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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第45話 二面性と化け物退治

第45話 二面性と化け物退治


「散々私達から色々な物を奪ったのにお姉ちゃんも奪った。許さない」


 先程までの微睡んだ口調とは対照的にハキハキと喋る。血走った目を見開くとしっかりと憎悪を向ける相手を睨む。


「許さないないと言えど、どうする気だい? 此処で君達は死ぬんだから」


 人差し指をニーナの額に向け、収束した光を放つ。


 それでニーナは少なくとも負傷する筈だった。


 地面から大人の胴回りはある太い腕を持つ土でできた手が一本現れ放たれた魔力を受け止め掌で潰す。


「は?」


「言ったでしょ? お姉ちゃんと同じ目に合わせてあげるって....」


 地面に倒れたキノに一瞬視線を落とす。ニーナの周りの地面が水面の様に平になり、空を映す。それがどんどん広がり、ポコポコと泡が出てくる。


 中から10メートルを超える巨体が出現する。足は地面の中から出てこないが、その体を支えるために地面の中からは象のように身体を支えるための指を持たない真っ平な手を持つ腕が現れる。


「何だこれは?」


「その身を持って痛みを知れ!!」


 その巨人の後ろでニーナが叫ぶ。リゾート開発を斡旋する貴族の足元の地面が水の様に流動し、足を絡め取る。


 狼狽えながら足を引き抜こうとすると土でできたいくつもの手が脚に絡み付きもがくほど身体が沈んでいく。


 狼狽え、口々に同じ言葉を叫ぶ。


「サルバドール!! どうするの!?」


「どう言うことだ!! あんな子供が何でこんな魔法を使える!? 明らかに第二強化術の域だろ!」


「ねぇ! どうにかしてよ!!」


 急に訪れた窮地に烏合達が喚き声を上げるのだ。


「いくら魔力的質量が優れていても所詮は子供でしか無い!! 集中攻撃だ!!魔力の元凶を破壊する!! 続け!!」


 サルバドールが再び人差し指を向けた。周りの者達もそれに続く。魔女を思わせる黒ドレスの女性達は懐から小さな杖を取り出し向ける。他の者達も掌を瞳に向かって広げ、臨戦態勢を取る。


「一斉に放て!!」


 その言葉の通り、一斉に光の弾がニーナに向かって放たれる。


 しかし、間に置かれた巨人に阻まれ土煙を上げる。煙が晴れるとその腹に大きな穴が開き、ヒトミと地面に横たわるキノの姿が垣間見るのだが攻撃は届いていない。


 その穴でさえも地中深いから更に泥を吸い上げ瞬時に修復していく。


「諦めるな!!」


 その穴を狙い更に人差し指を向け攻撃を仕掛ける。魔女風の女達が上空に打ち上げた幾つもの光の玉から放射状に伸びる光の筋がニーナとキノに降り注いだ。


「やったか!?」


 煙が晴れ、巨人の姿は無くなっており二人の姿も無くなっている。


 歓喜の声に満ち溢れる中で地中から真球を模した土の塊が地上に出てくると宙に浮き、嘲笑うかの様に勝利に打ちひしがれる者達の表情を映す。


「今度はこっちの番」


 バリバリと亀裂が走り、中にいるニーナの血走った目が中で浮かび、項垂れていた。


「ひっ、化け物め!! 全員逃げろ!」


 しかし、足が固定されていて身動きが取れない。ニーナの周りの地面に波紋が浮か中からは人の手がいくつも出てくる。


 人と違うのはそれが土でできていると言うのといくらでも伸びると言う事だけ。


 地表へと這い出た無数の手が傲慢な貴族の肩や脚を掴み、身動きを取れない様にすると新たに現れた手が顔面や腹部に拳を叩き込む。


 容赦や遠慮という言葉は一切似合わない。そこにあるのはほろ苦い復讐心と弱者を淘汰するだけと思っていた強者の胃もたれする程の傲慢さ。


 サルバドールの周りの人間がまた一人、また一人と倒れていき、腹部に鈍痛が走ったと思った次の瞬間には膝をついてこうべを垂れていた。


 それでも攻撃の手は止まない。


「お姉ちゃんはもっと痛かっただろうな?」


 吐いた血と土が混ざり、呪いに等しいその言葉が聞こえてくるだけだ。


「あの子は何なの?」


 キノやニーナの遥か後方に避難したユエル達もその異様さに声を飲む。


「何ですかあの子!?魔力の量もそれを扱う術式も滅茶苦茶!?」


「ニーナは成功した強化人間なんです!」


 ユエルの嘆きにデンケンが答える。


「何それ?」


「魔力因子を後天的に獲得する様に俺たちは実験されました。その失敗の中でニーナだけある意味ではその実験が成功して思考をそのまま体外に届ける能力を持っているんです!!しかも、魔力も火と土の両方を持ってる!!」


