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第四話・「平穏の終焉」

今回ちょっと生っぽいです。

 ノックス村の中で、それに最初に気がついたのは、一人の男であった。

 男は普段は森で獣を獲って暮らす猟師であった。

 彼も当然祭に参加していたが、いささか酒を飲み過ぎたらしく、意識が朦朧とし始めていた。だから、彼は祭の席を中座し、頭を冷やしてこようと思っていた。

 宛もなく歩き出した彼は、広場から森の方へと歩いて行った。特に考えがあったわけではなかったが、普段から通いなれた森に近ければ、自然と意識が研ぎ澄まされてくるかもしれないと思ったのであろう。


「ん?」


 猟師は眼前にうごめくものに気付いた。

 それは柵の内側に入り込んだ一頭の獣だった。広場の方から漏れてくる明かりに、僅かに目が光っている。普段森で見慣れているだけあって、猟師はすぐにそれが鹿だと分かった。


「ああ、鹿か……けど、何で鹿がこんな所に?」


 そうは思ったが、酔った頭は真剣な思考を生もうとはしてくれない。

 猟師はすぐに、


「なるほど、今日が祭だからって、山の神様が恵んで下さったのか」


 と納得した。

 すると、猟師の声に驚いたのだろうか、鹿は一度耳をそばだてると、タッと大地を後ろ蹴りし、男の横を通り過ぎて走って行ってしまった。

 猟師の男は、鹿の動きに緩慢に振り返って声をかけた。少し離れてはいるが、広場に向かう間にも人はいる。誰かが気付いてくれるだろう。


「おおい、神様のお恵みだ。鹿が来たぞお」


 その声に何人かの人影が立ち上がり、鹿の姿を見とめたことが分かったので、猟師は考える。

 ……ようし、弓を持って来よう。なあに、家との往復くらいの間鹿も待っていてくれるさ。


 猟師は自宅へ向け、踵を返した。

 酔いがなく、猟師として常の冷静さを発揮できる状態だったら、彼は気付いただろうか。鹿は猟師の声に驚いたのではなかったと。首筋を伸ばして警戒するように耳を向けた先が、鹿の背後、柵の向こう側だったことに。

 そのことに彼が気付いていれば、運命はまた違った形を見せたのかもしれない。


 だがそれはもはや過ぎ去った過去のことなのだ。





 神々は人々に恵みをもたらす。

 木々にたわわな実をもたらせるのも、大地に様々な作物を実らせるのも、川や海に多くの魚貝が泳いでいるのも、そして山や大地に多くの動物が生きているのも、全て神々からの恩恵なのだ。

 人々はその恩恵に感謝し、それをいくらか分けてもらうことで生きている。

 だから、人々は神に感謝し、祈りを捧げ、祭りを行う。それは神々の恩恵に感謝を捧げると共に、今以上の恩恵を望むからに他ならない。


 だが、神は恵みをもたらすだけではない。

 神は時に試練を与える。

 試練は小さなものから大きなものまで時に様々だ。だが、それも人々が備えを怠らなければ防ぎ、軽減することの出来るものだ。

 川が溢れるのなら堤防を築き、高台に家を建てる。山から獣が溢れて村を襲うのなら、村を囲う堅固な柵を立て、時に山狩を行なう。大地が揺れ動き家が崩れるのなら、より堅固な家を建てる。

 神々は試練を与えるが、それも人々が備えを怠らなければ凌ぐことが出来る。


 そう、備えを怠らなければの話だ。





 ノックス村の人々が異変に気付いたのは、広場に一頭の鹿が駆け込んできたから……ではなく、騒ぐ村人など気にしたふうもなく駆け抜けていった鹿に続くように、二頭三頭と続々とあとに続いて広場を駆け抜けていく動物達の姿が原因であった。

