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重い身体はどこまでも底なし沼に沈んでいく。
腹部を蹴られた時のような痛みはなく穏やかに意識が遠のいただけのそれを、メイリンは幸せな死だと思った。
苦しまず迎えられる穏やかな死。
メイリンはそれを受け入れたかったが、誰かがメイリンの裾を引っ張るのだ。
真っ暗な中でメイリンは振り向いた。
「メイリン!」
まだ半分しか開かない目に、龍王の姿がはっきりと映る。
それに落胆もしたが、それ以上に安心する気持ちがメイリンの中で溢れ出す。
「よかった…メイリン…」
まだ動けず、言葉さえ出すことのできないメイリンの頰に龍王が触れて、メイリンは静かにまた瞼を閉じた。
龍王のことが好きなのに、龍王の近くに居ると暗い闇の中に落ちそうになる。
自分はこの先どれだけ殺されそうになるのだろうか。
それならば龍心を飲んだ方が良かったのだろうか。
まるで沼から湧き上がる水泡のように色んな考えが浮かんでは消えて行く。
しばらくして戻りつつある声を振り絞って龍王にたずねる。
「…サーシャ様は…」
あの時一緒にいたサーシャは茶器に一切触ってない。
然るに犯人ではなく、むしろ同じ毒を煽った被害である可能性が高い。
「サーシャは大丈夫だ。龍には聞かない毒だ。」
龍王からそれを聞いて胸を撫で下ろしたと同時に自分だけに対する殺意を感じて胸が締め付けられた。
「メイリン、私は職を辞する。」
龍王の提案をメイリンは止めたかったが、すぐに言葉は出てこなかった。
何度も殺されそうになる番と自分の今まで慈しんできた国を天秤にかけ、龍王の顔には今も葛藤が滲んでいる。
「私は…まだ耐えられます。ハクレン様が良き王であらるよう、私も…」
その先を言わせないように龍王がメイリンを抱きしめる。
龍王がそれを口にした覚悟を知っていた。
知っていたが、メイリンは自分が我慢できるうちは八方塞がりではないと信じている。
まだ、自分が頑張れば…
いつまで頑張れば…いつまで頑張れるだろう。




