表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/86

第三十九話:冥府の守護者

 冥府の門が完全に開かれた瞬間、空間が震えた。

 対峙するのは、漆黒の甲冑に身を包んだ巨大な騎士。

 その手に握られた剣は、まるで闇を凝縮したかのような禍々しさを放っている。


 《冥府の守護者》——冥府の入り口を守る存在。

 生と死の均衡を乱す者を排除するためだけに存在する、自律した執行者。


「……お出迎えが随分と厳重だな」


 レイヴンは静かに呟いた。


「ええ、そうでしょうね。ここを通るということは、この世界の理を越えようとするのと同じこと。生者であれ、死者であれ、関係なく拒まれます」


 レクシアが淡々と答える。その横顔には、どこか険しい影が落ちていた。


 それも当然だった。


 この守護者は、冥府の存在そのものと繋がっている。

 もしレイヴンが「冥府の支配者」として認められていなければ、この戦いは始まる前から決して勝ち目のないものだった。


 だが——


「俺には、試すべきことがある」


 レイヴンは軽く手を掲げた。

 彼の影がうねり、そこから無数のアンデッドが姿を現す。

 骸骨兵たちが剣を振りかざし、幽鬼が空を舞い、死霊騎士が馬を駆る。

 すべてが《冥府の魔王の証》によって強化された軍勢。


「行け!」


 レイヴンの号令とともに、死者の軍勢が守護者へと殺到する。


 しかし——


「……ッ!?」


 次の瞬間、守護者が剣を振るうと、黒い刃の波動が空間を裂き、前衛の骸骨兵たちが一瞬で消し飛んだ。


「チッ、まるで大鎌で刈り取るみたいに……!」


 レイヴンは舌打ちする。

 一撃で数十体のアンデッドが消し飛ばされる。

 それほどの力を持つ相手を、真正面から打ち崩すのは難しい。


 だが——


「だったら、別の方法で行くしかないな」


 レイヴンは冷静に戦況を見極める。


 目の前の守護者は、圧倒的な力を持つ存在だ。

 だが、単なる戦闘力だけで見るなら、過去に倒したレイドボスとも遜色ないはず。


 違うのは、相手が「生者を許さない存在」であるという点——。


「ならば、俺が《生者ではない》ことを証明すればいい」


 レイヴンは手をかざし、新たなスキルを発動させた。


「《冥府の誓約》——」


 その瞬間、レイヴンの体を覆っていた魔力が変質し始める。

 生者と死者の境界が曖昧になる感覚。

 肉体ではなく、魂そのものがこの世界に同化していくような——。


「……なるほど、これが冥府の力か」


 自らが《死者》であることを認めることで、冥府の力を引き出す。

 その変化を前にして、守護者の動きが一瞬止まる。


「やはり、そういうことか」


 レイヴンは確信する。


 この守護者は「生者」を拒む存在。

 ならば、自分を「生者ではない」として認識させれば、敵意を向けられることはない。


「……お前は、俺を通すのか?」


 レイヴンが問いかけると、守護者は微かに剣を下げた。


 だが、その瞬間——


 ガキィィンッ!!


 守護者の剣が弾かれ、黒い衝撃波が空間を切り裂く。


「な……!?」


 驚くレイヴンの前に、新たな影が現れる。


 それは——


 もう一体の《冥府の守護者》。


 レクシアが息を呑んだ。


「……やはり、最初の一体だけではなかったのですね」


 守護者は一体ではない。

 レイヴンがこの先へ進もうとする限り、次々と新たな試練が待ち受けている。


「面白くなってきたな……」


 レイヴンは小さく笑みを浮かべ、再び戦闘態勢を整えた。


 そして、冥府の門の先に広がる試練へと、再び足を踏み出した——。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