤ちゃんが何かを言っている場面。ティルが私の異変に気づき、私の頬に触れた。


「平気か?」

「うん。パトレア様はもうどっちなのか知ってるのかな?」

「どうなんだろう。神様的な人だから未来もわかってそうだけどな」


 ティルが未来という言葉で顔は思い出せないけど、まんまとはしゃぐ赤ちゃんがまた蘇る。ティルに諭されないようにそうだねと相槌を打った。

 ティルはパトレア様の新しい指示をもらうため、一度私の部屋を後にし、私はベランダに出る。何もかも美しくて私にはもったいないような景色だった。なぜ過去の思い出がないのか探しに行きたい。

 けれどお腹にいる子に支障を出したくないし、この子が生まれたらパトレア様に聞いてみよう。


 景色を眺めていると扉が一切ないから、呼ばれることが多く、振り向くと少女がいて、えっとと言葉を積もらせていたら、スターリですと笑顔で教えてくれる。


「皆さんを紹介するようパトレア様に申しつけられました。行きましょうか」


 ここにいる人たちを思い出せるかもしれないと、スターリについていくことにした。まず初めにあったのはビリーで部屋には多種多様のビー玉が転がっていたり天井にも大きさが様々で飾られている。


 リア様をお連れいたしましたよとスターリがいうと一番大きいビー玉の上に寝っ転がっていたビルーが降りて来た。


「初めまして、あちはビルー。これあげる」


 渡されたのは透明の中に赤色が混ざったビー玉をくれた。


「ありがとう」

「どちらに行かれるんですか?」


 散歩と言いながら行ってしまい、スターリはもうとほおを膨らませながら次行きましょうと、今度はカディーラの部屋へと訪れた。氷で作られた家具ばかりで、ソファーは何かの毛皮で作ったらしく、そこに座る。


「思い出せないということで、改めて自己紹介をしよう。私はカディーラ。主にここでは子どもたちの勉学教員をしている。リアの子もいずれ私が勉学を学ばせるよう指示をいただいているよ」

「よろしくお願いします。あの、どこかで会ったような気もするんですが」


 人違いだろうと微笑まれ、そうかなと思いながらも女の子に追い出されているような人を思い出せるような気がした。けれどカディーラじゃないなら別の人なのだろうと認識する。

 今度は中庭で身体を鍛えている、グックとヴェルディを紹介してもらった。


「らいはグックら。よろしくら、リアちゃん。困り事があったらいつでも相談しにきていいらよ」

「初めまして、ヴェルディと申す。俺は海軍の元帥でグックは陸軍の軍帥を任せてもらっている。だから基本、俺は不在が多くなることが多くあるが、グックはここを本部として使っているから気軽に相談するといい」


 海軍と陸軍とふわふわと疑問に思うも、よろしくお願いしますと伝え、次は天使の翼を持つピットの部屋へと案内してくれる。すごい羽の量と思いながらも、いらっしゃいと上から降りて来た。


「リア様、小生はピットと申します。主に小生はパトレア様の側近として働かせてもらっています。では小生はパトレア様もとへ戻るので、何かございましたらスターリに申しつけてくださいね」


 仕事があるのにわざわざ待っててくれていたとは思わなくて、ありがとうという前に行ってしまわれた。それにどこかで会ったようなと思い返しても、思い出せなくて、次行きましょうとスターリが言うからジルーのところへと向かう。

 ビルー、カディーラ、グック、ヴェルディ、ピット、そして次に会うのがジルー。合計六人が幹部と呼ばれている存在だけれど、まだ何一つ思い出せていない。本当に私はここにいたのだろうかとジルーがいるところは部屋中に扉がいくつもある部屋。


「ジルー、ジルー。てっきりここにいると思ったのですがいないようですね」


 スターリが周囲を見渡していると正面の扉から出てきてその奥の部屋は煙が漂っていた。眼鏡を拭きながら私たちがいることを知って、失礼と綺麗に身なりが勝手に整う。


「これは失礼いたしました。私はジルー。主にこの都市を管理している者になります。スターリ、リア様に全員をご紹介いたしましたか?」

「はい。全員に会わせましたよ」

「そうですか。ならスターリ。例の準備をするようパトレア様が仰っておりましたよ」


 あれを行うのですかと興奮しているようで、なんのことと首を傾げると、ジルーは微笑みスターリについてってあげてくださいと言われ、スターリについていくことになった。

 私の部屋に戻ると女官たちが待っており、スターリがお願いしますと言った瞬間、女官たちはささっと私を誘導して裁縫メジャーを取り出し、計り始めていく。何を作るのと計り終えた女官たちはメモったものを元に去って行く。


