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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第55話 名前とこれから

第55話 名前とこれから


「じゃあ、みんも食事を楽しんで。私はユエルと少しお話があるから....」


『『はーい!!』』


 散り散りに子供達が散っていき、ユエルの姿を探す。


「お帰りなさい、キノさん」


「ただいま、ユエル」


 後ろから声が聞こえて来て振り向く。


 ほんのりと赤い顔をして鉄串に刺さった大きな焼き物を頬張るユエルが目に入って来た。


「かなり出来上がってる?」


「料理やお酒が美味しくて。ついついたくさん食べちゃいます。ギルドの受付さんも居ますよー」


「え、あ、ちょっと」


 手を引き、ギルドの受付嬢が居る焚き火の元に連れていくのだが、かなり酔っていた。


「キノさん連れて来ました~」


「お帰りなさい。お腹減ってません?」


 鉄板の上に置かれた串焼きを転がし、キノに聞く。


 ユエルがキノを近くの席に座らせ、自らも座る。


「何食べます? それともお酒飲みまーすか?」


「キノさん助けて下さい!! お酒飲んだこと無いって言うから試しに一口果実酒を飲ませたら止まらなくなっちゃって!!」


 小声で、キノに助けを求める。その横ではユエルがクビクビと木製のコップでお酒を流し込む。


「飲みたいのは山々。だから、この頭の傷を治療して貰えない?」


 フードを下ろすと耳の上の地肌から赤黒い血が固まっているのが見える。


 飲んでいた果実酒を吹き出し、直ぐに立ち上がる。


「何やってるんですか!? 直ぐに治療しないと!!」


 素に戻ったユエルが血相を変える。


「急に手を引っ張っていくから....」


「ともかく治療します。止血の為に編んだ髪の毛を解くので痛いかもしれませんが....」


 慌てふためき、回復の魔法が書かれた聖典を開き治療を始めようとしているとジョキンと不吉な音が聞こえて来た。


 キノがギルド受付嬢から小さなナイフを受け取り、結び固まった髪の毛を一瞬で刈っていたのだ。


「何してるんですか!?」


「血が固まっていて解けなかった。こっちの方が楽に治療できるでしょ?」


 丸太を切り出して作られた椅子をユエルの直ぐ近くまで持っていき、その椅子に座るとユエルの膝の上に頭を乗せる。


「そうですけど....」


「それに、フードを被っちゃうし」


「勿体ないですよ? 容姿が整っていて美人なのに....」


 聖典を読み上げ、傷に手を翳し治療を始める。


 頭から流れ出て固まった血液が綺麗に剥がれ傷から泡が出て細かな汚れが浮き上がり、塞がっていく。


「こんな男か、女かよく分からない体質の私を好きになってくれる人なんていない。 教会で色々な人を治療したと思うけど、こんな変わった体質の人いないでしょ?」


「いませんでしたけど....」


 最初に会った時の女性的な体つき、ダンジョンで最初に再開した男性の様に深みのある声。戦闘中に何回それを行き来したか覚えてられない程であった。


 顔合わせの際、ゲルドから初めてキノの身体について聞いた時は信じられなかったのだが身をもってそれを目撃してしまうと信じるしかない。


「それに、刈り取った髪の毛で遊べるし」


 手をチマチマと動かし、何かを編んでいた。


「もう、子供なんですか? 治療できましたよ? 他に痛い所はないですか?」


「うん? 大丈夫ありがとう」


 身体を起こし、傷が付いていた部分をさする。少しだけ髪の毛が短くなっているものの、傷など最初からなかったかの様に綺麗になっていた。


「あれ? これ?」


 ユエルが聖書をしまおうとすると違和感に気がつく。黒い先程までは付いていなかったリボン風のストラップが聖書入れに付いていた。


「遊べるって言ったでしょ? それあげる」


「クォリティが遊びを超えてます!!」


「素敵。娼婦は昔、大事な人に自分の髪の毛や爪を贈って他の客が付かない様にしたらしいけど、それみたい」


「茶化さないで下さいよ!!」


「フフ。本気にしてる。ユエルちゃんかわいい」


 そんなギルド受付嬢とのやりとりを全く気にしていない様子でキノが鉄板で温められた串焼きに手を伸ばす。


「ユエルは可愛いよね。大してお酒が強くて私に助けを求めて来る貴方も可愛いけど」


「せめて、男性の時に口説いて下さい。私、面食いなので....」


「だったら、名前教えて欲しいな。冒険者ギルドで指名するから」


「ティムです。これからはしっかり指名してくださいね」


「フーン、気が向いたらね....」


 お互いに適当にあしらい、3人だけのガールズトークを進めていく。


「私、魔物って初めて食べたんですけど美味しいですね。教会でも作れないかな?」


「冒険者ギルドと教会は相互依存の関係にあるから偶に会食でクジに当たると教会まで会食をしに行くけど、肉料理ってないよね? 本当はお肉を食べちゃダメなんじゃないの?」


「そんなこと無いですよ? 真面目な人や頭の硬いおばあちゃんとかは息が穢れるとか言って食べませんけど、大抵の人は食べます。私、お肉大好きですし、食べられなくなるくらいなら信仰を捨てます!」


