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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第35話 ショックと工夫

第35話 ショックと工夫


「何これ?急に倒れた?あんなへなちょこりんな表面上の傷しか与えられてないのに?」


「せめて、舞って言って欲しい」


「あ、すみません。でもなんで...?」


「出血性ショックって言うやつ。生き物には血液が流れてる。その中にはサンソって言う身体に必要な物や色々な栄養が入ってる。それが失われると視界が真っ黒になって動けなくなる」


「言ってる事が全然分かりません。死んだ訳じゃないんですよね?」


「試してみて」


 強引にユエルの細い腕を掴み、龍の元まで連れていく。


 手を胴体に触れされる。おっかなびっくりと触れるとドクドクと波打つ心音のような物と生き物特有の暖かさが手から伝わってくる。


「暖かい」


 寒い季節ではない。ただただ、恐怖で手先が悴み体の芯まで震えていた。それが恐怖の根源に触れると皮肉にもその恐怖が洗い流され首に咲いていた花が抜け落ちる。


 シャリーン


「生きてるでしょ?」


「うん。殺さないの?」


「世の中には2種類の魔物がいる。人を好き好んで襲う魔物と、生きてるだけの魔物。自然発生したやつは人を襲う。だけど、ダンジョンで稀に子育てをされて育った魔物は生きてるだけ...そんな子の命は無闇に奪いたくない」


 ユエルから落ちた花を一輪拾い上げ、鼻に近付ける。


「この部屋はキノさんが作ったんですよね?」


「そう。ゲルドの本性を見せる為に」


「私はどちらを信じれば良いんでしょうか?私の事を危険を顧みず助けてくれたキノさんとパーティに誘ってくれたゲルド様。私はどうすれば!?」


「危険な目に遭わせたのに、私も信じる対象に入ってるんだ。優しいね」


「はぐらかさないでください!!危険を顧みずに助けてくれたのは確かです!!』


「本当に優しいなら、私はこんなことしなかったし貴方達もこんな目に遭うことはなかったんだよ?」


「それは、強引な立退を迫ったからであって....キノさんは悪くない....悪いのは....」


 誰を信じれば良いのか?その答えは既にユエルの中で出ていた。しかし、憧れの冒険者になって初めて組んだパーティという付加価値が正常な判断の邪魔をしている。


「しー。それ以上はだめ」


「ん!」


 ユエルの口の中に緑色の飴のような丸薬を押し込む。


「同じパーティって事は良い部分も悪い部分も共有する。一人の賛美歌が、そのパーティを英雄たらしめるのと同じように、一人の悪評がそのパーティを悪とたらしめる。それを支えるのがパーティだから一人を軽蔑するような事は言わないの」


 唇から指を離し、僅かに微笑む。


「今度は私に何をしたんですか!?何か呑みこんじゃった」


「ただの毒だから気にしないで」


「毒!?でも『解析』魔法に反応しませんよ!!聖典もちゃんと持ってるのに!!何で!?」


「それは、身体に害を及ぼさないから」


 ユエルの口に押し込んだ物と同じ物を自分の口に入れ、ガリンと噛み砕く。


「ちょっと!!毒を食べるなんて正気じゃ無いですよ!!?」


 キノの胸倉を外套ごと掴み残像が見えるほどの速さで押したり引いたりする。


 片手で聖典を持ち、自分の体に解析の魔法を掛け毒の種類を調べるのだが分からない。


「痛いな!!グワングワンする。魔眼の毒を解毒する毒だから大丈夫」


「キャ!!ごめんなさい....毒の毒?」


 フードの中からユエルの腕に触手がニュルッとまとわり付きその感触に驚き、手を離す。


 パサッと、フードが降りキノの顔をマジマジと見つめる。


「キノさん、なんか見るたびに顔が違う気がします」


「午前か午後で性別が変わる特異体質だからね。ゲルドから聞いてなかった?」


「聞いてはいましたが、私を揶揄う為の嘘かと...本当なんですね。基本魔法しか使えないのに、倒してしまいましたし、無茶苦茶ですね....」


「そう?レベル50だったし、そこまで強く無いよ?」


「魔物のレベルわかるんですか!?」


「基本魔法の『強視』から得られる情報で暫定的に視覚化してるから、冒険者のレベルとは少し違うけどね。因みに私自身は23レベル。30レベルまで行ったのに、身体鈍ってる。それに、私の「強視」は壊れてて暗いところじゃなきゃ光まで良く見えて痛すぎる....」