 動物達が駆け抜けていくのは広場だけではなく、北側の畑から家々の隙間、村の南側まで広範囲に及んだ。

 事ここに至って、村人達は何かが起こっているということに気付いた。そしてそれは、遅きに失していた。


「なんだなんだ!?」

「動物達の様子がおかしい!」


 酒に酔った頭をなんとか働かせながら、広場に集まった人々は突然の事態に困惑の度を極める。

 直前までのお祭りムードはすでに霧散し、何か得体の知れないことが起こっている、という得も知れぬ恐怖に包まれていた。


「森の方から走ってくるぞ!」

「柵はどうした!」

「――女子供を避難させろ!」


 叫び声が交錯する。

 村中がにわかに慌ただしくなる。夫や友人知人に引かれて集会所になっている建物や、それぞれの家に避難させられる。

 男達は集会所やそれぞれの家にある狩り具や手近な身を守れそうなものを手に再び道に出てくる。

 そして彼らは動物達の流れを止め、もしくはこの異常の原因を調べようと村の東側へと急いだ。



 村の東、森との境目にあたるところへと辿り着いた村人達は愕然とした。

 彼らの眼の前にあるのは、獣の侵入を防いでいたはずの半壊した柵と、その柵の向こう側に爛々と輝く何対もの光。それは彼らが持ってきた松明を受けて輝く獣の瞳なのだが、十頭ではきかず、何十頭もの動物達が柵の向こう側にたむろし、村人達を見つめていた。

 互いに戸惑いと驚きを顔に貼り付け向き合う。

 それも長くは続かなかった。

 柵の向こう側、森の前に集まった獣達に動きが生まれた。獣達は鹿の他にも猪や鼬をはじめ多くの種類がいたが、それらが揃って背後を振り向いたかと思うと、脇目もふらず駆け出した。柵を越え村へと侵入していくもの、柵の前で左右に折れ、北側、南側へと迂回していくものなど様々だが、一つだけ分かったことがある。


「森を警戒してるのか……?」


 村人の誰かが呟いた。

 村人の誰も、それに確たる返答は返せなかった。代わりに、その答えは森から響いてきた。


 ぁおおおおおおおおお――――ん……


 狼。聞こえてきた遠吠えは、夜の森に反響し、夜闇に溶けるように消えていった。そしてその吠え声に押されるようにして、暗がりからまた新たな獣の群れが飛び出してきて、先程から駆けていく獣達と同じような行動を取る。それに村人達は核心を深くする。

 確かに何かに追い立てられるように後ろを気にしているようにも見える。

 だが、


「狼だけで、ここまで酷いことになるのか……?」


 困惑する村人達に、答えはなかった。

 代わりに、別のところから答えがやってきた。


 ――――ッ!


 狼とは全く違う唸り声を上げて、下草をかき分け、樹木をかき分けて出てきたのは、身の丈四メートルほどはあろうかという巨大な狼だった。

 バキバキと木々をなぎ倒しながら現れた狼は、その大きな体躯に比例するように鋭い牙と爪を持っていたが、何より特徴的なのは、頭部に生えた牛のような二本の太く鋭い角。角は捻れて前を向いている。その角の下には、爛々と赤く輝く目があった。


「なんだ……こいつは……」


 誰かが呆然と呟いた。

 その姿は獣というにはあまりに禍々しい姿だった。


「モンスター……」


 凶作の煽りを受け、食料が少なかった山向こうの森に住んでいたモンスターは、森の狼を引き連れ、この場に現れたのだった。

 だが、今日までモンスターの影すら見たことのなかった村人達は、ただただ唖然とし、そして恐怖した。

 そのモンスター“角狼(ホーンド・ウルフ)”は、自らを見つめる村人達を睥睨し、


 Luo――――!


