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崩壊した世界でみんなで楽しく生きていく〜サバイバル〜  作者: 伊右衛門


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調査編2

○「本当に大丈夫なんですよね?」

「大丈夫、大丈夫」

不安そうな面持ちの男の問い掛けに軽く答える。


今、オレたちは結社の本部が置かれているかつての首都に足を踏み入れている。


一応、商売敵の本拠地に乗り込む訳だから変装しようとの意見もあったのだが、黒いローブを被ってこそこそ動き回るなど不審者以外何者でも無いので、結社の本拠地を教えてくれた集落から案内人を雇ってここまで来た。


もしかしたら、結社は各地で盗賊や変異体を退治しまくっている妙な4人組の情報を掴んでいるかもしれない。

しかし、こうして5人組になればバレないだろうとの実に知性溢れる作戦でオレたちは結社の本拠地に侵入したのだ。

まぁ、オレたちの顔を知っているのは恐らくあのコウモリ男ぐらいだから大丈夫だろう。


バレても力尽くで突破する事ぐらいは出来るだろう、多分。


「すっごい人だね」

玲子が周囲をきょろきょろ見渡す。

玲子の言う通り道には多くの人が歩いている。

さすがに車は走っていないがこれまで訪れた集落とは比較にならない程の人の多さだ。


「あれってお店?お金が使えるのかしら?」

マスターが道端で簡単なテントを使った店らしき物を指差す。

並んでいる主な商品は食料品のようだ。

「お金はさすがに使えません。ほとんどが物々交換です」

案内役の男が説明してくれる。

周辺の集落で作られた作物をここまで運んでいるそうだ。

もちろん輸送には盗賊に襲われるなどの危険がある為、結社が護衛をするそうだ。

作物を作っている集落も当然、結社に参加した集落なので結社の護衛がいる。


なるほど。結社は消費と生産、流通の全てを支配して勢力を伸ばしているんだな。


「想像以上の勢力みたいね」

マスターが呆れたように肩を竦める。


オレたちは案内人に紹介された宿屋に入って今後の事を相談する。

そう、なんとここには宿屋まで在るのだ。

なんでも周辺の集落から様々な品物を求めて人々がやって来るので宿屋が商売として成り立つそうだ。

もっとも食事無しの素泊まり限定で昔の木賃宿みたいな感じだけど。


オレたちギルドが各地を点で結んでいるのに対して結社は各地を面で支配している感じだ。

外に広がる速度はギルドより遅いだろうが、支配された地域だと結社から抜けるのはかなり難しいだろう。

周辺が結社支配の集落ばかりだと孤立して自滅してしまうからね。


ギルドが一種の総合企業だとすると結社は国家を目的に活動してるみたいだな。

どちらも安全保証を売りにしているが、その目的が大きく異なる印象を受ける。


そのうち独自通貨とか作るんじゃないだろうか?


「アニキ、ごはん買ってきたよ」

案内人と玲子たちが宿に戻ってきた。

「ご苦労さん」

玲子たちが持っている食材を受け取る。

宿では食事は出ないので台所を借りて自分達で料理を作らなくてはいけない。

本当に木賃宿方式なんだな。


オレたちは当然、お金なんて持っていない。

そこで塩を持たせたのだがどうやら大丈夫だったみたいだ。

「塩はどこでも品薄ですからね」

玲子たちに同行してくれた案内人が胸を張る。

「でも、どこで塩を手に入れたのかさんざん聞かれて困りましたよ」

荷物持ち兼護衛として同行していた藤井くんが苦笑する。

さとるさん考案の施設で作られた島の塩は、かなり品質がいいので大量に仕入れたいと申し込まれ断るのに苦労したそうだ。


「でも、結社は結社以外との交流は禁じてるんじゃないのか?」

塩の仕入れ先が結社以外なら取引出来ないし、結社内なら結社に言えば取引出来ると思うんだが?


