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第六十六話 視られている

試験は続いている。

ざわめき。

魔力の衝突。

砂の舞う音。

その中に——“混じっていた”。

アリアは、ふと顔を上げる。


「……?」


ほんのわずかの違和感。


(魔力の流れが……)


乱れている。

だが、誰も気づいていない。

ヘスティアも少し遅れて顔を上げる。


「……今」


「はい」


二人の視線が、同じ方向を向く。

訓練場の端。観覧席。人影。黒いローブ。

でも——いない。


「……」


風だけが残る。


「気のせい……ではありません」


ヘスティアの声が低い。

アリアは頷いて言う。


「同じものを見ました」


沈黙。

そのとき——


「っ……」


リオ。小さく、顔をしかめる。

手の甲。灰色の痣が、

わずかに“痛みを持つ”。


「……あれ?」


本人は、首を傾げるだけ。

だが——ヘスティアの目が見開かれる。


「リオ!」


思わず声を上げる。


「え?」


アリアもすぐに動く。他のクラスのメンバーの一部、気づいた人たちはなんだ?と言う顔でこちらを見ている。ヘスティアは構わずリオに近づき続ける。


「手を」


「え、あ、はい」


差し出される手。その瞬間。痣の奥。

“魔法陣”が、一瞬だけ濃く浮かび上がる。

淡く。だが、確かに淡く光っていた。


「……っ」


ヘスティアが息を呑む。

アリアの目が鋭くなる。


(反応してる……外部からの干渉……?)


だが——次の瞬間、淡く光った光は何事もなかったように消えた。


「……あれ?」


リオは首を傾げる。


「今、なんか……ちょっと熱かっただけで」


「痛みは?」


「ないよ?」


リオの無邪気な返答。

ヘスティアとアリアは視線を交わす。

確信に近づく。アリアが小さく言う。


「……離れてください」


「え?」


「少しだけ」


リオは困ったように笑いながら、少し距離を取る。

その瞬間。また、違和感。


「……来ます」


ヘスティアが呟く。

空気が、歪む。

訓練場の端。

誰もいないはずの場所。

そこに——

“声”。


「……見つけた」


低い声。

誰にも聞こえていない。

だが——二人には、聞こえた。


「古き印を持つ者」


ヘスティアの心臓が跳ねる。

アリアが一歩前に出る。

手から光が、わずかに灯る。また声が聞こえる。

耳をすましてしっかり聞き取ろうとしないと聞こえない声。


「……まだ未熟か」


失望のような声。


「だが——器としては十分」


一瞬空間が揺れ、影が現れたかと思うと完全に消えた。


試験は何事もなかったかのように、続いている。

リオだけが、きょとんとしている。


「……今、なんかあった?なんか訓練場の魔力おかしかったよね?上手く言えないけど。変な魔力混じってなかった?」


「いいえ。みんなが力の限り魔法を出しまくっているからです。」


アリアが即答する。

ヘスティアも頷く。


嘘。

だが、必要な嘘。

リオは首を傾げながらも、納得してしまう。

その様子を見て、二人は確信する。


“見つかった”。


おそらく...教団に。


そして——


“狙われている”。

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