対照的な姿
「うぅぅ……わ、わたくしに向かってあそこまで容赦なく怒鳴り散らすなんて……あの女、絶対に許しませんわ……っ!」
「エリーゼ殿の論理的かつ法的な猛攻……。さすがの俺の魔導回路も、完全にオーバーヒートさせられたな。一度撤退して、体制を立て直すしかあるまい……」
商業ギルド長エリーゼの圧倒的な正論と迫力に完全敗北した二人は、涙目になりながらアステリアの街から逃げ出すようにして『帰還の肉球』を発動。命からがら、我が家(猫神様のダンジョン)の大広間へと転移で戻ってきました。
「おーっほっほ……っ、ふぇぇ……ん……」と、涙を拭いながら強がるフィオナ王女と、メガネが曇ったままガックリと肩を落とすシオン。
しかし、戻ってきた大広間で、二人はある人物たちとバッタリ遭遇することになります。
「ふぅ……! 本日も実に有意義な鍛錬でした。全身の筋肉が心地よく引き締まっていくのを感じます!」
「ミィアもすっかりリフレッシュしたニャー! 髪もお肌もピカピカニャ!」
ちょうどその時、自室の水槽部屋での『水冷クールダウン(および水泳訓練)』を終えたばかりのヒルダとミィアが、大広間にやってきたのです。
ヒルダは甲冑を少し緩め、サウナと水槽の効果でほんのりと上気した健康的な肌を輝かせ、実に清々しい笑顔を浮かべています。ミィアもバスタオルを頭に巻いて、毛並みをツヤツヤに輝かせながらホクホク顔です。
そんな、心身ともに「最高にととのって」輝いているヒルダとミィアの姿を見た瞬間――
シオンとフィオナ王女の二人は、ピタッと動きを止め、なんとも言えない複雑な表情を浮かべました。
「…………」
「…………」
その表情には、色々な感情が混ざり合っていました。
自分たちは、鈴のために外の社会でサウナを普及させようと泥臭い役所交渉に赴き、そこで平民の女から「この駄べり王女!」「眼鏡変態魔導師!」と完膚なきまでに罵倒され、精神的にボロボロになって帰ってきたのです。
それなのに、このダンジョンに居残っていたヒルダたちは、誰に邪魔されることもなく、最高に優雅で平和な「ととのいライフ」を満喫している……。
「……お二人とも、アステリアの宿屋での直談判はどうなりました?
なんだか、もの凄く魂が抜けたような、酷くみすぼらしいお顔をされていますけれど……?」
ヒルダが不思議そうに首をかしげます。
「おいお前ら、まさかまた鈴を困らせて、カレンにサウナ室へ閉じ込められたのかニャ?」
ミィアがジト目でジロジロと見てきます。
「ち、違いますわよ! わたくしたちは、鈴様のために崇高なビジネスのお話を……お話を……っ、うううっ(エリーゼの怒鳴り声を思い出して泣きそうになる)」
「……ヒルダ殿。外の世界は、俺たちが思っている以上に、冷酷で不条理な法に支配されているようだ……」
あまりにも対照的な「勝ち組の輝き」を放つヒルダたちを前に、サウナ普及担当の二人は、深い敗北感と羨望の眼差しを向けながら、大広間の床にへなへなと崩れ落ちそうになるのでした。
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現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 現在の様子 |
| シオン&フィオナ | 【精神的ボロボロ】| エリーゼに説教された直後に、ととのったヒルダ達を見て「なんとも言えない顔」に。 |
| ヒルダ&ミィア | 【最高にととのい中】| 自室の水槽での訓練を終え、肌も毛並みもピカピカで大広間へ。 |
| 桜井 鈴&セイナ | 【完全なる休日中】 | 自室でおいかけっこを終え、羽の生えたぬいぐるみとベッドでまったり中。 |
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「うぅぅ……ずるいですわ、わたくしたちだって、本当はここで鈴様と一緒にととのっていたかったですわぁぁー!」と嘆く王女。




