鈴親衛隊結成⁉️
「……くっ、私はただ、魔導の真理を、あの『感情変換術式』の構造を解明したいだけなのだ……! 離せ! 離してくれ!!」
シオンの執念深い叫びも虚しく、彼はカレンの巨大な前足でヒョイとつまみ上げられ、ヒルダの冷徹な誘導によって、ヒトミノジの町を覆うパステルカラーの結界の外へと「ポイッ」と放り出されてしまいました。
「二度と、鈴殿のプライバシーを覗き見ようなどと思わないことです。次は……手加減しませんよ」
「クゥ~ン(バイバイだね)♪」
ヒルダとカレンは、役目を終えた満足げな表情で別荘へと戻っていきました。
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ヒトミノジの町外れ:境界線の外
「……はぁ、はぁ。……理外の魔力、理外の守護獣、そして理外の騎士……。……完敗だ。私の分析眼では、あの『優しさ』という名の暴力には対抗できん……」
地面に這いつくばり、泥にまみれたシオンが力なく呟いた、その時です。
「あら。……そこでお見苦しく転がっていらっしゃるのは、お姉様に弟子入りを断られた、哀れな魔導分析官さんではありませんか?(普通の声量)」
パサリ、とドレスの裾を揺らして現れたのは、騎士団との打ち合わせを終えたフィオナ王女でした。
「……セントシャイアの王女か。……見ていたのか」
「ええ、バッチリと。お姉様を困らせる不届き者は、カレン様に叩き出されるのがこの町のルールですのよ。……ふふ、あなたも相当お姉様に魅せられてしまったようですわね?」
フィオナは、シオンの瞳の奥にある、恐怖を超えた「崇拝」に近い光を見逃しませんでした。
「……魅せられた? ……フン。私はただ、あの規格外の魔力を体系化したいだけだ。……だが、認めざるを得ん。彼女の存在そのものが、私の人生をかけた研究対象に値することをな……!」
シオンが拳を握り締めると、フィオナはニヤリと不敵な笑みを浮かべました。
「気が合いますわね、シオン。わたくしも、お姉様という存在をこの世の至宝として、永遠に守り、記録し、愛でることを生涯の義務と定めておりますの。……どうやら、わたくしたちの目的は、根底では繋がっているようですわ」
「……何が言いたい、王女」
「わたくしは『愛』で。あなたは『知識』で。お姉様という尊い光を、陰ながら支え、害をなすものから守り抜く……。……どうです? 協力して【聖女・鈴様親衛隊(非公認)】を結成しませんか?」
シオンは一瞬、呆気に取られた顔をしましたが、すぐに不敵な笑みを返しました。
「……面白い。……彼女の平穏が守られてこそ、私の分析も捗るというものだ。……よかろう、契約成立だ。王女」
こうして、本来なら敵対するはずだった「狂信的な妹」と「執着心の塊の魔導士」が、謎の硬い握手を交わしたのでした。
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その頃:ヒトミノジ別荘
「ふにゃぁ……。やっと、静かになりましたね、カレンさん。……シオンさん、もう無理な弟子入りなんて言わずに、どこかで幸せに暮らしてくれるといいんですけどぉ……」
鈴は、まさか自分の知らないところで、王女と魔剣士による「自分をひそかに守るための親衛隊」が結成されたなどとは夢にも思わず、のんびりとリボン編みを再開していました。
> 【レベル確認】
> 平和が戻った(と本人は思っている)安心感により、現在は Lv.479 で安定。
> (でも、親衛隊の過激な守護が始まれば、またすぐに爆上がりしそうです……!)