「今、結社も人手不足で伸び悩んでいますからね」

案内人の説明によると結社は参加した集落に10人ほどの人間を派遣するそうだ。

派遣された人間は集落を守りながら、収穫があった時には荷物の護衛としてここまでやって来る。

各集落に10人の護衛が必要とすると勢力が拡大すればする程人員が必要になってくる。


「結社に参加すれば安全だって言っておきながら、最近じゃ護衛無しですよ」

案内人の住む集落は、最近になって結社に参加したのだが、最初の約束と違い護衛はいまだに派遣されていない。

それなのに結社に参加していない集落との交易を禁じられては、結社に参加したメリットは無いに等しい。

「一応、定期的に護衛が回って来ますが、あれは護衛っていうより監視ですよ」

それが不満で彼の集落は結社からの離脱を考えている。

だが、結社から離脱したらどんな報復があるか分からない。

それに今後も結社が勢力を拡大出来るのであれば離脱しない方がお得かもしれない。

それを判断する為に彼はオレたちと同行しているのだ。


マスターが作ってくれたご飯を食べながら二人に町の様子を教えてもらう。


「それでどんな感じだったの?」

「町の人間は結社様々って感じですが、周辺の状況はほとんど知らないみたいでした」

「情報が秘匿されてるのかしら?」

「どうでしょう?ただ知らないだけかもしれませんし自分には判断出来ませんでした」


防犯の為か、鉄板を打ち付けられた窓を少し開いて町行く人々を見る。

町行く人たちはそれなりに清潔な服に身を包み忙しそうに歩いている。

これまでの集落では感じられなかった活気を感じる。

町では物取りなどの犯罪はあるそうだが、概ね治安は維持されている。


これが結社の努力の結果というのなら結社と敵対するのは得策では無いのかもしれない。



「アニキ、あれ」

窓から人々を見ていたオレの隣にやって来た玲子が街角をそっと指差す。


街角の建物に数人の男たちが背を預けている。

こちらに視線を向ける事はしないがどうやらこちらを警戒しているようだ。


・・・ちょっと、騒ぎすぎたかな?



深夜を過ぎた頃、宿屋の中がバタバタと騒がしくなった。


「結社だ。宿を改めさせてもらう!」

数人が階段を駆け上がる足音がする。

足音は予想通りオレの部屋の前で止まった。


「開けろ!ここにいるのは分かっている!」

扉を激しく打ち付けられる。


やれやれ、こんな時間にご苦労な事だ。

オレは眠い目を擦り部屋のドアを開ける。

「やぁ、いらっしゃい」


「壁に手を付いて跪け!」

「はい、はい」

ふんどし姿のオレは大人しく指示に従う。


部屋に突入してきたのは四人。全員が短槍で武装している。

短槍を選んだのは室内での取り回しを考慮したからだろう。


二人がオレを短槍で狙いながら他の二人がオレのボディチェックを行う。

ふんどし一枚の姿だったのにふんどしまで剥ぎ取って調べられる。

まぁ、武器は持っていないんだけどね。


-こいつら、手慣れてるな。

見ただけでは判断を下さずきっちり調べる奴等を見て内心舌打ちをする。


「仲間はどこだ!」

オレのボディチェックが終わった頃、他の部屋を調べていただろう男たちが部屋にやって来た。


-狭い部屋に男だらけになってしまった。

-う~ん、男臭い!


「オレは一人で旅をしてる」

「嘘を言うな!」

とぼけると男の一人が短槍でオレの背中をぶっ叩いた。


「うっ」

驚いて声をあげたのは殴られたオレでは無く殴った男の方だった。


-そんな細い槍で殴るから曲がっちゃったじゃないか。

-もったいない。・・・それは、オレのせいじゃないよね?


「え~い、詰所まで同行しろ!」

二人の男がオレの両腕を掴んで立たせる。


「別に構わないがふんどしぐらい返してくれ。これじゃ、公序良俗に反するだろ?」

いくら深夜とは言え素っ裸で町中を歩くのは勘弁してほしい。


振り返ったオレの股間に男たちの視線が集中する。


「でけぇ」

オレの股間を見た男たちの一人が思わず口にする。


・・・そっち系の人じゃないよね?

思わず感想を口にした男からそっと身体を離す。


「さっさと身に付けろ!」

返してもらったふんどしをいそいそ身に付ける。


-ふ~、やっと落ち着いた。ぶらぶらしてるとどうも落ち着かない。


「それじゃ、詰所とやらに案内してくれ」

オレは男たちににっこり笑い掛けた。



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