RP23 悪事はたいてい露見する
年度末ですね。
忙しくて、書く暇ありませんでした。
憂鬱な試験週間が終わった。
期末テストが嫌なわけじゃない。
テストの後が、ストレスなのだ・・・・。
あの日・・・家での勉強会以来、午前で終わるテスト週間中、午後はなぜか9人で集まるようになった。しかも部室でだ。
「今日の数学、難しかったな・・・・」
部室の片隅で体育座りをしていた肇がぽつりと言った。
「そうねぇ~・・・わたし・・・赤点かも・・・」
麻美も続いた。
(松本)「まあ・・・ちょっと意地悪な問題だったね」
(美香)「いじわる・・・いや、ちょっとじゃないでしょ・・あれ・・・」
(誠)「うん・・・おれも補習かも・・・」
「ま、でも今日で期末試験も終わったし、のんびりしようぜ!なぁ!!」
と俺は励ましたつもりだった・・・・。
が・・・・・・。
「はぁ~・・・・あんたたちバカイダーは、いいわよね。成績はいいからさ。バカイダーのくせに・・・」
まなが口を尖らせる。
(桑原)「だ、大丈夫よ、まなちゃん、勉強会頑張ってたじゃん・・・ね、ね」
俺たち、バカイダーと対照的に、あいつらはうなだれるあいつら。なんだよ、せっかく試験終わったのに・・・・・。
「なあ、もうすぐ夏休みだし、なんか、楽し・・・」
ガチャリ
俺の話が終わる前に突然、部室のドアが開かれた。
全員の目線が入り口に集まる。
「あ、先生・・・」
跡部が声をあげた。
「いや~・・いつの間にか大所帯だね。うちの部は」
そう言って入ってきたのは、よれた白衣に、ぼさぼさ気味の長髪、シュッとした細面で黒縁眼鏡で無精ひげ。そう、長髪の庵野秀明って感じの男。
わが物理工学研究部の顧問、物理教師の秋山先生だった。
「あ、いえ、俺たちは・・・見学というか・・・その・・・」
誠は慌てて口走った。
「ああ、いいよ、いいよ。見学でも、仮入部でも。それより・・・・・・・苦情が来てるんだ。」
「苦情?」部長たる桑原がけげんな表情を見せた。
「うん。・・・・・その・・・・くさいって・・・」
『くさい?』
「うん、ガソリンスタンドのにおいがするって・・・。で、苦情が出た教室ってのは・・・・きみたちのクラス。君たち4人のクラスばかりだ。」
『・・・・・・・』
途端に目を伏せ先生から顔をそむけるバカイダー。
「で、事の次第を確かめるのに、来たのだが・・・・ま、聞くまでもなかったな・・・・」
『・・・・・・・』
「この部室に近づくと、まあ、臭うね。ガソリン臭、オイル臭。まるでガソリンスタンドか自動車整備工場だ。」
『・・・・・・・・』
「君たちはテスト期間だというのに、何をしてたんだ?」
(桑原)「いえ、なにも・・・・して・・・ません・・・」
「ほんとに~?」
(松本)「えっと・・・はい、なにも・・・」
「まえ、発動機実験したときに言ったよね?危険物なので、ガソリンとか持ち込まないように、ってね?」
(跡部)「はい。ですから・・・持ち込んでは・・・・いません・・・」
「ふーん・・・そうかぁ・・・」
秋山先生は、部室をぐるりと見まわした。
そして・・・・つかつかと左手の棚の方へと近づいた。
そこには、麻美と美香が丸椅子に座っていた。
「ちょっと、いいかなぁ」
「は、はい・・・」
2人は丸椅子をもって立ち上がり、棚の前をよけた。
『・・・・・・・(ごくり)』
俺たちバカイダー4人衆と、まなは生唾を飲み込んだ。
そこには俺たちの部員しか知らないものがあるからだった・・・・。
犬のように、秋山先生はにふんふん言わせながら、臭いを追う先生。
「うん、ここだな・・・」
一番下の棚。引き戸のところで先生はそう呟いた。
そして・・・
ガタン・・・・
「ありゃ、鍵か・・・・ってことは、ここで間違いないね?部長?」
『・・・・・・・・』
「部長、鍵くれ。桑原さん・・・・きみに預けてあるカギだ」
「はい・・・」
桑原はしぶしぶ、いくつかリングにまとめてある鍵を、ポケットから取り出した。
カチャ・・・
「さて、鬼が出るか蛇が出るか・・・・」
カラ
「ほーう・・・こうきたか・・・・」
他の中にはトレーに収められた鈍い銀色の物体、キャブレター(気化器)があった。そして、それは、丁寧に分解されていた。
「んで、この隣のこれは・・・」
「あ、それは!」
おもわず声が出た。
一見、水筒のような銀色の細長い入れ物が先生の手の中にある。
「麦茶・・・・・てわけじゃぁないだろうねぇ・・・・」
ステンレスの水筒状のふたをくるくると回す先生。
カパッ
「わ、これは・・・いいわけできねーなぁ・・」
にやりとする先生。
あたりに漂う・・・ガソリン臭。
「持ち込むなっていっただろう?どーして持ってくるかなぁ~・・・」
