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「…メイリン?」
ハクレンが大きな口で囁くように名前を呼ぶ。
しかし、鶴は答えない。
「メイリン?」
もう一度ハクレンがメイリンの名を呼ぶ。
ハクレンの口が動くのに合わせて、口元に居た鶴が力無くずり落ちるようにその場に落ちて行った。
「メイリン?メイリン!メイリン!!」
ハクレンはただメイリンの名を呼ぶ。
それ以外何もできないのだ。
龍心を与え魔力を大幅に消費し、その上、力ある龍との戦いで消耗していたハクレンに人の形になれるほどの魔力は残っていなかった。
龍の姿のままのハクレンではメイリンの命を繋ぐための魔力を注ぐことはできない。
その大きな口では口移しで魔力を与えることは出来ないのだ。
ハクレンは大量の血を流すメイリンを見ていることしかできない。
メイリンを傷つけないように、けれど決して離れないように、龍の長い鼻先をメイリンの体へと寄せた。
冷たくなっていくメイリンを前に龍は小さな悲鳴をあげる。
死ぬのならば、二人で。
鼓動は強く、早く、全身を打ち付けるように高鳴り、血が沸騰するように熱く、チリチリと身を焦がす。
ハクレンは自身の命を削り無理矢理魔力を貯め、そして人の形になった。
散り散りの鱗が浮き上がる中途半端に醜い姿であっても、関係ない。
メイリンの長い嘴を開き、奥に沸きあげる魔力を全て注ぎ込む。
しかし、致命傷と言えるような傷を負ったメイリンは穴の空いた紙風船のように、その魔力を傷口から血液が滴るように流していく。
それでもハクレンは何度も魔力を流し込み、ただただメイリンの延命だけのために何時間も繰り返した。
朝が来て昼が過ぎ、夜になる。
それをどれくらい繰り返してきただろうか。
一瞬でも離れればメイリンの鼓動は止まってしまう中で、メイリンの流していた血は固まり、綺麗な白い羽は茶色に染まっていた。
ハクレンは自身の身の傷を治す力さえ、全てをメイリンに与え続ける。
メイリンの生を感じるように意識を集中させる唇から、今この時でもハクレンは心が満たされるような幸福感が伝わっていた。
見知らぬ嘴に感じるこの幸福感がこの痛々しい瀕死の鶴がメイリンであると証明してくれる。
生きてくれるのであれば、形など構わない。
鶴のまま、交わることさえ出来なくていい。
だから…どうか…