 大気を震わす声は、村人達の鼓膜を震わせ、彼らをその場に縫いつけた。

 威圧感を伴う吠え声に打たれた村人達は、恐怖から一歩も動けなくなってしまった。

 そうなるが早いか、ホーンド・ウルフの周囲に集った狼は素早く大地を蹴り、立ち竦む村人達に向けて駆け、柵を飛び越え、村人達に飛びかかった。


「――ぐふっ」

「……がはっ」


 村人達は誰も、その痛みで正気を取り戻した。しかし、遅すぎた。

 風を切って村人に飛びかかった狼は、誰も彼も正確に彼らの喉笛に噛み付き、食い千切る。赤い鮮血が迸る。

 狼の鋭い牙の一撃は、確実に男達に致命傷を与えていった。一撃で息の根を止められなくとも、そのままの勢いで押し倒し、悠然ととどめを刺す。

 あっという間に男達を無力化した狼は、さらに数匹がたかって確実に息の根を止めていった。

 程なくして、村の外れに集まった村人達は何かをする間もなく全員噛み殺されてしまった。それを確認したホーンド・ウルフは悠然と一歩を踏み出した。四メートルを超す巨体を支える足が、息絶えた村人を踏み躙る。

 そして、それに先んずるように狼達は村の中へと駆け込んでいった。

 悠然と歩くホーンド・ウルフはその姿を見送りながら、ついに柵を踏み越え、ノックス村へと侵入を果たした。そしてホーンド・ウルフの後に続くように、また新たな狼の群れが森の中から滲むように湧き出し、それぞれ村の北と南に散っていった。





 Luo――――!


 ホーンド・ウルフの吠え声は、村の中央にある集会所にも聞こえてきた。

 身の毛もよだつそれに、集会所に避難した者達は身を竦ませ、肩を寄せ合う。それは、ユイリィとミーシャも同じだ。ユイリィは、ミーシャとともに二人の夫の影に隠れていた。

 ……なんでこんな事に?

 今日は晴れの日だった。幼い頃からの付き合いだった親友の一人と、これからの半生を共にする誓いの日だった。それが何故こんな恐怖にまみれた日になってしまったのか、考えても分からなかった。


「こわい、よぉ」


 ユイリィは震えるミーシャを抱きしめる。ミーシャの震えを少しでもなだめるように、彼女の背を撫でさする。


「大丈夫、大丈夫よ」

「ユイ……ちゃん……」


 触れ合うところから彼女のぬくもりが伝わってくる。それが少しでも恐怖を拭ってくれるようだ。


「ねえ、レオン、エリック。何が起こってるの?」

「それがなあ、ユイリィ、全ッ然わかんねぇんだよ」

「うん、そうなんだ。全然わからない」


 ……二人がふざけたような喋り方なのは、少しでも私達を怖がらせるまいと思ってのことだと思うから、この際置いておこう。うん。


「まあけど、のっぴきならないことになってるのは確かだな」

「森の方を見に行った大人達も帰ってこないしな……」


 それはきっとさっきの啼き声が原因だろうとは想像がつく。森の様子を見に行った大人達は帰らない。そして森の方からは家を壊しながら近づいてくる何かが立てる音が聞こえてくる。

 集会所の中に集まっているのはユイリィ達のような新婚夫婦や、老人や女の人、子供ばかりだ。それに何人かの男衆が、もしものことを考えて付き添っている。


「――外はどうなってるの!」


 離れたところで、誰かが叫んだ。

 先程から、表を駆ける軽快な足音も耳に入ってくる。あれは狼だ、とレオンハルト達がささやいているのが聞こえてきた。二人は森で狩りをすることもあるから、きっと狼のこともよく知っているのだろう。


「狼は本来自分の縄張りを守ってて、その縄張りに入ってこない限りは相手を襲ったりしないもんなんだ。それに、縄張りがあるから、自分から進んでその外に出ようとはしないはずだ」

「だっていうのに、これはどうよ。外は狼だらけだぜ?」

「ああ、それが一番おかしい。ってことは、そこに答えがあるんじゃないか?」

「……というと?」

「狼達を統率してる奴がいる。それはきっと、さっきの叫び声のやつだ」

「なるほどなあ。そいつに率いられて狼は縄張りを外れて村を襲ってる、と?」

「そういうこと」

「おいおい、狼を率いれるような奴ってなんだよ……」


 ……な、何でこいつらそんなに落ち着いてられるのかしら。


「落ち着いて話してるけど、何かこの場を切り抜ける方策でもあるの?」

「ないな!」

「――ちょっ、嘘でもあるって言いなさいよ!?」

「もうやだー!」


 ああっ、ミーシャが泣いちゃったじゃない!