「スターリ、これから何が起きるの?」

「光であるリア様、そして影であるティル様の儀式になります。その二人が誓い合った瞬間にパトレア様が求めていらっしゃる景色が見えるのですよ」


 私が光でティルが影。私たちが結ばれた瞬間に何が起きるのか、まだその頃はわからなかった。



 イライラしてきたと僕の部屋で行ったり来たりして、出ようとすると兵に止められてしまっている。

 シフォンに言われた時、僕はあの階段を登って姉貴が助けを求めていたのに、僕はもうエンディードやファンズマが出せなくなってしまったことで、姉貴を助けられなかった。

 それで姉貴のことが心配で抜け出してきたはよかったものの、何も思い出せていないような感じ。僕のことは覚えていたけれど、泣いてはいなかったからワイズたちの思い出が消えていたとしかいいようがない。

 笑顔を貼り付けた感のパトレアという奴は、僕にあることを言われた。


〝キアたちは私の子。リアのようになりたくなければ、私の指示に従いなさい。そうしなければシフォンの命はない〟


 そう言ってシフォンを僕の隣に置かせてはいるが、シフォンもあまり記憶がないということ。こんな嘘だらけの国にいたら頭がおかしくなりそうだと、頭についている飾りを外そうとしたら女官たちに止められてしまう。

 僕が飾りを何度も外そうとするから、パトレアは僕に女官たちをつけさせた。僕は飾り物じゃないんだよと透明人間になって逃げようとするも、ここでは僕の姿が見えているようだ。

 ベランダにも兵が張り付いているから思うように逃げ出せないでいる。シフォンは今、パトレアのところに行ってるからな。


 諦めあぐらを掻きながら僕はアイズのことがとても気になっていた。アイズはノールト兵によって消えたのは確認とれたけど、アイズは一体どこにいったんだろうか。それにアイズを助けようと動いたのがノースで、ノースも姿を消したに違いない。

 ギーディスはこのこと知ったら、確実に怒るだろうな。そんなことを考えていたら女官たちがきゃーと嬉しそうな声を出し、何と振り向くとニディアと一緒にいた元ノールト兵、ヴェルディがくる。ヴェルディは女官たちを下げさせるも、壁からひょっこり顔を出していた。


「何しにきたわけ?アイズをどこにやったんだよ」

「そう怒らないでください、キア様」

「もともと僕らをここに連れてくるために、ノールト兵として動いていたんだろ!」


 服を掴みながら睨み、そう聞くとヴェルディは僕の腕を掴んで壁に突きつけられる。


「パトレア様がどれだけ、心を痛めていたと思う?ノア様は未来を見ることができ、ノア様はパトレア様から逃げたようなものだ。それを知られないようにとキア様を連れ出し、姿を消した。唯一、リア様だけの成長を見届け、ティル様と順調かと思えば、ティル様はワイズ様にリア様を託した。それが一番気に食わなかったんだよ。パトレア様はな、ヴィアント家のことがお嫌いなのだ」


 ヴィアント家、ギーディスたちのことを示しており、それが僕たちにも受け継がれていた。そう考えると母さんたちが危なくなるし、嫌っていたのに僕たちを子として見ているのはなぜだ。


「母さんの血を引いている僕らをどうする気だよ」

「さあ、そこまで俺たちにはわからないが、時期にわかるだろう」


 そこでシフォンが入ってきて何してると言うとシフォンが言うから、ヴェルディは僕の腕を掴むのをやめ行こうとした時のこと。ヴェルディがつけている正方形が一瞬赤く光ったような感じがしたが、ヴェルディはさっさと行ってしまった。

 今度会ったら、あの箱について聞くかと廊下を見つめていると、シフォンがむすっとした表情でいて、何もされてないよと一緒にソファーに座る。


「こうやってシフォンに会えるのは奇跡って言ったらいいのかな」

「僕も正直驚いている部分はある。パトレア様がいらっしゃらなかったら、こうやってキアに会えなかった。会えて余は嬉しいよ」

「僕もだよ。あ!これつけてくれてたんだ。嬉しい」


 シフォンがつけているペンダントを触っているとシフォンからの口付けがきてそのままソファーに寝っ転がった。シフォンは寂しかった思いが強かったのか、赤っ恥になりつつ僕に言う。


「もう一度、キアの隣で歩いていいかな?」

「もちろん。シフォン、寂しい思いさせちゃってごめんね。怖かったから、僕はずっと嘘吐いてたんだ。本当はシフォンのところに帰りたかった。でもエンディードの強さを知っちゃって、愛する人を傷つけたくなかったから」

「それでも余は隣にいたかったよ。これからはヴェルディじゃなくて余だけに弱音を吐いて」


 アイズの存在忘れてヴェルディのせいにされているのかは定かではないけれど、わかってるとシフォンに口付けをする。またこうして愛するシフォンと一緒にいられる喜びをシフォンと分かち合った。


 ◇


 ようやく我が子たちをこの土地に来させ、地上ではわたわが蒔いた天魔ジェルロが活発に動き、愚民たちの姿を見物をしていた。

 キアは相変わらず逃げる仕草はあるものの、シフォンがいることで落ち着きを見せているようだ。リアはティルにはめさせた指輪の効果で、記憶を封印している。外せるのはわたわかティルのみ。リアが外せることはなく、大人しくしてくれることを祈ろう。 


