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龍王の番は人間である。

発情期は一月に一度もあるし、そうなれば龍王も最低でも三日は後宮から出てこない。

そして三月に一度地上へと龍王と共に向かう。

これは幾ら天から愛され、国を救った天子と言えど国の王である龍王を堕落させ独占しているという不満の声があるのは事実だ。

しかし、苦言を呈せば、龍王は国を冷たく突き放した。


「龍華国は我が番でも子でもない。滅びるならそれでよし。」


その冷たい表情は全てを凍て付かせた。

訊けば、病で滅びゆくこの国を見殺しにするはずだったと言う。

それを番様に諭されて再びこの地に降り立ったが、次は自らの手で国を壊す、とまで。

自らの滅びに行くのなら手助けするのが龍王の責務だとまで言った。

その言葉に恐れ慄く家臣たちだが、龍王の番がコホンと咳をするとすぐに張り詰めていた空気が緩む。


「誰しも逃れられない運命というものがあります。その運命を違えることはできませんが、その中で龍華国が平和な国であるように願っております。」


家臣が怠惰だと思っていることもまた天命であると番様は言う。

家臣たちはそのことを理解はできないが、天に愛された龍王の番様の言うことであればと、閉口する口を固く結んだ。

番様のは柔らかく笑う。

この国の伝統的な黒ずくめの衣装でその姿は目元以外見えないが、それが天の祝福のように輝いてみえるのだ。

番様が天から選ばれし使者であることは、御子のご懐妊と共に広がることになる。

ご懐妊が龍華国始まって以来の双子の御子ということで、国中が大いに歓喜した。

少産の龍の中で何とも喜ばしいことである。


「龍は卵で産まれるが、人は己の腹で卵を温めると聞いた。ならば龍の雄である私がメイリンごと温めなければなるまい。」


龍は雄が卵を温める。

龍王はそんな番様を膝に乗せて、さも理由を得たように鼻高々だったが、番様に何かあってはいけない家臣たちは右往左往していた。

そんな龍王の姿を「仕方のない人。」と番様は微笑みながら受け入れるのだ。

そんな二人の姿を見て、なんとなく皆も納得する。

あの二人こそ番になるべくしてなったのだ、と。

龍が一年かけて卵を産み十年かけて羽化するに比べて、メイリンは五年をかけて双子を産み落とした。

昼と夜がお互いに追いかけて合うような対照的な容姿をしてる双子は、一体は白い身体に黒い髪、眉間に黒い斑点をもち、一体は黒い身体に白い髪、眉間に白い斑点をもつ。

龍王はそれを見て更に泣いて喜んだ。

もう、国を背負う大儀を子に背負わすことがないと。


メイリンは我が子と番であるハクレンと共に地上に降り立っていた。

双子のユエとタオはころころと転がるように二人草原を駆ける。

もうすぐ日は沈み、夜が来る。

茜色の空をメイリンは振り返るように見つめた。

地平線に落ちる夕日と登り行く白い月。

あの時、龍珠の中で誰かの声が聞こえた気がした。

空と地の境に私は在ると。

その声に応えるかのように、今日もメイリンは夕焼けの残る空を見上げた。

この美しく、理不尽でままならない世界も、番がいる、それだけで愛おしくてたまらない。

メイリンはハクレンという番と共にこの世界を生きて行く。

応援してくださる方がいらっしゃったからこそ、ここまで書き切ることができました。

本当にありがとうごさいました。

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