「ほら、ミーシャ、泣かない泣かない……」


 そうしてミーシャをなだめていると、不意に周囲が静かになった。いや、集会所の中は身じろぎする音や何やらが聞こえてくる。静かになったのは、集会所の外だ。さっきまで足音や破砕音が響いていた表が、急に静かになった。


「……ねえ、レオン――ッ!」

 ぁおおおおおおおおお――――ん…………

「ヒッ」


 不気味に思ってレオンに尋ねようとした時、集会所の周りから、立て続けに狼の遠吠えが響き渡った。一箇所で吠え始めた狼の声に重ねるように、次々に遠吠えは連鎖するように広がっていく。

 ……これって、


「ものの見事に囲まれてるな」

「だよねえ……」


 遠吠えは、まるで輪唱のように集会所の周りを一周した。一つの美しさを感じさせるそれは、すっかり周りを囲まれてしまったことを示す。

 逃げ場がなくなってしまったことは、集会所に集まった村人にも分かってしまった。室内を絶望感が包んだ。

 そして、その絶望を後押しするように、


 Luo――――!


 ビリビリと建物を揺るがす吠え声が大気を震わせた。

 さらに、


 ――――ッ!

「きゃあああ――――!」

「――ぐぇっ」


 木材を粉砕する音とともに、集会所の屋根が半分崩壊した。破片となった屋根が、村人達に振りかかる。充分な質量を持った破片が、真下にいた村人に注ぎ、カエルが潰れたような音声とともに押し潰した。


「……あ、あ、ああ……ああ。――いやぁあああああッ!」

「あ、おい! やめろ!」


 直視してしまった人が、悲鳴を上げて集会所の扉に取り付いた。他の人が止める間もなく、鈍い音を立てて扉が開いた。


「ああ、ああっ――――ぅぐえっ」


 表に飛び出そうとした人が横合いから飛び出してきた影に押し倒された。

 直後狼がひと吠えした後、強張っていたその人の体から力が抜けるのが見えた。そして悪いことに、倒れたその人の体は、開いた扉をそのまま押し留めてしまった。


 がうっ!


