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エピソード25 = 矛盾

「……どうだったかな…?記憶が曖昧だから大分端折ったところもあるけど。」

 僕の言葉を聞き、男は無言のまま俯いている。

 その間も切断された腕からドクドクと血が流れ出ていた。


「さて、お互い時間は無いんだ。僕はあなたがライラに謝れば…それで良い。」

「……そうやってあいつらも殺したのか…?」

 男の声は淡々としていた。

 今までの者は皆、怒りや恐怖に震えていたのに。

 僕は今までと違ったその姿を見て期待をしてしまった。


 ……今度こそは生きているまま謝罪をしてくれるかもしれない…!

 自分の狂い方にも既に慣れていた。

 思考ごとに前提の知識が違っていて、そのズレた前提について考えようとすると耐え難い恐怖が襲い来る。

 ……時間は無いのだ、肉体にも、精神にも。


「彼らは死ぬ直前まで本当に謝ることが出来なかった。…ライラは優しいから……どんな謝罪だって受け入れる。それなら、ライラが受け入れていないものは…謝罪なんかじゃない。」

 前提…僕の中のライラ。

 根拠…ライラの言葉。

 それを疑ってはならない。


「…お前の言っている事が理解出来ない!…お前は狂っている!」

 淡々としていた声が荒げてきた。

「人間未満のメンデッドがぁ!お前たちは死んで当ぜ…ぐッ!…ぁ。」

 最後までは言わせなかった。

 男の脚に刃を突き刺し黙らせる。


 ……どうすればいい?

 ………どうすればこの男を改心させ謝罪させる事が出来る……?

 ……他の皆と同じ様に死の間際に謝罪させるしかないのだろうか…。

 前提…今までの者が死の間際に謝罪をしているという確信。

 根拠…僕の中のライラの状態。


「………その出血では長く持たないよ。早く心のそこからライラに謝れば、治療で一命を取り留められる。僕が医療機関まで運んであげよう。」

 何故、僕はこの男の死を避けようとしている?

 …思えばここに来た時点でおかしかった。

 意神体のパーツで意識がはっきりとしかかった時と似た感覚。

 ぐちゃぐちゃになった僕の心は、このまま中途半端に正気に戻ればきっと完全に壊れてしまう。

 間違った前提を間違っていたと認識してはならなかった。


 ……間違っている?どこから気付いていたのか?そして、それはどの前提か?


 …いや、認識するな。あと少しだけ待ってくれ。

 自分の疑問を無理矢理に搔き消す。


 …ぁあ…!そうか。

 ここに来て、はじめて僕は直接人を殺したのか。

 納得した。


 ……僕は自分の手を汚したくなかっただけだったのだ。


 どうせ長くない僕と、皆の心の中に生き続けるライラ、どちらが大事かなんてはっきりしている。

 矛盾…ライラのみが生き続けると思っている。



 覚悟は決まった。


「…もう待てないや。」

 突き刺した刃で撫でるように、男の四肢を切断した。


「…!!!…ッ!……ぐァ…!……!!!!!!」

 言葉にならない悲鳴をあげて男が地に背を付ける。

「ゔ………ぎぃ…!……ナぜだっ!?!!」

「あなたは本当に謝罪をする気がまだない。外面だけ謝罪されたところで、僕らを見下すあなたはなんの不都合もない。」

 プライドの高いこの男の事だ。

 ここでライラに謝ったところで、それは無人の空間でアリに向かって謝るようなものだ。

 それがどんなに情け無い姿であったとしても、観測者がいなければそれは恥にはならない。


 …ならば、恥だと思える状況を作ればいい。



「貴方には、僕らを見下せない立場になってもらう。」

 男はその言葉にピンと来た様で、さっきまでとは打って変わって従順になる。


「おい!…まサか!?………………たのム!……それだけは止めてくれ…!…ぐぅあ…!…すマなかった!モウしワけ……ァ…いと思ってイる!」

 ペラペラとペラペラな謝罪の言葉を吐く。

 それを見ると、僕は無性に腹が立ってきた。


「あなたをこれからメンデッドにする。そのあとで謝罪を受け付けよう。…少なくとも、今の言葉はライラも僕も受け取れない。」

 僕は男を担ぎ、柱央中枢管理所に向かう。


 自分の行動が間違っていようが関係はない。

 ただ実行するだけだった。

難産どころかこれは死産か……と思えるくらい描きにくかったです……。

先を考えずにキャラを作ると大変…。


忙しさもあり短めです。

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