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第三十九話 初めてのクラス(9)

「食堂、あっちだぞ」


ガイアは先導して道案内をしてくれる。

「なんでそんなに知ってるの?今日入学したばかりかのに。」


「ほら、あそこに離れた塔があるだろ?あれ初等部なんだ。13歳から入学するとこ。俺らみんな一緒だったんだ。だからたまにこっちの塔もお邪魔したりしてたんだ。」


「え、そうなの?」


「でも16歳からの入学試験とはまた別。一般教養を学ぶだけのために初等部だけ通うやつもいるし。逆に入学試験で振り落とされる奴らもたくさんいる...いや、ほとんどが振り落とされるんだ。」


「え...」


どうやら魔法学院の入学試験は難しいらしい。

受かってよかった...

そんな話をしていると後ろから声がした。


「待て」


低い声。

全員が振り向く。


そこに立っていたのは——ライルだった。

腕を組んだまま、少しだけ不機嫌そうな顔。


「……俺も行く」


ガイアがニヤッと笑う。


「お、来るのかよ」


「悪いか」


即答。

一瞬だけ——視線が動く。

リオの方へ。


「……飯だろ」 


ぶっきらぼうに再度言う。 


「俺も行く」


遠回しでもない、ただの宣言。


「いいじゃんいいじゃん!」


テティスがぱっと明るくなる。


「人数多い方が楽しいよ!」


「うるさくなるだけだろ」


サナがぼそっと言う。


「お前もだよ」


ライルが即座にサナに返す。


「……何か言った?」


「なんだよ」 


一瞬だけ、空気がピリつく。


だが——


「まあまあ!」 


ガイアが間に入る。


「ケンカすんなって、腹減ってんだろ?」 


軽く笑い、そのまま、リオの肩に腕を回す。


「ほら行くぞ、主役」 


「え、僕?」

「お前以外いねぇだろ」



歩き出す。

さっきより、少しだけ賑やかに。

リオの右に肩を組んだガイア。リオの左にサナ。

少し前にテティス。

——そして。

少し後ろにライル。



「ねえねえリオくん!」


テティスが振り返る。


「何度も言うけど、さっきのほんとすごかったよね!」


「え、いや……」


「なんかこう、スッて避けてた!」


ジェスチャー付きで大きな身振りで再現する。


「わかるわかる」


ガイアも頷く。


「なんか“もう分かってます”みたいな動きしてた」


「そんなつもりは……」


リオが困ったように笑う。

そのやり取りに——


ライルは無言だった。

サナが目ざとくライルに横目で言う。


「……何か言いたいの?」


「別に」

即答。だが、ライルはそのまま続ける。


「ただ……」


一拍。


「次は負けねぇ」

はっきりとリオに向けて言った。


「え?」


リオが少し驚く。


だが——


「……うん」


素直に頷く。


「俺も、頑張る」





その返答にライルが一瞬だけ、言葉に詰まる。ライルは思った。


……なんだそれ


挑発でも、余裕でもない。

ただの本音。

だからこそ——余計に、悔しい。


小さく笑う。


「言ってろ」


だが、その目にはしっかりと火が灯っていた。





「おーおー、始まったな」


ガイアが楽しそうに言う。


「ライバルってやつ?」


「ちげぇよ」


ライルが即座に否定。 


「勝手に言ってろ」


サナがボソリと言う。

「いいじゃん、分かりやすくて」


「何がだよ」


「べつに?」

少し笑ってそれだけ言った。

それ以上は言わない。




「ほら着いたぞー」


ガイアが手を振る。食堂の扉が見える。


「今日はライルの奢りな!」


「は?なんでだよ」


「ノリ?ライバル宣言記念?」


「却下だ」


騒がしいやりとりを聞きながらリオは先ほどのライルの言葉を頭の中で反芻していた。

ライルは、昔はヴァルクに同じようなことを言っていた。

僕は弱虫と言われていて見向きもされなかった。


やっと、同じところに立てたのかな?


少し嬉しくなってまたじんっと胸が熱くなった。


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