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死に戻ったわたくしは、あのひとからお義兄様を奪ってみせます!  作者: 秋月真鳥
二章

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1.お義兄様の変化

コミカライズの続編用に書いた物語です。月曜日と金曜日に更新します。

 お義兄様が学園を卒業してから、わたくしは学園の二年生になった。

 それは時間が戻る前と同じなのだが、お義兄様に変化があった。

 お義兄様は学園を卒業すると、王立アカデミーに通い始めたのだ。


 時間が巻き戻る前のお義兄様は、学園を卒業した後はクラリス嬢……今は結婚しているのでクラリス夫人と呼ばせてもらうが、クラリス夫人とジャンを社交界から追放した後で、領地経営の勉強のためにバルテルミー公爵領に行く予定だったのだ。その前にお義兄様が殺されてしまったので、それは果たされなかったが。


 今のお義兄様は王立アカデミーの医学科に通っている。

 それに関して、お義兄様はお義父様とお義母様と話していた。


「アデリーが毒を飲まされそうになったときに思ったのです。その場で迅速の処置できる人物がいれば、アデリーが毒を飲んでいたとしても、助かったかもしれないと」

「それで医者になりたいというのか」

「それに、アデリーが小さいころに熱を出したことも思い出しました。わたしはうつってはいけないからと隔離されて何もできなかった。医者になればアデリーの看病ができるでしょう。それに領主が医者であれば領民も心強いと思うのです」

「貴族の医者は珍しいですが、マクシミリアンが目指すのであれば反対しません」

「元アルシェ公爵夫人の件が落ち着いたとはいえ、社交界は闇が多い。身内に医者がいるのは頼りになるかもしれない」


 お義父様もお義母様も、お義兄様の考えに賛成していた。

 それで、お義兄様は王立アカデミーの医学科に進学したのだが、王立アカデミーに進学したのはお義兄様だけではなかった。

 ヴィクトル殿下もだった。


「国王となる兄上の補佐をするために、今のままでは勉強が足りないと思ってね。学生時代はマックスに一度も勝てなかったし」

「それを根に持っているのですか?」

「ぼくは優秀でなければいけないのに、マックスに一度も勝てなかったのは悔しい。王立アカデミーでは政治経済学科だから、マックスと競うことはないのだけれどね」


 ヴィクトル殿下はヴィクトル殿下でお考えがあってのことだった。


 王立アカデミーは貴族たちが通う学園と隣接している。

 長い階段を隔てて上の方にある王立アカデミーと下の方にある学園とは繋がっていた。

 王立アカデミーに進学する生徒自体が少ないので、学園と学食やサロンなどの施設を共同にしているのだ。


 王立アカデミーには軍事科、政治経済科、医学科などの科があって、そこを卒業した者たちが専門の職に就くことになる。

 ちなみに、ジャンは学園を卒業した後、バルテルミー公爵家で働く文官になって、お義父様について仕事をしている。


 王立アカデミーが学園と隣接しているので、わたくしはお義兄様と毎朝一緒の馬車に乗って学園まで通学していた。

 先に学園について馬車から降りるわたくしに、お義兄様が毎日約束をする。


「昼休みには学園の方に行くから、待っていてくれるね」

「はい。お昼を一緒に食べましょう」


 お義兄様と過ごせる時間が増えたことにわたくしは喜んでいた。

 わたくしを馬車から降ろしてから、お義兄様は王立アカデミーまで馬車に乗って行く。お義兄様の乗った馬車を見送って、わたくしは学園の建物に入った。

 学園は授業棟と食堂と講堂と体育館とサロン棟に分かれていて、一番広い授業棟でわたくしは授業を受ける。

 わたくしは二年生で、三年生にはダヴィド殿下とマノンお姉様が在学している。

 ダヴィド殿下はわたくしの父方の義理の従兄であるし、マノンお姉様も母方の義理の従姉である。

 学園ではお茶の時間までがカリキュラムに入っているので、わたくしはマノンお姉様の主催するサロンに参加させてもらっていた。


 将来はお茶会を開くときに主催になることがあるので、お茶の手配やお茶菓子の手配もサロンで学ぶ。今はマノンお姉様に教えてもらっている最中だが、わたくしもいつかは学園でサロンを主催することになるのだろう。


