.4.ジードの従姉妹(2)
その給仕の人に、昨日の食堂に連れて行ってもらうと、すでにジードがテーブルについていた。
「あ、おはようございます」
「おはよう。とうちゃんは、ちょっと朝は遅いんだ。二人で食べよう」
ジードの向かいに腰かけた。
テーブルに並べられているのは、一見するとヨーグルトになりかけの牛乳のような乳製品と、饅頭のような丸いパン……いや、饅頭?だった。
大きなお椀に入った乳製品をスプーンで掬うと、蜂蜜が入っているのか甘かった。饅頭の方は、暖かくはなく、具も何も入っていないけど、柔らかくてしっとり甘い。
わりと質素な感じだけど、とても美味しいと思った。
ジードは、饅頭を上品に一口ずつ頬張りつつ、言った。
「今日は、『人間の町』から案内するよ。君は、人間にとても興味がありそうだったから……いや、この時間なら、ちょっと行く所があるか。ユウもつきあってほしい」
「あ、はい」
僕は、もちろん何も予定がある訳ではないので、頷いた。
朝食後、二人で例の〈ブズゥーク〉に乗った。
ジードは、食事の後から、何か気もそぞろな感じで、あまり会話も弾まなかった。
〈ブズゥーク〉から、なんとなく外を眺めていると、塔の近くにまできていた。昨日、見下ろした時、ワシントン・モニュメントに似ていると思った、高くて細長い四角錐の塔だ。
その塔を中心にして、辺り一面に様々な色の花が咲いていた。まるで、花の絨毯のようだと思った。
「ここは『アドヴィーエの花園』と呼ばれているよ。ここの花は、いろいろな種類のものが、春夏秋冬、一年中、咲いているんだ」
「へえ……」
なるほど、この世界にも季節はあるのか、と思った。
やがて、〈ブズゥーク〉は、その花園から、大分、離れたところに着陸した。
「さあ、行こう」
降りて、ジードが向かった先は、花園の方だった。そのまま、ジードの後に従って歩く。
僕は、なんで花園の周囲に降りなかったのかなあ、と不思議に思った――〈ブズゥーク〉は、ただ浮かぶように飛ぶので、ヘリコプターとは違って、風を吹き下ろして花を散らすようなことはなさそうなのに。
やがて、塔の根本の近くまできた。
「ほら、あそこだよ」
唐突に告げたジードが指さした先に、女の子が花を摘んでいるのが見えた。文字通り、手に花束を抱えている。
「え? あの女の子が、どうかしたんですか?」
「美人だろ?」
「え?」
僕は、目を凝らして、女の子の方を注視した。
すると双眼鏡を使ったように、女の子がぐんと近くに見えて、眩暈がした。例の『ルグ』の力だろう。
女の子は、いわゆる八等身美人というのだろうか。すらっと腕と脚が長くて、完璧なプロポーションをしていた。
手首、足首なんかも、きゅっと細い。
加えて、まるでシャンプーのコマーシャルに出てくるような、豊かな茶色い髪をしていた。
顔を見ると、非のうち所がない面長の瓜ざね顔に、彫りの深い造形で、すらりと通った鼻筋をしていた。
これほど美しい女の子がこの世に存在するのか、と信じられないぐらい、奇麗だった。
思わず、見とれてしまう。
あ、もちろんこの世界は僕の世界とは違うんだろうけど……。
とにかく、彼女の周囲に、きらきらと光がこぼれ落ちているような錯覚を覚えるくらいの美しさ、だった。昨日から、美人の『妖精族』の給仕の女の人や神族をたくさん見てきたけど、この女の子は『別格』だと思った。
僕は、一瞬、言葉に詰まってから、ジードに返事をする。
「……たしかに、ものすごい美人、ですね」
そうだろ、そうだろう、とジードは大きく頷いた。




