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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第54話 真実の糧と暗闇

第54話 真実の糧と暗闇


「この階段いつまで続くの? キノ....お願いだから歩いてよ」


「無理。フラフラする。あんなに強烈な一撃をお見舞いされて、まともに歩けるわけ無い」


 華奢なエナがキノをおぶり、そのまま階段を進んでいく。


「私もかなり殴られてるんだけど....」


「非力な私が殴ったんだよ? 質が違うでしょ?」


 既にエナが殴られた顔は腫れが引き、殴られていたことがわからないほど元気になっているのだが、キノに至っては風船の様に血液が抜けていきどんどん元気がなくなっている。


「私だって殺される所だったみたいだし!!」


「思いと実力が伴ってなかったってやつ。こっちは今も危ない重症だから....」


 歩いてきた道に目をやるが、斑模様の如く赤い点々が傷の深さを物語る。


 手で抑え、止血をしているようだが上手く止まらない。


「それより、キノも私に隠してることがあるでしょ?」


「....隠し事?」


「前から頭痛持ちだったみたいだけど、最近はもっと頻繁に頭痛来てるんでしょ?」


「来てるけど、それが何?」


「キノのその頭痛は、お医者さんに精神的な物って前言ったよね? 例えば、言わなきゃいけないけど、言いたく無い事を隠して頭痛がしてるんじゃ無いかな?って私は思ってるんだけど....」


「エナは単細胞。その素直さが羨ましい」


「褒めてるふりして何か貶してる?」


「貶してるどころか、褒めても無い。でも羨ましい」


「最悪じゃん!! それで、隠してることはあるの?」


「分からない」


「どういう事?」


「頭痛がすると、頭の中で白い箱の中に自分がいる。その影を見ると誰かの後ろ姿なんだけど、それが思い出せない」


「ん? その人はエナにとって何?」


「分からない。子供みたいに無邪気な感じもするし、背が高くて大人みたいな感じもする。忘れちゃいけない人だったのに忘れちゃった」


 空虚な目でぼんやりと思いを馳せる。


「忘れちゃったなら、仕方ない。思い出すまで待つよ。まだカナミヤ事件より前のことも思い出せないんでしょ?」


「うん....。気がついたら、今の技術と住む場所があったからよく分からない」


「全く、いつもぼんやりしてるから大事な事を忘れちゃうんじゃ無いの?」


「そんなにぼんやりしてる?」


「してる。してる。最初に会った時なんて、幽霊屋敷に迷い込んだ私の口に無理やりパンを突っ込んで来たんだよ? ぼんやりどころか、無意識の内に人を殺してもおかしくない才能だよ」