 キノからの問いかけに豪快に答える。


「シスターとは思えないセリフ....。よく信仰心から得られる魔力で人を治療してるわね....」


 癒し手としては黙っていた方がいい真実を聞いたことを流すも、その事実にティムは少し引いていた。


「この料理美味しい。誰が作ってくれたのかな?」


 キョロキョロとキノが辺りを見回す。鉄板の上には薄く切られた肉に、キノがが保存食として作っておいたソーセージ、それに野菜が所々に挟まれた串焼きが、置かれており串焼きだけ馴染みがない。


「ゲルドに捨てられた回復術師の人が作ってくれてましたよ。戦闘に加えて回復、それに調理などの色々なスキルも叩き込まれてるみたいです。ギルドに持って帰るかな?」


「なるほどね」


「回復術師の人達、今は固まって別々に食事を食べてますけど、串焼きの作り方を教える時なんかは子供達と和気藹々としていて良い雰囲気でした! これからどうするんですかね? 行く当てが無いなら教会に来て欲しいけど、全員は無理だし」


「全員で20人くらい? チビ助の事もかなり可愛がってくれてる....飼い主の帰還に立ち合わない程に....」


 遠くの方でチビ助を囲って焼けた肉をあげたりワチャワチャと撫でていた。チビ助の表情はデロンデロンに溶け鼻の下を伸ばしていた。


「逆に、私達はどうなるんですかね? 情報操作で下手したら教会から追放かも」


「追放されたら、私が一生養ってあげるから大丈夫」


「キノさん、私本気にしちゃいますよ?」


「じゃあ、本気ついでにこれ返しとく」


 串焼きにかぶり付きながら一枚の羊毛紙をユエルに手渡す。


「何ですかこれ?」


「『解析』魔法の命令文の一部。訳あって盗んで借りてた」


「別にこれ、構いませんよ? キノさんにはお礼として元々渡したかったですし」


「お人好し過ぎない?」


「幼なじみを無条件に助け出すキノさんほどじゃ無いです」


「じゃあ、こっちも面白いの見せてあげる」


 外套の近くで食べかけの串焼きをチラつかせる。


 胸元あたりからバクっと外套が膨らみそれに噛み付いた。すかさず、思い切り串焼きを引っ張ると外套の本体が串焼きにへばりついて出て来た。


「あ、やべ!」


 急いで外套の中には戻ろうとするのだが、キノに掴まれ身動きを封じられる。


「へぇー、それが外套の本体....本当に魔物なんですか?」


 ティムはキノが持つ外套の本体に手を伸ばし、受け取ると弾力のある身体を引き伸ばしたり、プニプニ触ったりと感触を確かめている。


「ちょ!! 痛い痛い!」


「あ、ごめん。かなり伸びるから面白くて....「


「でも、この子魔物なんですよね? 何の魔物なんですか?」


 その二人の様子を不思議そうに眺めながらユエルが首を傾げる。


「分からない。能力的には取り込んだ素材を自分の思い通りの物に変える能力。名前を付けるなら『創造』魔法って感じだけど、そんな事ができる魔物は見たことない。ユエル的にどう思う?」


 ティムからリレーの様にそれを受け取るとじっと見つめる。


「面白いですね。生き物には解体線って言うのがあるんですけど、この子にはない。しかも、何らかの『プロテクト』の固定術式が掛かってますね」


「やっぱり?いくら『強視』でみても分かるのは表面的にどんな魔術回路を持っているかが分かるだけ。その奥にこの子を構成している本質的な回路がありそうなのに、それが見えない。『解析』でも分からないかな?」


「難しいですね。私の魔法は『強視』から派生してますし。それなら、相殺反応を試してみませんか?」


「相殺反応?」


「魔法や魔術、固定術式は性質が近いもの同士を近づけると相反する反応が生まれますよね?魔物にもそれが当てはまって、色々な魔術をこの子に食べさせて反応が出たやつが奥にある回路ってことになります。そうやって正確な特性を調べれば何の魔物か分かるんじゃないですか?』」


「それでやってみるか....よくそんな方法しってるね」


「魔物が生成した毒とかも薬とかで解毒できない場合の荒療治ですけどね」


「俺は魔物の毒扱いかよ!!」


「だって仕方ないじゃない。もしかしたら私の事食べちゃうかもしれないんでしょ?」


「食べねーよ! 俺はもっとグルメなんだ!」


「オカマ店主は食べられるって言ってたのに....」


「いっその事、これを作った人に聞いてみた方が良いんじゃないですか?」


「ティム、もしあなたが悪戯をしたとしてそれがバレる前に悪戯を仕掛けてる事を本人に言う?」


「いいませんね」


「それと同じ。これを持たせたのはそんな感じで、渡して来たからそれを暴かないとはぐらかされて終わり」


「厄介ですね。それと、この目薬あげます」


「これは?」


 ユエルから渡された小さな小瓶を受け取る。その中には僅かに緑を含んだ液体が入っていた。


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