 パトレア様と呼ばれ振り向き、懐かしい格好をしているオーケル、影神の子孫と言うべきか。私の愛弟子である。


「申し訳ございません、パトレア様。ロンゴールを逃してしまいました」

「よいのです。ロンゴールがあの時点で死なないのは目に見えておりました。オーケル、名を変え、新国の王としてこれから軍を作りなさい。できれば早いうちがいいでしょう。リアたちを奪ったことで、ヴィアント家が動き出す」

「承知しております。新国はどちらに?」

「決まっています。ロンゴールが使用していた場所、デッドハラン王国。ファンズマは排除しそこに拠点を」


 そうですね。デッドハラン王国は消滅した。いずれ再びヴィアント家が訪れる場所。新しい国名はこれにしましょう。


「国名はリスヴィオン、オーケルの名はフィカスとして動き、全土地にリスヴィオンという国があることを知らせるのです。そうすれば、ヴィアント家は食いつてくる」

「かしこまりました。では直ちに建設の準備を行います」


 よろしく頼みましたよと告げ、フィカスに行ってもらい、私は階段を降りて地下へと向かった。地下牢では天魔ジェルロが牢屋一部屋に配置しているから逃げることはないでしょう。

 兵に敬礼されながら地下牢へと入り一番奥の牢の前で足を止めた。左腕をなくした老爺はわたわのほおに唾を吹きかけられ、素手で触らないようにしながら、手の甲で拭き取る。


「わしのことは処刑すればよかろう!なぜわしを殺さない!ナユをどこへやったんじゃ!ティルたちは無事なんじゃろうな!」

「口を慎め、愚民ども。わたわはお主を今でも殺したいほどだ。されどお主はあの天罰に耐え切った男。ただお主はもう炎魔は使えないただの老爺にすぎない。精々そこで飢え死すればよいだろうと思っただけだ」

「…ナユに会わせろ!生きているんじゃろ?それだけ聞けば飢え死にでもなんでもする!せめてじゃっ。安否だけを教えてくれっ頼むっ」


 頭を地面につき土下座をして、無様なものだと老爺の処刑は可愛く育てたノアに処刑させるつもりだ。それまでは生きててもらわないとなと老爺の頼みを聞いてやろう。


「衛兵、ナユをここに連れてきなさい」


 はっと一人の衛兵がナユを連れてきている間に、あのことを聞いておこう。


「どこまでイルラナ遺伝子の事を調べた?後誰に喋ったのかも吐いてもらいたい」

「…イルラナ遺伝子はエルラド族にしかない遺伝子。エルラド族は世に出ているおとぎ話の主人公。そしてそのおとぎ話の主人公を愛したファンズマ。それがジェバールの父あるいは祖父なのであろう」


 ほう、そこまで見抜いていたとは、さすがヴィアント家だ。まだ何かを知っているようで、老爺は話を綴る。


「ウラデュエはおとぎ話の架空世界だと思っていたが、ノールト国と取引をしているうちに、ウラデュエという言葉を耳にしていた。最初はおとぎ話の話をしているのだろうと思っていたが、ウラデュエが実在する瞬間をわしは見てしまったのじゃ」


 ウラデュエはノールト王国の上に実在する。これは移動させたほうがいいかもしれない。


「お見事。そこまで知っておきながら、隠し通していたとは、わたわはお主を見くびっていた。それでこのことを誰かに話したか?息子かあるいは息子の妻か」

「わししか知らぬ」


 目を見ればわかることだ。わたわに嘘をつく者は誰であれ、許しはしない。まあいいでしょう。ここからは出られまい。

 すると衛兵がナユを連れてきて、老爺はナユ無事じゃったかと涙を流すも、ナユはどちら様という瞳をしていた。それでも老爺はうんうんと頷くのみ。

 衛兵にナユを元いた場所に戻させ、老婆が感謝すると言われた。


「ナユはあのままにしておくのか?一応、リアたちの母親じゃぞ」

「あの娘を妻とは認めてはいないが、そうだな。ナユにはわたわの子を三人も宿してくれたことには感謝する。記憶をなくしたまま、愛する者のところへ返すとしよう」

「ルワードのことか」

「いや、ルワードからナユを引き取ったのだ。この娘を渡す代わりに愛弟子を辞めさせてもらうと。どこで何しようがわたわに見えているが、役目を果たした捨て駒はもう必要ない。いずれルワードは処分するつもりだ」


 じゃあ誰じゃと質問攻めでくる老爺だが、教えてやろう。


「ルワードの弟、ロンゴールだ。どこにいるかはわたわにはまだ特定できていないが、ナユを地上に降ろさせれば現れるだろう」


 老爺は驚愕しており、そんなに驚くものでもなかろうと思いながら、わたわはリアの様子を見に行くことにした。


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