 扉の向こうで、狼が一声啼いた。

 開いたままになった扉から、狼が集会所に雪崩れ込んできた。





 怖い。

 さっきから、それしか考えられないままだった。

 そして、開かれた扉から飛び込んできた狼の姿を目にして、なおのこと恐怖にとらわれてしまった。

 ……今日は、恥ずかしかったけど、素敵な日になるはずだったのに。


 そんな思いは、考えもしなかった理由で粉々になってしまった。

 次から次へと集会所に入ってくる狼が他の人達を襲っていく。噛み付いたり、爪で引っ掻いたり。方法はいろいろだけど、少しずつ立っている人が少なくなっていく。

 私達の門出を祝ってくれた人たちが、さっきまで陽気に笑い合っていた人たちが、一人また一人と毛皮の海に消えていく。

 血の臭いが室内に満ちていく。


 視線を近くに戻せば、次から次へと飛びかかってくる狼を必死に手を振り回し、足を振り回しながら追い払おうとしているエリックの姿があった。

 初めのうちは何とかなっていたそれも、だんだんと狼の方が優勢になってきた。

 エリックの敵は、何も自分に集まってくる狼だけじゃない。彼の隙を見ては後ろへ回り込もうとする狼から私を守る必要もあった。

 でも、


「――ごめ……ね、エリ、ク……。さき、逝く……ね……」


 エリックの防御をかいくぐってきた狼に、私は……。

 さっきまで感じていた痛みも、もう何も感じなくなってきた。

 涙を流しながら腕を振り回すエリックに脅威を感じたらしい狼が、一斉に飛び掛っていく姿を見たはずの私の目は、もう何も映していなかった……。





「ミーシャ! ……うぁああああ――――ッ、ぐ、がはっ」


 首や脇腹から血を流しながら横たわっていたミーシャの身体から生気が失われるのを見て激昂したエリックに、狼が一斉に飛びかかった。

 首めがけて飛び込んできた狼を腕を振って跳ね飛ばしたが、振り切った腕をめがけて飛びかかった狼に、ついに噛み付かれてしまう。


「エリック! くっ、こっちも手一杯で――」


 大きく動きが鈍ったエリックに、次々に狼が襲い掛かるのを見て助けに向かいたく思ったが、こちらも同じような理由で手が足りない。


「――ぁあああッ! ユイリィには近づけない!」

「レオン……」


 入り口から離れた集会所の角に背を向け、ユイリィをかばうようにして立つ。手には落下してきた木の棒を握って振り回す。おかげで狼たちは近づけずにすんでいるが、エリックからは余計に離れてしまっている。

 棒を振り回し、


 ぎゃいんっ


 近づいてきた狼を吹き飛ばす。

 飛んでいった狼は、床で跳ねて止まった。ピクピクと痙攣しているから、まだ生きてはいるようだが、すぐには起き上がっては来ないだろう。

 ……だが、どっちにしろジリ貧だ。

 吹き飛ばした狼以外にも、まだまだたくさんの狼がいる。

 狼の包囲に隙はないかと視線で探るが、今や集会所の中で狼に対抗しているのは数えるほどしか残っていない。

 おかげで周囲を完全に囲まれてしまっていた。


「ああっ!」

「エリック!」


 ユイリィの悲壮な声。ついにエリックが崩れ落ちた。

 エリックはこちらを振り向くことも、ミーシャの方へ歩み寄ることも出来ず、四方八方から狼に集られ、その場にと引き倒されてしまった。

 親友が倒れていく姿に、しばし、呆然としてしまった。


 Luo――――!!


 バキバキと凄まじい音を立てながら、四メートルの背丈の、角を持つ狼が集会所の壁を割り裂きながら、一歩前へと足を進めてきた。ぐしゃりと何か生っぽいものを踏みつける音がする。

 そして、


 ゴオッ――!


「――――ッ!?」


 空を裂く音を立て、踏み出した一歩と同時に、前足が宙を薙ぐ。

 その一撃が横合いから襲いかかってきた。

 ぶつかった、と思った瞬間には吹き飛んでいた。そして、反対側の壁へと叩きつけられた。


「――――ッ」

「レオン!」


 痛みで霞む視界にユイリィの姿を捉えられない。だが、声の聞こえてきた方には、狼に囲まれたユイリィがいるはずだ。


「レオン! ああ、いや、きゃあああああっ――うがっ」


 俺を呼ぶ声が、途中から悲鳴に代わり、唐突に途切れた。

 ぐじゅぐじゅと生臭い音がする。

 視界がわずかに回復したとき、さっきまで二人でいた場所には、真っ赤に染まったユイリィの姿があった。狼が、執拗にそれを貪っている。


 Luo――――!


 角を持つ狼が高らかに吠え、また歩みを進めた。足音が集会所を揺らす。

 脆くなった天井が、ついに崩落した。

 音を立てながら崩れ落ちる天井の板や藁葺きが俺の上にも降り掛かってくる。


 精神的にも、肉体的にも傷めつけられていた俺の意識は、いとも簡単に失われた。

予定通り全滅。


三人称でシリアスに書いていたら、思いの外難産でした。




さて、そんなこんなでプロローグ的なもの終了。

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