あきれ顔の先生。床に目を伏せる俺たち部員。
(桑原)「その、実はどうしても・・実験したくて・・・その、ニードルが流体に与える影響がどういったものか・・・」
桑原の言葉に俺たちは激しくうなずく。ただし、仮部員の誠たちは何のことだかわからないので、あっけにとられている。
「あ~・・・流体ね~・・・。まあ工学だわなぁ~・・・。でも・・・」
『・・・・・』
「別にキャブ使ってガソリンの混合気でやらんでもいいだろう?」
『・・・・・・・』
「ガソリンの混合気つかって、よく火事出さなかったなぁ~」
(松本)「いや、その辺は、」
(跡部)「もちろん、十二分に気を付けてましたから・・・」
「そっかー、そっか、そっかぁ・・・さすが本校の秀才3人組、いや今は4人組かぁ~、やるなぁ・・・ははははは・・・・」
『は、ははははは・・・・』
先生の笑いに俺たち4人衆も思わず笑った。力なく・・・。
「って、笑い事じゃない!」
『はい!』
先生の鋭い目線に思わず気を付けをする。
「あんなぁ、お前らがわけのわからんもの(多分AR125のエンジン)担いで降りてたときに、言っただろ!おかしな実験や物をつくんなって。「あのおみこしみたいに担いで走ってるの何かの実験ですか?」とか「あれ、物理ですか?」「ああ、工学で何か?」とかいろいろ不審に思われてたの!あの時もくっさい臭い、漂わせてたよな?お前ら。」
そういえば、入部前、排気ガスの臭いがどことなくしてたなぁ~。
「いや、あの時はきちんと、大型送風機で外に出してました」
「桑原・・・・おれが、脱臭のために、木炭を大量においてたの知らんだろ?」
「え・・・」
そういえば、いつの間にか、部室の臭い消えてたな・・・・。
「で、約束を違えた以上、見逃すわけにはいかない」
『・・・・・・はい・・・・・』
「では、物理工学研究部には、夏休み中、先生の仕事を手伝ってもらう」
『え!』
「んで、このことを黙認していた、仮部員?いや見学者?の皆さんにも手伝ってもらう」
『え!!』
(麻美)「ちょっと、待ってください。私たちそんなもの知りませんでした」
(桑原)「はい、その、部外者が帰ってから、実験してたので・・・。見学者たちは知らないはずです。」
「ふぅーん・・・・じゃあ、ガソリン持ち込んだ部室に毎日入り浸ってて知らなかった、で、すむ?・・・と、思うかね?」
「いや、それは・・・」
「うん、さすが、岸川(肇)くん。学年5番だ。そんな言い訳通用しないよね?危険物を持ち込んでいた場所に毎日入り浸って、知りませんでしたで通用するほど、世の中甘くない。・・・・と、いうわけで、きみたちにもしっかり手伝ってもらうからね」
「そんな、俺たち、なにもしてないのに・・・」
「葛西(誠)くーん、いいかい?・・・危険物が持ちこまれた部室に、用もないのに出入りしてた・・・・・。何か良からぬことを企んでたんでは?」
「いや、そんな・・・」
「と、勘ぐられても、文句は言えんだろ?・・・幸い、このことを知ってるのは私だけだ。わかるだろ?」
そう言ってガソリン入った容器を俺たちに見せつけた。
「・・・えっと・・・・」
「・・・・つまり、公にしないでおくから、言うこときけ、ってことだよ・・・」
俺は誠にそっと耳打ちした。
「っく、きたな・・・」
誠は悔しそうに歯ぎしりした。
「じゃ、まぁ~、そういうことで、よろしく」
秋山先生は、踵を返し、部室を出ていたった。俺たちは力なく、その場に崩れ落ちた。
(松本)「はぁ・・・・せっかくの夏休みが・・・」
(肇)「いや、君らは仕方ないだろう。俺たちは完全に巻き添えだ。」
(美香)「そうよ・・・あ~あ。せっかくの高2の夏休みが・・・」
(まなか)「ごめん・・私たちのせいだね・・・」
(桑原)「ほんと、ごめん。まさか、こんなことになるなんて・・・」
「まあ、そーいうーなよ、誠たちも勉強教えもらったんだし。借りを返すと思ってさ」
一応、俺もバカイダーとして、フォローを。
(麻美)「そうね。おかげでテスト乗りきれたし」
(跡部)「ありがとう。そう思ってくれると助かるよ」
(誠)「で、先生の手伝いって?何すんだ?」
『・・・・・・・・』
バカイダーは顔を見合わせた。
「さぁ~・・・。何かしらね?」
桑原はあごに人差し指をあて、頭を傾けた。
「そもそも、夏休みに活動してなかったし・・・・」
跡部も腕を組んで目をつぶった。
「そうそう、去年は免許取るのに全部使ったしね・・・」
松本はなぜかさわやかに笑った。
「じゃ、先生の手伝いって・・・・?」
まなかの一言に、皆、困惑した表情をみせた。
バイク小説じゃないかも・・・・。




