第469話 机上
第469話 机上
「このままは食べない。これにパンや野菜を付けて食べる」
「へー、そうなんですねー。先週持ってきて頂いたソーセージ、今までに食べたことがないほどジューシーで美味しかったから、また振る舞って貰える機会ないか楽しみにしてました!」
シャルが目を輝かせて鍋を火から外し、エナとハヤテが準備を進めるテーブルにへと持っていく。
「良かった。台所もありがとう」
「火を起こしたり原始的じゃなかったか?街は魔石である程度自動化されてるだろ?」
「されてるけど、私も魔力使うの下手だし苦じゃない。むしろ使い易かった。細かい所まで手入れが行き届いてた」
「そうか」
使った種火を火消し壺に入れたキノがそう言うと普段の掃除を褒められたシグの頬が赤くなる。
「何二人でいちゃついてるんだよ?」
「イチャイチャしてる!?誰と誰がですか!?キノには私がいるのに!!」
はぁはぁとエナが息を荒くしてやってくる。なぜ相手が私じゃないんだ!と言う感情の上からキノが他の人とイチャイチャしている姿を見たいと言う感情に上塗りされたせいかかなり馬鹿になっていた。
「シグ、イチャイチャするのー?」
エナの後ろからハヤテがひょっこり顔を出す。
「しない」
それに真顔で答えると野次馬二人が散った。
テーブルの上にはカラフルな野菜が食べやすいように並べられ、取り皿の前の大皿には食べやすく切られたパンが並ぶ。
それぞれが席につき、鍋の蓋をシャルが開けると湯気と共に牛乳やワインで煮込まれたキノ特製チーズフォンデュが現になる。
「鉄の串に好きな具材付けて食べて」
手本を見せるようにキノが短い二股の鉄の串にパンを付け、スコップで掬うようにチーズを付けて口に運ぶ。トロンといい塩梅のチーズをハフハフと頬張り、他の人もそれに続き甘美な歓声を漏らす。
「美味しい!先週はソーセージだったけど、今週のも美味しい!」
シャルが頬を抑えながら舌鼓を打つと何かに気付いたヴィルが小声で確認する。
その瞬間、狩人の4人の脳裏にはいつもとは比べほどにならない程細かい作業が入った先週のキノとエナ主導のソーセージ作りが記憶として呼び起こされる。
先程まで軽かった腕が止まり、キノとエナだけがチーズフォンデュを楽しむのだ。
「今回は大丈夫。チーズにワイン、牛乳でできる」
「それなら料理下手で戦力外の私でも一人で....」
「だから、チーズを作ってもらう。やり方は後で説明」
希望に満ち溢れたシグの顔が再び絶望に染まる。
「でもなんでキノとエナはここまでしてくれるんだ?」
「商人キャラバンの入国時の護衛の仕事を紹介したのは私達。外からの攻撃を弾く防壁の外に銃を付き出せば攻撃できるし、行きと帰りは高レベルの索敵魔法を持つ商人が送ってくれるし、いざとなったら守ってくれる。貴方達を襲う人は手が出せないけど、それも絶対じゃない。強いて言えば色々な生き方をできるように」
「どう言うことだ?」
キノの言葉にイマイチピンときていないヴィルが首を捻る。
「噛み砕いて言うならば、狩人の皆さんには色々な生き方を選んで欲しいってことなんだと思います」
「生き方というと?」
次はハヤテが質問した。