「よくわからない。それより眠くなってきた。今すぐ、フカフカの布団で眠りたい....」


「何、お姫様みたいなこと言ってるの? こんな地中深くでベッドなんかある訳ないでしょ? それより、こういう時は寝たら死んじゃうって相場だよ?」


 優しい声で冗談混じりにキノが言っている事を間に受けずに流す。しかし、首に回された腕が脱力し、返事が返ってこない。ヒヤリと脂の混じった汗がエナの背筋を撫で回す。


「キノ? なに黙ってるの? 返事してよ? 私が一人で喋る痛い人みたいじゃん。 ねぇ? いつもみたいにおしゃべりしよ?」


 ゆっくりと歩き出し、諭すような声で喋りかける。


 背中からキノが感じられない虚無感が背後から迫ってくる。沼のように脚に絡みつくと、拭えない泥が身体を鉛のように重くする。


 唇が僅かに震え出し、今以上に情けない言葉を吐き出さないように一層キツく口をつぐむ。しかし、腹の底から湧き上がってくる感情は誰にも止められない。


「勝手に死ぬなよ!!!」


 言い表せない感情をその一言で吐き捨てる。僅かな光の玉で照らされた階段を力強く駆けて登っていく。


 永遠に続くのかと思える距離を涙を流しながらただひたすらに走り続ける。視界は涙で滲み、拭う為の腕でキノの体をしっかり背中に固定する。


 階段から落ちていないという確証はどこにもない。


 だが、次の足を踏み出せる一歩こそが前に進む理由となる。


息を切らし、肩を上下させても立ち止まることなく、地上を目指す。最初は豆粒ほども無かった光がどんどん大きくなり、遂には地表を踏みしめる。


「誰か来て! キノが頭から血を流してる!」


 俯いていた顔を上げ、必死の思いで訴える。しかし、眼前に広がっていたのはそんな緊張感とは程遠い光景。


 至る所で、焚き火が置かれ周りを手頃な石で囲う。その上には鉄板が敷かれ、肉やら野菜やら色々な物が焼かれ、木製の皿に取り分けると大きな口を開けてその場にいるみんなが齧り付いている。


 肉が焼ける音でエナの声は小さくなり、鉄板から出る煙で存在すらも危うい。


「あ、エナ姉ちゃんお帰り!!!」


 ソーセージを頬張っていたデンケンがいち早く気が付き、皿を持ったままエナの元に駆け寄る。

ニーナ、ジル、リヒター、ヒトミの年長組に続きそれよりも幼い子供達も一斉に駆け寄ってくる。


「みんな....? 何してるの?」


 自分のせいで怖い目に合わせた子供達に迎えられた事による歓喜と予想もしていなかった地上の様子に困惑した2つの意味で声が震える。


「キノお姉ちゃんからの指示.... エナお姉ちゃん達が地下から戻ってきたらお腹が減ってるから食事を沢山用意しといてって.... 置いてかれちゃった人共仲良くなった....」


 消え入りそうなほど優しい声でニーナが答える。


「キノはここまで見越してたの?」


「さぁな? エナ姉ちゃんの事は詳しく言われなかった。だから、地下の話が聞こえてきた時は色々と驚いたけど、別に? って感じだよな?」


「今更って感じだし、エナお姉ちゃんはエナお姉ちゃんだしね」


「みんな....」


 どんな顔をして会えば良いのか? 軽蔑されているのではないか? そんな不安で一杯だったのだが、ヒトミの一言でそれが安心に変わった。


「泣くのは良いけど、キノお姉ちゃんは大丈夫なの? 見る限りでは平気そうに見えないんだけど?」


 冷静なジルがぐったりとしているキノに気が付き、不思議そうに見守る。


「そうだ!! キノの頭がかち割れて!! 治療の魔法を使える人を呼んで!!」


「そんなに大きな声....上げないで。響くから」


 死んだと思っていたキノが背中を伸ばし、大きな欠伸をすると微睡んだ瞳で周りを見回す。


「デンケン、悪いんだけどコレに魔力注入しといて」


「はいよ。熱を音に変換して他の位置にある同じ魔石に送る固定術式を組み込んだんだけど、燃費悪いな?」


「誰もがあんたみたいに火の魔力を持ってる訳じゃないし、改良して行かないとね。発想は悪くない」


 真っ赤なキノの手からいくつもの赤い菱形の宝石を受け取り、訝しそうに顔を顰める。


「キノ....? 生きてたの?」


「だから、眠たいって言ったじゃん。少し寝てただけ....』


 ケロッとした表情でフードを被ったキノが目覚める。


『紛らわしわ!!』


 背中からストンと腕を解き落とそうとするのだが、寝起きで油断していてもアサシン独特の身軽さで綺麗に地面に両足を付ける。


『あー、馬鹿でかい声と衝撃が頭の傷に響く』


『自業自得でしょ!? 本当に死んじゃったかと思ったんだからね!!』


『勝手に思い込んでただけでしょ?』


『もう!! その減らず口、いつか友達なくすからね!』


『こんなんで失う友情なんてエナと育んで無いつもりだけど?』


『何でそんなセリフ真顔で言えるの!?』


『事実だから?』


『もう知らない!!』


 小さな子供達をかき分けていき、遠くの方の焚き火の近くに椅子代わりに置かれた木の幹に腰を下す。


 孤児院の小さな女の子がなんでそんなに顔が赤くなっているの?と聞いたのか、それを大声で否定している姿がみえた。


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