1人目~【遥希の元カノ、葵】の告白~だって凪くんの目がきれいだったから
「幸せの分散できたら良かったけど、ごめんな」
見つめるだけで恋に落とす天使系男子が、本気の恋を知った。
これは、女の子たちが「置いていかれる」切ない精算の記録。
過去の女関係をすべて精算することを決意する凪くんのお話。
10人の女の子視点で、全10エピソードで描きます。
※本編『君の知らない僕のダークサイド〜救ってくれるもの』のサイドストーリー(短編)です。
1人目~【遥希の元カノ、葵視点】での告白。
彼氏の遥希くんが、ほとんど毎日お見舞いに行ってるっていう親友の凪くんがついに目を覚ました。
長いリハビリを終えて、退院祝いをするからって、わたしもその席に呼ばれた。
そこで初めて会った凪くんは、まるで地下アイドルにいそうな、儚くて整ったビジュアルをしていて……私は一瞬、意識がぶっ飛ぶほどの衝撃を受けた。
「は、初めまして、葵です!」
それ以来、遥希くんといるときも、ちょこちょこ凪くんと会う日が増えていた。
ある日、遥希くんの家でお留守番してたとき、凪くんがやってきた。
「あれ、遥希は?」
「いま、お買い物に行ってて」
「そか、すぐ帰ってくるかな?」
「たぶん、すぐ」
「じゃ、待ってる間、葵ちゃんと話そう」
そう言って凪くんはリビングのソファー、私のすぐ隣へ座った。
その瞬間、ふわっといい匂いがした。
こ、これは、凪くんの香りなのかな?
ふたりきりは初めてで、どきどきする。
そのとき、
「…だよね!」
「え、なに?」
ヤバ、話、聞いてなかった。
「ん? 葵ちゃんって、前髪作ったほうがきっと似合うと思うんだよねって言ったんだけど」
「え、そう? そうかな」
自分の前髪を触りながら戸惑ってると、横から凪くんが手を伸ばしてきた!
そしてわたしの前髪に触れ、
「こうしてさ、ほら」
その近くなった、凪くんの目をじっと見てしまう。
震えるくらい、きれい。
「え、あ、なんかごめん」
凪くんは、パッと手をはなした。
本当に、わたしの身体が小さく震えていたのかもしれない。
わたしの様子がおかしくて、凪くんを驚かせてしまったのだろうか。
「あ、だ、大丈夫だよ……っ」
凪くんの目が、なんだかとてもきれいでつい、見はまってしまった。
「あの、目、すごくきれいだね」
「目? あー良く言われる、カラコンいれてるからかな?」
「カラコン?」
「そう、俺ね、左右の目の色が違ってて、それで隠すってゆーか、左右合わせるつもりで色違いのカラコンつけてんの」
「えー、そうなんだ、かっこいい」
「や、そんなんでもないけど」
ありがとうって凪くんが笑いかけてくれた。
その笑顔にもどきどきする。
わたし、遥希くんがいるのに、なんでこんな、どきどきしてるんだろう?
それからすぐ、遥希くんがお買い物から帰って来て
「凪、来てたんだ?」
おまえ、葵に何もしてねーだろーなーって、遥希くんがまるで凪くんが何かしたみたいに決めつけてる。
「あ、ごめん遥希、ちょっと前髪触っちゃった」
「は? 何してんだよ」
遥希くん、なに?
そんな怒るとこ?
「やめて遥希くん、わたしが悪いの!」
ちょっと大きな声で、遥希くんを止めた。
「葵、え? どした?」
わたし、泣いてたみたいで、遥希くんも凪くんもびっくりしてた。
それから何日か過ぎたとき、わたしは遥希くんに別れを告げた。
「遥希くん、別れよう」
「……え、……いきなり、なんで!?」
びっくりするのも当然だ。
あんなに仲が良かったのに。
「だって、凪くんの目がとても綺麗で、私……」
凪くんは何も悪くない。
わたしが勝手に、彼の魔力に囚われてしまっただけ。
「凪くんのことが、どうしても気になっちゃうの」
「気になるって、だってさ……でも、あいつは……!」
遥希くんが何かを言いかける。
きっと「あいつは女たらしだ」とか「誰にでもそういうことをする」と言いたかったのかも。
「いいの。付き合うとか、そういうのじゃなくて」
ただ、もう私の気持ちは完全に凪くんに持って行かれてしまった。
こんな不純な心のままで、遥希くんのことを真っ直ぐ愛することは、もう二度とできないから。
結局、わたしがあの後、凪くんと付き合うことはなかった。
それでも、わたしのLINEの友達リストには、ずっと『凪』の名前が残っていた。
たまにタイムラインに流れてくる彼の日常を遠くから眺めるだけで、あの日もらったときめきを思い出して、それだけで十分に幸せだった。
なのに、ついさっき。
凪くんのアイコンの横に、たった一言、新しいステータスメッセージが更新されているのを見つけてしまった。
『本命の彼女ができました。みんな、今までありがとう。LINE消します』
あぁ、あの綺麗な目で、わたし以外の誰か一人だけを見つめることに決めたんだね。
わたしの恋は、彼に触れられることもないまま、ひっそりと、だけど確かにここで終わった。
わたしの心を奪い去った、きれいな天使。
短い間だったけれど、恋をするきらめきを教えてくれて、ありがとう。
どうか、その本命の女の子と、世界で一番幸せになってね。




