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エピソード29 = 長い廊下

 そこは、一言で言い表わすならば“明るいハイヴ”だった。

 壁には大量のパイプが通り、地面は面一のコンクリート。

 極め付けに通路に一定間隔でハイヴの入り口にあったものと同じ規格の鉄格子が備え付けてある。


 ここがハイヴでないという証拠は光源気体がセルと同期していることのみであった。


「ノーズさん…。」

「ん?なんだ?」

 オレを下ろした後に、医務室へ誘導すると言ってオレの手を掴んでのしのしと歩いていたノーズさんは、その足を止めてこちらを向く。

「ここ…ハイヴとそっくりで………不安です…。」

 オレは正直に伝えた。

 ハイヴそっくりの空間…いつ遺神体が現れるかと考えてしまうここが安全だとはとても思えない。


「んーーってもなぁ…。ここ以外に安全な場所はねえしよ…。それにハイヴに似てるっつってもよ、柱央中枢機構もだいたいこんな感じだぜ…?」

 そう言ってノーズさんは再び歩き出す。

 オレと手を繋いでいるのはオレを逃がさない為だと今気付いた。


 …柱央中枢機構がここと同じ………?

 オレは嫌な予感がした。


 よく見ると、ハイヴは遺神体のメンテナークラスがしっかりと整備していたせいで埃や傷ひとつない状態だったのが、ここは埃も傷もそこらじゅうにある。

 ひとまず遺神体が侵入してくる可能性は低いだろうと思い安心する。



 _________医務室に到着した。


「じゃ。オレは先に居住区画に戻ってお前の無事を言っとくよ。じゃな!」

 その言葉を聞いて疑問に思った。

「あのっ!」

「……ぁあ!?」

 歩き始めてすぐに呼び戻されて出鼻を挫かれたノーズさんが戻ってくる。

 調子狂うな、とでも思っていそうな表情であったが、どうしても聞かなければならない事があった。


「…もしかして…オレを探す為だけに外に出ていたんですか……?」

 疑問はこれだ。

 たったオレ一人だけの為に身を危険に晒してまでシェルターから出てきてくれたのだったら申し訳なさすぎる。

 すると、オレの思っている事を察したのか、ノーズさんはオレの頭をくしゃくしゃと撫でてぶっきらぼうに答える。


「馬鹿言え、他にも居ないヤツはいくらでもいんだから出てただけだ。テメェ一人の為なんて思うのは自意識過剰だぜランド〜!」

 今度こそと言わんばかりに足早に去ろうとするノーズさん。

 オレ一人を連れて帰ってまた外に出ない事といい、この反応といいどう考えてもオレの為に探しに出てくれたことは瞭然だった。


「あのっ………………_______ありがとうございます!」

 心からお礼を言った。

「へっ!気にすんな!」

 今度は振り向かずに去っていくノーズさん。

 その背中は、とても大きく見えた。



 ……………そういえば、ライズさんにもしっかりとお礼を言えていなかったな…。

 ライズさんはここにいるんだ。

 あとで会う時にしっかり言わなきゃな。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



 擦りむいた箇所と捻った足に応急処置をして治療は終わる。


「ありがとうございました!」

「どういたしまして!みんなは向こうにまっすぐ進んだ1番奥の扉に居るから早く無事を見せてあげるといい。」

 若い先生は親切に行き先を指示して自分の持ち場へ戻る。

 オレはその指示に従って廊下を進む。


 その廊下は長く果てしないせいか、1番奥と言われたものの終わりが見えない。

 人1人いないその空間はやはりハイヴに戻ってきたと錯覚するには十分で、オレは曲がり角を見るたびに何か潜んでないかを警戒してしまう。


「そういえば…オレの声はリンに届いたのかな………?」

 皆に迷惑をかけてまで行った事が無意味というのは避けたい。

 それに、ライズさんが何もせずにここにこもっている事が気掛かりだった。


 _____まさか、ライズさんでも大ムカデを倒すことは出来ないのか………?

 ハイヴの中で臆せずに飛びかかって大ムカデを無力化するライズさんを見た為に、想像することが出来なかった。


 いつのまにかオレは、ライズさんを何でもできるだろうと崇めていた。

 憧れは理解の最も遠くにある感情だ、とはいうがその通りだった。

 ライズさんの何も知らないのに、オレは勝手に理想の聖人の様に決めつけていた。

 リンもそうだ。

 目の前の子供を助けることはあっても、遠くの人々を助ける義理なんてないじゃないか。

 それなのにオレはリンに助けを求めた。

 僅かな間しか一緒にいなかったが、あの人なら助けを求められたら応じるお人好しだと無意識に思って、その優しさに付け込もうとしたのではないか?


 …………そうであったのならばオレは_________


「___________クズだ。」

 恩返しがしたい、などと思えば対価になると思っている糞野郎だ。



 ハイヴに似ている空間というだけで、オレの心は簡単に落ち込んだ。

 自分を貶める事で自分の価値をさげて、死ぬ恐怖を和らげているのかもしれないが。


 そうしていると、奥に扉が見えてきた。

 永い廊下の終わりが__________やっと訪れた。

ノープランで心理描写を始めるとネガティヴになるのは作者の性なのか…。

もっと明るい話が書ける様になりたいものです。

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