第6話
俺が自警団に入った初日の夜のこと。
「え?団長の家にですか?」
「ああ……カイには教えたいこともあるからな。どうだ?」
そういう団長の顔は真剣そのものだった。
「ありがとうございます。俺も……気になってることがありました」
おそらく同じことだろうことを思いながら俺は団長の車に乗って家に向かう。
「ミアーシャさんとは一緒じゃないんですね?」
「仕事内容の違いから帰りの時間が異なるからな。ミアーシャは先に帰っているよ」
「そうなんですね」
車内は会話もなく団長が走らせる車の音だけが聞こえる。
「(たぶん団長も教えたいことって父さんのことだよな?明らかに父さんについて知ってそうなそぶりしてたし)」
だけどなんとなく聞ける雰囲気ではない。そのまま窓の外を眺めていると十数分で家に到着。
「ここが団長の家なんですね」
そこは普通のごく一般的な一軒家だった。
「(今のこの街でたぶん頂点にいるのは団長さんなんだからもっと豪邸に住めばいいのに)」
まあ下層区画と言われ政府から見捨てられたセクターDにそんな豪邸は存在しないが。
「(セクターDから誰も出ていこうとすらしないしな。慣れ親しんだ生活が一番か)」
そんなことを考えていると団長から話しかけられる。
「家族にはカイが来ることは伝えてある。妻のことは知っているな?」
「あ、はい。兄貴に聞きました」
「なら妻の車椅子を見てくれないか?最近調子が悪いらしい」
「わかりました。そういうことなら任せてください」
団長からお願いされて玄関扉を開く。
がちゃ
「おかえりなさいあなた」
そこにはすでに奥さんが玄関におり出迎えてくれていた。
「ただいまレイシュ。紹介するよ、この子がカイ・シュミットだ」
「初めまして。カイ・シュミットです。今日は家にお邪魔してすいません」
最初が肝心。丁寧にあいさつをする。
「あらあら、うふふ♪礼儀正しい子ね?そんな気を使わなくてもいのよ。初めまして私はレイシュ・リッテンスキーよ」
それはとても美しい女性だった。とても18歳の子供がいるとは思えない若い外見をしていた。
「さあ上がって。今日の料理はミアーシャが作ったんだから」
「ミアーシャが?」
団長も驚きの声をあげながらリビングへ。するとそこにはキッチンで調理しているミアーシャさんがいた。
「(ミアーシャって料理できたのか)」
少し意外に思っていると俺と団長が帰ってきたことに気が付いたミアーシャが振り返り俺をにらむ。
ギロッ!
「(やっぱり嫌われてるな~)」
するとレイシュさんの車椅子が止まった。
「あら?また止まっちゃったわ」
「またか。お願いできるか?カイ」
「はい。少し見てみますね」
レイシュさんを団長が椅子へと運び俺が車椅子を見る。
「(えっと……ここがこうなってて……ああ、これがおかしくなってるのか)」
そんなことをしているとミアーシャがこちらへと近づいてくる。
「……」
「えっと……なんでしょう?……」
じっとこちらを見て何も言わないミアーシャ。
「(車椅子の修理をしてもいいのだろうか?)」
「……それいつ終わる?もうすぐ料理ができるけど?」
「あ、ああ……これぐらいなら2.3分で終わりますけど……後にしたほうがいいですか?」
「……じゃあ待ってるから……」
そういって再び戻っていった。
「(さっさと済ませろってことね。了解)」
そうして俺は無言の要求通りにちゃちゃっと終わらせて席へとついた。
「終わらせました。あれで直ったはずですからあとで確かめてみてください」
「まあ!こんなに早く?ありがとうカイ君」
「感謝する。カイ」
団長とレイシュさんに感謝されて2人の対面に座る。おそらく俺の横にある席にミアーシャが座るんだろう。
「(まあそこまで嫌われてるわけでもなさそうだからいいか)」
そんなこんなですぐに料理が運ばれてきた。それぞれに3品があるとても美味しそうな料理。
「おお……すごいおいしそう……」
その料理を見てつい言葉が漏れる。
「でしょう?ミアちゃんは料理が上手なのよ。たまにしか作ってくれないんだけどね?」
「お母さんが言ったんでしょ?料理は母親の仕事だとか言って」
しゃべりながらミアーシャが登場。俺の横の席に座る。
「あら?そんなこと言ったかしら?覚えてないわ~」
「はあ……まったく……」
「それじゃあ食べようか」
団長の言葉から食べ始める。その料理はどれもとても美味しかった。
「美味しいです!ミアーシャさん!」
「フン……当たり前でしょう……」
「ああ、本当にとても旨い。父さんはこんなに美味しい料理は作れないからな。すごいミアーシャは」
ミアーシャはそんな団長からの誉め言葉にどこか嬉しそうにしていた。するとミアーシャは持っていた料理を一度置いた。
「その……今日はごめんなさい……あんな言い方をしちゃって……」
「この子は謝りたかったんですって」
「気にすることはない。これからも一緒に街を守っていこう」
「うん」
その光景を見て家族の温かみを実感した瞬間だった。
そして食事が終わり団長の私室へと行く。俺の目的はここからだ。
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