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【SS】幸せの分散はもう終わり、置いて行かれる女の子たち〜本気の恋でLINEを消した日 ~僕らの傷跡~彼の甘い洗脳、歪んだ溺愛から救ってください  作者: 水波瀬 凪
【第三章】彼の甘い洗脳〜歪んだ溺愛から救ってください

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④依存をやめる準備、彼との終わり、そしてこれからの始まり

凪くんとのカフェデートは、私にとって新しい世界への入り口だった。


昔ながらの喫茶店で、ダンディなマスターが淹れてくれる珈琲の香り。


会話を邪魔しない心地よい音楽と、ゆったりと流れる時間。


凪くんと一緒にいると、本当に爽やかな風に吹かれているような気分になれる。


「今度、うちでお茶会しよう」


そう言われたとき、私の胸はときめきでふわふわと浮き上がった。


けれど、カフェを出た後、一人で部屋に戻った途端、急に言いようのない悲しみに襲われた。


凪くんとはまだ、何の関係も始まっていない。それなのに、なぜこんなに胸が苦しいのだろう。


送ってくれなかった帰り道。


既読にならないLINE。


彼を待つだけの時間は、以前よりもずっと長く、不安に感じられた。


週末、またどこかへ行こうと誘ってくれた彼のために、私はイベント情報を調べ始めた。


ネモフィラが咲く広い公園、あるいはドライブ。


水族館にも行ってみたかった。


妄想は広がるけれど、まずは部屋の空気感を変えるところから始めなければならない気がした。


ふと、みーくんのことを思う。


中学生の頃からずっと、彼は爽やかなイケメンとして誰からも愛されていた。


でも、その実態は自分勝手で、中身が追いついていない。


みんなが彼に騙され、やがてその浅はかさに気づいて離れていく様子を、私はずっと一番近くで見てきたのだ。


きっと、これからもずっと彼はあのまま。変わることなんてない。


そう気づいてしまった今、私の中で何かが決壊しつつある。


やっぱり、私はもう疲れているのだ。


歪んだ支配ではなく、凪くんのような優しい癒やしが欲しい。


「今の部屋を変えたい」


そんな衝動に駆られて、私はショッピングモールへと足を運んだ。


測り慣れないサイズをメモし、マットレスやシーツ、部屋の備品を買い替える計画を立てる。


結局、その日は凪くんとのデートを意識して選んだ新しい服と夏用の帽子を買うので精一杯だったけれど、心は不思議と前を向いていた。


通販のカートに、新しい生活の準備品を入れていく。


この部屋の片付けは、私の心の整理そのものだ。


みーくんとの腐れ縁を断ち切り、凪くんという光の射す場所へ進むために。


私は、もう「わんこ」として生きる自分を卒業したいのかもしれない。


空になったショッピングカートを眺めながら、私は静かに、けれど確実に、これからの自分を形作る準備を始めていた。




金曜の夜、凪くんとのドライブデート前夜。


突然現れたみーくんを、私はドア越しに突き放した。


「悪いけど、帰って」


「あ、もしかして彼氏、つきあった?」


というから、それはまだ…と言うと、じゃあ問題ないじゃん泊めて。


私は、まだつきあってないけど、明日出かける予定があること、それからみーくんの荷物はもうあそこ段ボールの中にまとめてるもんって言って、クローゼットを指さした。


みーくんは「えぇ~ひどいな」と言いつつ、上着を脱ぎ始めるから


「だめだって、脱がないで」


いつもの習慣で部屋に入れてしまったけれど、今度こそ最後だと心に決めていた。


私の意志なんかほんと弱いから、流されるように受け入れてた。


みーくんに抱かれながら終わりに向かって落ちてくような感覚だったんだけど、途中でLINEがはいった。


スマホに手をのばそうとしたら、みーくんから止められる。


「後にして」と強引に重なる彼。けれど、その途中でみーくんの声が震えた。


「ゆいちゃんの心が、俺になくなってる」


彼は涙声で、自分の半生が消えてしまうような恐怖を口にした。


私も同じだ。


中学からずっと、人生の半分を共有した彼を失う喪失感はおおきい。


それでも、私はもう元の場所には戻れない。


「もしあいつと別れたら、また連絡しろよ」


そう言い残して、始発と共に彼は去っていった。



私はすぐに、宅配便の伝票を用意した。


彼という呪縛を、段ボールに詰めて物理的に手放すために……。




そして、凪くんとの初ドライブデートの朝。


私はバスルームで、過去のすべてを洗い流した。


きれいになるのは体だけじゃない。これまでの自分と決別し、新しい物語を始めるための浄化だった。


亡き父の仏壇に手を合わせる。


「どうか、この未来が……」


どんな祈りを捧げたのかは言葉にできなかったけれど、きっと父も優しく見守ってくれるはずだ。


初夏の風を感じながら、凪くんの助手席に乗り込む。


車内は、なぜか「水色の匂い」がした。


新緑の香り?


彼が流したセカオワの『Diary』が、車内に優しく響く。


あとがきの必要ない物語……。


歌詞の一節が、これからの私たちに重なる。


過去の痛みを糧にして、やっと自分の足で歩き出した。


凪くんと二人で紡ぐこの物語には、もう「飼い主」なんて存在しない。


ただ、私たちが互いを愛おしむための、新しい日々が続いているだけだ。


窓の外に広がる景色が、昨日よりも鮮やかに輝いて見えた。





読んでくださりありがとうございました。



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