6.ちょっとしたピンチの時に助けてもらいました
騎士としての鍛錬の後に、魔物退治を続けている。
体力はある方だと思うけれど、毎日のように続けているとちょっと疲れてしまう。
体が資本の仕事なので、時折休むようにはしているけれど……。まだまだ魔物討伐にも慣れていないので結構手間も時間もかかる。私がもっと解体が得意だったら良いのだけど!
でも何事も経験よね。練習し続ければもっと上手に魔物退治も解体も出来るようになるんじゃないかなとは思っている。
そういうわけでコツコツ進めているわけである。
シガルトには「無理をしすぎないように」とは言われたけれど、実家の領地に戻るまでにできる限りのお金は稼いでおかないといけないもの。
討伐も解体も、最初に始めた時よりは少しずつ上達している気はする……。とはいえ、解体に失敗して肌の色が変色した時にはびっくりした。
微量の毒を浴びてしまっていたみたいで、騎士団で治癒してもらうことになったしね。
考えなしに突っ込むと、そういう風に危険な目に遭うことがあるから気をつけるようにと散々注意された。そういう一件があって以来、見たことのない魔物には手を出さないようにはしている。
見た目はそこまで強くなさそうに見えても毒がある魔物とかは危険だもの。そもそも人も魔物も見た目では判断できないものだから。
マリアージュ様だって、一見するとただのどこにでもいる女性のように思える顔立ちをしている。そんなマリアージュ様が英雄だと信じない人も多い。でもマリアージュ様は驚くほどに強い、我が国の誇る英雄だ。
魔物の生態はある程度図鑑などを確認すれば分かるので、ターゲットにした魔物に関しては騎士団に完備されている資料室で確認をしてから倒すようにした。
こうして魔物についての知識を深め、魔物討伐や解体に慣れていくことは騎士としての成長にもつながることなので割とそのことに関しては前向きに取り組んでいる。
まぁ、全然稼げないけれど!!
命があってこそなので、そういう準備とか油断しないことは大事なのだけど!!
本当に途方もない。
なんであの両親はこんな高額を借金したのだろうか。……これ以上借金を重ねないように言ったけれど本当に守ってくれるかなとか色々考えてしまう。
首を振って、私は一旦、出来ることを進めることにする。
その日は騎士団の休日だった。
騎士の休暇は基本的に交代制である。緊急時のために騎士たちの誰かはかならず勤務している。
魔物の脅威や犯罪者など、私達が出なければならない緊急事態は時折起こる。
そういうわけで朝から私は、魔物討伐に向かった。
すばしっこいけれど、その目が売るとそれなりの値段にある兎の魔物を殺す。
最初は今みたいにすぐに倒すことは出来なかったけれど、私も中々上手になってきたものだと思う。その魔物を二体ほど倒し、満足してふぅと息を吐く。
ええっと、もうちょっと運べるからもう一体ぐらいはたおしておきたい。
きょろきょろとあたりを見渡す。
あんまり実入りになりそうな魔物が見当たらない。あの魔物は初心者の冒険者がよく倒しているもののはず。倒しやすいからこそ、素材もよく出回っていてそこまで高くない。
……やっぱり高額を稼ぐとなると珍しい魔物に手を出さないと難しいのよね。でもそれに伴って、危険度も増すから色々考えどころだわ。
冒険者とかだと、本当に色んな所を旅するからたまたまそういう珍しい魔物を見つけることもありそうだけど……。
実家の領地に帰るついでに倒せそうなレベルの魔物で、それなりにお金を稼げるのがいないかも調べておきたいな。いるなら倒してお金にかえれば少しは足しにはなるかも……!
そういうことを考えながら獲物を探して歩いていると……、
「なんか思ったより遠くにきてしまった!」
森の中に足を踏み入れ、ちょっと遠くにきてしまった。
これはまずいのでは……??
そう思って王都へと踵を返そうとしたとき、魔物の遠吠えがきこえてきた。
近い!! 慌てて私は身構える。神経をとがらせて、声のした方を見る。そちらから迫っているのは、狼型の魔物である。私が見たことがない魔物。それでいて、強そうだ。
ええっと、とりあえず冷静に対応しないと。こういう時焦るのが一番駄目だもの!
そう思ってなんとかその魔物を倒そうとするが、振りかざした剣はよけられたあげくその魔物は炎を吐いた。魔法が使える系統の魔物らしい。まずい!!
ここまで来なければよかったと後悔しながらも、死なないようにその炎を避けてとびかかる。こいつ、素早い!!
木とか倒して潰すとかがいいかな。素材は取れないかもしれないけれど、とりあえず生きることが大事!!
そう考えてなんとか魔物の相手をしながら、近くの木を倒すことに成功した。
……だけどその魔物は頭も良いのか、私の方に木を前足で突き飛ばすって力強すぎでしょ!! 転がってきた木をよけたと思えば、目の前にはその魔物の顔。かじられたくないので、剣でどうにかはじく。劣勢になっている気がする!
そう思っていれば、爪で引っかかれ腕に傷を負った。
逃げることを考えるべきか……でも、私は確実にターゲットになってるのよね。
なんて考えていたら、一つの魔法がその場を支配した。闇の魔法が狼の魔物を包み込み、絶命させる。
「大丈夫か?」
そんな声がかけられてそちらを向けば、そこにはマヒーユ様が居た。