謎の男魔剣士の名前と鈴暴走
「……くっ。……見事だ。魔力が枯渇したこの身で、貴様らの警備網を掻い潜れると思ったが……。……私の負けだ」
ヒルダの短剣を喉元に突きつけられ、鈴の「拒絶」の魔力に床に縫い付けられたシオンは、ついに諦めたように深い溜息をつきました。
「……だが、貴様。……鈴と言ったか。……貴様のその、感情をそのまま物理エネルギーに、いや、現象そのものへとダイレクトに置換するその術式……。……私は、どうしてもその真理を知りたいのだ……!」
シオンは、身動きが取れない状態でありながらも、その瞳だけは以前の鋭さを取り戻し、鈴へと真っ直ぐに向けられました。
「……申し遅れた。……私はシオン。Aランクの冒険者だ……理外の魔導を解析し、この世の全ての魔法をカタログ化することを生業とする者だ。……これまでの無礼は詫びる。……だから、頼む……! 私を殺す前に、その『感情変換術式』の講義をしてくれ!!」
シオンは、ヒルダの刃が皮膚を切り裂くのも厭わず、切実な表情で鈴へと頭を下げ……いや、床に額を擦り付けました。
現在の状況
| 登場人物 | 状態 | 備考 |
| シオン(謎の男) | 【再拘束・懇願】| 初めて名を名乗り、死をも厭わぬ「分析欲」を爆発させている。 |
| 桜井 鈴| Lv.479 | 【困惑・大パニック】「じゅ、術式……? 講義……? 私、そんなの知らないですぅ!!」 |
| ヒルダ | 【警戒・最大】| シオンの執念に、「……この男、やはりただの狂人ではありませんね」と短剣を強く握る。 |
| ミィア | 【呆れ】 | 「この状況で『講義』って……。鈴の羞恥心は、魔導書よりも劇物ニャ……」 |
---
「ひ、ひぎゃぁぁぁ! シオンさん、頭を上げてくださいぃぃ!! 殺すとか、そんなのダメですぅぅ!! ……それに、術式なんて、私、本当に知らないんですぅ!! ただ、ただ恥ずかしかったり、怖かったりしただけで……っ!!」
鈴は、シオンの執念深い視線と、彼が求めている「講義」という言葉の重圧に、頭がどうにかなりそうでした。
「う、うぅ……。もう、みんな、あっち行ってくださいぃぃ!! 私の、私の静かな時間を、返してぇぇ!!(羞恥と混乱による絶叫)」
鈴の魔力が、彼女の「拒絶」の感情に反応し、再び爆発的なエネルギーへと変換され始めました。それは以前、フィオナの服を焦がした【赤面爆炎】を遥かに凌ぐ、レベル479の極大エネルギー!
――ゴォォォォォォン!!!!
鈴の周囲に、凄まじい熱波と虹色の炎が渦巻き始め、別荘の天井が焦げ始めます。
「ニャーーーーー!! 鈴! 落ち着くニャ!! このままじゃ別荘が灰になるニャ!!」
「……くっ、魔力が……暴走している……!? これが、感情変換の……実演……ッ!?」
ヒルダが鈴を守ろうとし、シオンがその光景に恐怖と感動を覚える中、カレンが動きました!
カレンの介入
「……クゥ~~ン♪」
カレンは、炎の渦に躊躇なく飛び込み、暴走する鈴を背後から優しく、しかし力強く抱きしめました。伝説のリボンベアーのふかふかの毛並みと、鈴への深い愛が込められた抱擁は、暴走する魔力を穏やかに包み込みます。
「……ふぇ? ……カ、カレンさん……?」
鈴は、カレンの温もりに包まれた瞬間、パニックになっていた心が嘘のように静まり返りました。渦巻いていた赤面爆炎は、カレンのモフモフに吸収されるように消え去り、別荘には焦げた匂いだけが残されました。
---
「……ふぅ。カレン様、お見事です。……鈴殿、大丈夫ですか?」
ヒルダが短剣を収め、震える鈴の肩を支えます。シオンは、床に縫い付けられたまま、カレンの抱擁によって一瞬で鎮められた鈴の魔力を見て、呆然と呟きました。
「……ありえん……。……極大魔法並みの魔力の暴走を、ただの抱擁で……鎮めた……? ……これが、これが『理外』の……愛の力だというのか……?」
シオンの魔導分析官としての常識は、今日一日で完全に粉砕されてしまったようです。