「嘘でしょ!? 思考を体内で組み立てて術式にするやり方や物質に術式を書き込むやり方以外の魔法!?」


「そうです!!しかも、ブチギレるともう止まりません!!ヒトミ、最悪こっちにも被害が及ぶ様ならゴーレムで対処して!」


「分かった!!」


 茶色い髪の毛のヒトミが壁になる様に数体のゴーレムを出現させ、大事に備える。


 遠目に見てもそれが異常であると簡単に理解することができてもそれを止めようなどと言う思いは全くと言っていいほど浮かばない。


 魔力の圧力が風の様に吹き荒れ、肌にビリビリと伝わってくる。


「痛い? 痛いでしょ!? もっと痛くしたらどうなるのかな?」


 最早最初の目的を忘れて痛めつける事だけが目的と成り果てていた。


 500年生きた樹木でさえも一撃で破壊してしまえそうなほどの今までで一番でかい巨大な腕。それが地面から現れ、一掃しようと裏拳が貴族達に向かって薙ぐ。


「助けてあげましょうか?」


「ああ。頼む」


 袖が長く丈も長いキノの外套とは似て非となる黒いローブを深々と被った誰かがサルバドールの後ろに森の中から駆け寄るとコソッと話をする。


 眼前に迫ってくる腕をいの一番に触る。


 次の瞬間、土でできた腕は一瞬で朽ち果て崩れ去った。


「何したの?」


「ん? 別に何も」


 指に挟んだ銀色の筒を空に向かって投げる。空中でカシュンと音を立てて伸びると霧のような何かが散布される。


「これで動けるでしょ?」


「あ、ああ。足が抜けた」


 地中で土の手に掴まれた足が解放され、地表の感触を確かめる。


「じゃあ、早く行きましょう」


 サルバドールを置き去りにして黒いローブの人が戦闘を歩きニーナへと近づいていく。


「いや、いやだ! 来ないで!」


 先程と同じ様に地面を水の流動化させ歩み寄る者の動きを止めようとする。しかし、地面をいくら弄ろうとしても変化しない。


「来ないでよ!!」


 遂には自分自身を守る土の殻を媒介にして棘を形作り歩いてくる人の喉元に伸ばす。鋭い先端が生身の首に突き刺さる。しかし、フードで隠せない口元が痛みに歪む事はない。


 質量が減った自身を守る土の殻が崩れ去り、中に居たキノが力なく地面に項垂れる。


「キノが可哀想だよ?」


「何で? 何でお姉ちゃんの名前知ってるの?」


「それは、家族だもん。私のこと忘れちゃった?」


 首元に伸びた棘に触れると魔力自体分解された様に朽ち果て地面へと帰る。


 ゆっくりと歩き出し、ニーナの元にやってくるとフードを下ろす。銀色の髪の毛を後ろで一つに纏めたポニーテール。いつも以上にキリッとしたその表情は別人を思わせるがその声はいつも以上に優しい鈴のように凛としている。


 子供達はその顔を見ると驚きを隠せない。


「嘘だ!何で?」


 デンケンが声を挙げて叫ぶ。驚きを隠せない孤児院の子供達。その表情には絶望が浮かぶ。


「誰なの?」


 何も事情を知らないユエルがヒトミの体を揺する様にして問いただす。身体に離れていた意識が戻った様にハッとすると口早に説明する。


「あれはエナお姉ちゃん。キノお姉ちゃんと同じく、私たちを助けて育ててくれてる人です」


「そんな人が何で敵側に立ってるの?」


「分かりません。キノお姉ちゃんの犬が指示書を持ってきて、エナお姉ちゃんは屋敷で待機の筈だったのに....」


 現実を受け入れられないのか再び身体から意識が離れるように惚ける。


 いつもと雰囲気が異なり子供達が知らないエナがニーナに語りかける。


「キノから来た作戦の後に私や貴族の人が来たのは何でだと思う?」


「偶然じゃないの?」


「ニーナ、そんな訳ないよ? 私がその作戦を漏らしたからだよ」


「何でエナお姉ちゃんがそっち側に居るの? その人達は私達の家を壊そうとしているんだよ!?」


「知ってる」


「みんなとの思い出がなくなっちゃうんだよ!」


「分かってる」


「じゃあ、何でそっち側にいるんだよ!!」


 強い言葉を掛けたデンケンが、膝を降り地面に座り込む。普段のエナを理解しながらも貴族達の味方につくエナを理解できない。


「下民がいくら足掻いても貴族を本気を出せば勝てない。だから、変な希望は見せないで潰してあげるのが優しさかなって思って情報を漏らしたの」


「それも優しさ?」


「そうだよ。今回、私たちの家がある区域の立退を迫ってきたのはサルバドール家だけだけど仮に撃退したら他の貴族の家の人に助けを求めて大隊でも組まれたら多くの人が死ぬ。それよりも、見せしめにあの区域の希望である幽霊屋敷の住人が見せしめに無惨に殺されたら他の住人も居なくなるでしょ?それが優しさ以外の何だと言うの?」


 いつものようににっこりとした表情でただ淡々と人を殺す事を正当化する理由を吐く。


「それで良いの!? エナお姉ちゃんだってここで育ったんじゃん!! なのになんでこんな事できるの!?」


「これ、なーんだ」


 胸元を開き、三日月を象った白いペンダントを見せる。先程見せられたものよりも古ぼけては居るが公爵の証であるペンダントだった。


「何でエナお姉ちゃんがそれを持ってるの?」


「少し複雑なんだけど、私は捨てられたんじゃなくて家が下民の集団に襲撃されて私だけがあのスラムに逃げ延びたの....。このペンダントの効力は爵位の維持費を納めてないから失ってるけど、私は今でも貴族の在り方の方が大事なの」


「何なのそれ? そんなの裏切り者じゃん!!」


 ヒトミが激合し、地面に手を着き土をナイフの刃の様に形を整えるとエナの腹を目掛けて思い切り突き刺す。


 手に遮られても怒りに身を任せ、刀身を突き立てる。


 そして違和感に気が付いた。身体に刃がめり込んでいっているのではなく、刀身が溶けていき攻撃が届かないのだ。


「キノの魔力中和剤は何のために作ったと思う? 私より強いみんなに対抗する為だよ」


 声を荒げる事なく、諭す様に言われ自然と涙が込み上げてくる。


 幼いながらも勝てないと言う事を察したのだ。


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