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19.両親との対話 ①

「それでわざわざ来たのは、私によこした手紙の件? パーリクとチーチェのことはどうしたの?」



 私はお父様とお母様にそう問いかける。

 バーリクとチーチェは私の弟と妹の名前だ。



 仮にもお父様は領地をおさめる当主である。代わりの文官を雇うことなど出来ないだろう。それに借金がある状態で王都にまで来る余裕などないはずである。私の実家である領地はずっと田舎なので、そこからこの王都にまでやってくるのは時間もお金もかかる。



 私が騎士になって以来、王都に両親がやってくることなどなかった。それなのにこうしてやってきたということはそれだけ切羽詰まっていたということだろうか。




「ああ。ユリアンリ、結婚をしたくないなどという我儘は言わないでくれ。我が家のこれからのためにも、申し訳ないがユリアンリには結婚してもらわなければならない」

「そうなのよ。ユリアンリ。バーリクとチーチェの将来のためにもあなたには結婚してもらわないとならないの」



 ――両親は、まるでそれが当たり前だとでもいう風にそう言い切る。私がそれを拒否することを許さないとでもいうようなそんな言いぐさだ。



 ……弟と妹のことを出されると、結婚を拒否するべきではないのではなどとそう思ったりもする。

 でも私の結婚したくない気持ちも、騎士としてこれからもやっていきたい気持ちも本心なのだ。それにそもそも両親が自分の意思で負った借金を子供に肩代わりさせようとしていることも……なんというか、もやもやするもの。



 私が両親の借金のために、犠牲になる理由などないのだ。



「それはお父様とお母様が借金をしてしまったことが悪いわ。領地のためではなく、自分の為に二人とも借金をしたでしょう? その借金は私が犠牲になるものではなくて、二人が返すべきものだと思います。そもそもの話、お金がない状況で散財をしようとするのがおかしい。お父様とお母様は自分の手で自分の背負った借金をどうにかしようと思っていないのですか?」



 私は両親とまず対話をしてみることにした。



 親の背負ったものを子供が返すこと。それはよくある話ではあるけれど、私は親の為に自分の人生を犠牲にはしたくないとは思う。



「そうはいっても、私たちではあんな多額の借金は返すことが出来ないのだよ。それにユリアンリが結婚をした方が全て丸く収まると思うんだ」

「ええ。私もそう思うわ。どうか家のためにも結婚をしてほしいのよ。ユリアンリが嫁いでくれればお金の心配もなくなるわ。商家のお嫁さんとして良い暮らしが出来るのよ」



 ――その言葉は、あくまで自分たちの都合を考えての言葉なんだなと私はそう理解する。



 両親は私ならば、頷いてくれるとそう思っているのだ。私が結婚したところで、その嫁ぎ先のお金を当てにして散財を続けるだろう。それでは何の解決にもならない。

 私は両親が言葉を紡いで、分かってくれるのが一番いいと思っていた。だけどおそらくこのままではそうはならない。




「お父様、お母様。それでは何の解決にもならないわ。二人は私が仮に嫁いだらその嫁ぎ先のお金を後にして、散財を続けるでしょう? まずは二人がその金遣いを治さないといけないの。それに借金をしたのは二人なのだから、私が嫁いで借金の問題を解決させるというのは問題の解決にはならないわ。私は騎士としてこれからも生きていきたい。そんなところに嫁ぎたくないの。だから、私が嫁がなくてもいい道を一緒に探してほしいの。そして今後、二度と借金はしないって誓ってほしい」




 私がまっすぐに両親を見て言った言葉に、二人は驚いた顔をする。……私がこういう風に断るだなんて思っていなかったのだろうなというのが分かる。

 それでも私は引き下がる気はない。





「そうはいっても――、ユリアンリが嫁ぐ以上に……」

「私は嫁ぎたくないと言っているの。無理やり嫁がせようとするなら、私は自分の持てるすべての力を使って反抗するわ」




 何か言いかけたお父様は、私の真剣な口調と表情を見て私が本気だというのがよく分かったらしい。

 しかし私の言葉を聞いた二人はなんだか浮かない顔をしている。




「ユリアンリが本気で結婚をしたくなくて、騎士を続けたいということは良く分かったわ。でも……ユリアンリが嫁がないとなると困ったことになるわ」




 お母様が告げた言葉に、私は嫌な予感がした。

 何か悪いことが告げられるのだろうというのをなんとなく理解することが出来た。




「困ったことっていうのは? それはお父様とお母様が困ること? それとももっと別のもの? 言いにくそうにしているけれど、何が困ったことになるのか私に教えてよ」

「……言ったら、嫁いでくれるかしら?」

「嫁ぎはしないわ。私はそれには反抗する。でもちゃんと言って」



 私がそう言ったら、お母様は言いにくそうに口を開く。




「ユリアンリを娶りたいと言っている会長さんが領地に居る状態なの」

「は? それでなんでお父様とお母様が此処にいるの? その人を領地において王都に来たってこと?」

「……ユリアンリを早く娶りたいから迎えに行って欲しいと言われたの。領地の事に関してはどうにかしてくださると言ってくださって。王都に来る費用も支払ってくださったわ」




 私を迎えに来るためにと言う名目でまた借金を重ねたらしい。

 しかも弟と妹をその商家の会長とやらに預けている状態ってこと? 私は頭が痛くなってきた。


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