 午前中の授業が終わると、わたくしは足早に王立アカデミーと学園を繋ぐ階段下まで移動する。

 長い階段をお義兄様とヴィクトル殿下が話しながら降りてくる姿は、美しくて目を見張ってしまう。

 お義兄様とヴィクトル殿下は学園に通っていたころから人気者だったので、女子生徒が二人を見て騒いでいるのが聞こえるが、お義兄様は真っすぐにわたくしのところにやってきた。


「アデリー、今日の昼食はどうしようか?」

「食堂で食べますか? お弁当を買ってサロンか外で食べますか?」


 昼食は食堂で食べることもできるし、お弁当を買ってサロンを借りて食べることも、外で食べることもできる。

 天気はいいのだが、日差しが強くて少し暑いので、今日は室内で食べた方がいいかもしれない。

 そんなことを考えていると、お義兄様が提案する。


「食堂はうるさくてゆっくり食べていられない。今日はサロンで食べようか」

「ぼくもご一緒していいかな?」

「婚約者同士を邪魔するつもりですか?」

「マックスは怖いな。話したいことがあるんだ」

「それならばご一緒しましょう」


 昼食を一緒に食べたいと言ってくるヴィクトル殿下に、冗談っぽく嫌味を言ったお義兄様だったが、ヴィクトル殿下から話があると言われれば断ることはできない。

 食堂に隣接する売店でお弁当を買って、サロンに移動する。

 サロン棟にはいくつも小さな部屋があって、そこを借りて静かに少人数で食事をすることができた。


 サロン棟の椅子に座ってお弁当を広げる。

 今日は白身魚のフライにタルタルソースをかけたものをサンドイッチにしたお弁当だった。美味しいのだがタルタルソースや具だくさんの白身魚がはみ出てしまいそうになって、わたくしは食べるのに苦労するのだが、お義兄様やヴィクトル殿下は体が大きいので口も大きくてぱくぱくと食べている。

 サロンには侍女もいて、茶葉を持ち込めば紅茶を入れてもらえる。

 わたくしもお義兄様もヴィクトル殿下も何度もサロンを使っているので、茶葉はキープしてあったので、侍女は自然にわたくしたちにお茶を入れてくれていた。


 ある程度食べてしまうと、ヴィクトル殿下が話し始めた。


「ぼくの婚約者の王女殿下を覚えている?」

「はい、覚えています」


 確か、灰色の髪に水色の目の色素の薄い女性だった気がする。ヴィクトル殿下より年下だったのも覚えている。

 わたくしが答えると、ヴィクトル殿下はわたくしの方に向き直る。


「彼女が、この国のことを学んでおきたいと、学園に留学してくると聞いているんだ」

「王女殿下はお幾つですか?」

「誕生日で十六歳になられた」


 誕生日で十六歳ならば、学園の四年生になるだろう。

 わたくしとは二学年離れている。

 授業などではあまり関わることはないかもしれないが、王女殿下はサロンを探すかもしれない。


「入るサロンがないということですか?」


 学園のお茶の時間は数名の知り合い同士が集まってサロンで過ごすことになっている。わたくしはダヴィド殿下とマノンお姉様とご一緒できているが、隣国から来る王女殿下は入るサロンがないかもしれない。

 そのことを気にすれば、ヴィクトル殿下は頷く。


「もし、彼女が困っていたら気にかけておいてあげてくれないかな?」

「もちろんです」


 政略結婚とはいえ、婚約者を思いやるヴィクトル殿下の優しさに感動しつつ、わたくしは頷いた。


「彼女の名前はミレーヌ・アルカン。覚えておいてくれると嬉しい」

「ミレーヌ殿下ですね」


 まだ一度しか会ったことのないミレーヌ殿下だが、この学園に来るのであればわたくしは歓迎しようと思っていた。

 ダヴィド殿下も、マノンお姉様も、きっと歓迎してくれるだろう。ダヴィド殿下はヴィクトル殿下から話を聞いているかもしれない。

 ミレーヌ殿下の話はそこで終わって、わたくしはお義兄様とヴィクトル殿下と昼食を楽しんだのだった。


読んでいただきありがとうございます。

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コミカライズ版もよろしくお願いします。

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