出発前の挨拶
「あ、そうだ! 鈴、出発する前にちょっと待ってて!」
生まれ変わったカレンエクスプレスに乗り込もうとした瞬間、ふうがポンと手を叩きました。
「この数日間、カサートの商人ギルドやドワーフのおじさんたちには本当にお世話になったからさ。ちゃんとお礼と『お店たたむね』って挨拶をしておきたいんだよね!」
「ふうちゃん、義理堅いですぅ……! うん、大事なことですもんねぇ」
鈴は深く頷くと、カサートの街の方を振り返りました。
「それじゃあ、ふうちゃんが挨拶に行っている間、わたし達は人がいない静かな場所で待っていますねぇ!」
「うん、すぐ戻るから待っててね!」
ふうが元気よく街の中へ駆け出していくのを見送ったあと、鈴たちは大きな木の陰の静かな空き地で待機することにしました。
人気のない木陰
「ふにゃぁぁ……。ここなら人も来ないし、静かで落ち着きますねぇ……」
鈴はセイナのぬいぐるみを抱っこしながら、ホッと息をつきました。
「そうですね。鈴殿の【条件反射の擬態】も合わさって、ここなら誰にも気づかれません。ミィア殿とカレンも周囲を警戒してくれていますから安心です」
ヒルダが周囲に視線を配りながら優しく微笑みます。
それから間もなくして、挨拶を終えたふうが息を切らせて走って戻ってきました。
「お待たせー! ドワーフのおじさんたち、すっごく寂しがってたけど『またいつでも来いよ!』って見送ってくれたよ! これで心置きなく行ける!」
「ふうちゃん、お疲れ様ですぅ! それじゃあ、わたし達のおうちへ出発進行ですぅ!」
爆速突破! カサートの街なか
「カレンさん、お願いですぅ!」
「クウーン!!」
ふうの【神話級・可愛いクラフト】によって超絶ラブリー&クマ耳ピンク仕様へと生まれ変わったカレンエクスプレス。カレンが力強く大地を蹴ると、神話級の消音・空気抵抗無効化結界が車体全体をふんわりと包み込みました。
――シュバッッッ!!!!
音すら置き去りにする超・爆速。
カレンエクスプレスは、カサートの街のメインストリートから門へと続く大通りを、まさに疾風のごとき速さで一瞬にして駆け抜けていきました。
そのあまりの速さで街を行き交うドワーフたちの目には何も映りません。
「……ん? おい、今……何か通ったか?」
「あ? 何言ってるんだ、風がちょっと強く吹いただけ?」
「いや……なんか、ピンク色のすごい可愛い残像と、甘いイチゴみたいな良い香りが一瞬で吹き抜けたような……」
「お前、鍛冶のやりすぎで疲れてんじゃねえか?」
ドワーフたちは首をかしげ、お互いの顔を見合わせるばかり。
誰一人として、自分たちが注目していた天才技師の少女と、謎の超技術馬車が目の前を爆速で通り過ぎて行ったことに気づく者は いませんでした。
「あははっ! ドワーフのおじさんたち、全然気づいてない! この新・カレンエクスプレス、すごすぎるよ鈴!」
車内で窓の外を見ながらふうが大爆笑します。
「ふにゃぁぁ……! 揺れも音も全然なくて、まるで静かに空中を飛んでいるみたいですぅ……!」
「ガルゥ♪(ドヤッ)」
新しい肉球アーマーと首飾りを光らせたカレンは、誇らしげに鼻を鳴らしながら、鈴の大切な我が家(隠しダンジョン)が存在するアステリアの森を目指し、爽快にカサートの町を爆走していくのでした――!
現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 現在の様子 |
御坂 風| 【挨拶完了・大満足】 | ドワーフへのお礼も済み、新生エクスプレスの性能に大興奮。 |
| 桜井 鈴 | 【快適ドライブ】 | ホッと胸を撫でおろす。 |
| カレン | 【快適な爆走】| ふうの強化&おめかしでテンション最高潮。爆速で森へひた走る。 |
| ドワーフたち| 【ポカン】 | 「今なんか可愛い風が吹いたような…?」と首をかしげている。 |