 マジックバックの中からステータスの書かれている冒険者としてのギルドカードをユエルに掲示した。


「あんな凄い動きをしていたのに、かなり低めのステータスですね。その喋る外套レベルが高そうな魔道具ですけどそれのおかげですか?」


「俺は魔道具ってより魔物そのも....」


「うん。これは魔道具~」


 口の中に指を突っ込んで喋るのを阻害する。


「じゃあ、それを着れば私も?」


「それは少し難しい。この魔道具にも『強化』の掛けたけど、1番はマナゾーンかな?」


「体以外にも強化魔法?それよりマナゾーン?なんですかそれ?」


「これ。足を一歩前に出して」


「はい?こうですか?」


 足を一歩前に出すと、何も無いはずなのに、何か柔らかいものを踏んじゃかした感触がある。


 しかも、地面に足が着かない。


「あーあ、踏んだ」


 不敵な笑みを浮かべる。


 スライムのように踏んだ瞬間はプニプニしており、程よい弾力があった。しかし、地面に接する寸前でその感触が硬くなり先程まで踏みつけていた物とは全くの別物のように感じる。


「何ですか?これ?」


「ユエルさんも使える魔法。『放出』の基本魔法」


「え?でも、あれって敵の意識をこっちに向けたりする陽動の為に使うやつですよね?」


「そうそう。硬さを変えられるかな?って思って色々試した結果がマナゾーン』


 先程までプニプニと柔らかかった感触が急に片足脚に纏わりつく。引き抜こうと足に力を入れるがピクリとも動かない。


「抜けない?」


「魔力の動きを限りなく止めてみた。こんなこともできる」


 態とらしくキノが瞬きをするとユエルの身体が思い切り空中に飛び上がる。天井スレスレでそのまま地面へと叩きつけられそうになる。


 目を瞑り、身体に力を込めて衝撃に備えるのだが柔らかい感触が身体を包み込む。


「え?」


「どう?驚いた?」


 豆鉄砲を食らったかの様に見開かれたユエルの目。それを覗き込むのは僅かに笑みを浮かべたキノだ。


「何の魔法ですか、これ!?アサシン特有の職業魔法?絶対基本魔法じゃ無いですよ!!」


「違うよ。基本魔法の『放出』だって」


 人差し指がユエルの額に向けられ、そこからゴム毬の様な感触の球体が飛んで来た。


「ワプ!」


 パチンと着地の衝撃を和らげた身体を包み込んでいた何かが弾け尻餅を着く。


「これで『放出』って信じた?」


「取り敢えず、キノさんが意地悪って事は分かりました」


 目に見えない属性変換されていない魔力を見る為にユエルも目に魔力を込め強視を使う。


「そう。『放出』の特性って知ってる?」


「特性ですか?分からないです」


「じゃあ、教えてあげる。二つあって、残存と強度の変化。早い話、一回出せば暫く消えないし、身体から離れても強度を変える事ができる」


「それを戦闘で生かしたって事ですか?」


「そう。私は、性別によって使える基本魔法が違う。男の時は暗視、強化、印刷(マーキング)。女の時は放出、探知、遮断」


「よく、そんなんでソロプレイかませますね?」


 ただでさえ、筋力や敏捷力のステータスが最弱だったとしても器用さが有れば大体は合格できるアサシンの職業。全職業の中で唯一職業魔法が合格試験に含まれていないため、戦闘に不向きなお荷物と称され、好んでなる人なんて殆どいない。


 冒険家業を引退し、狩猟を嗜む傍らで罠作成を学んだ傍らで申請すればなれてしまうほど使えない奴が多いと揶揄される。


 なのに、基本魔法は半分しか使えない。アサシンの職業魔法も使えないそんなクズみたいな話聞いたこともない。


「だから、女の時にこの部屋に『放出』で出した球体を男の時に『強化』した体で踏みつけたり、龍の体に引っ付けて動きを抑制したりした。私たち冒険者は『強視』で魔力の流れをある程度は見れるけど魔物は見れないから効果的面」


「凄い発想ですね。呆れもしますが....自分に有利な環境を作るのがマナゾーンですか?完全に無敵じゃないですか!!私より、キノさんの方がレイドで絶対役に立ちますよ!」


「あ、無理」


 戦闘に不向きな中で編み出した闘いのやり方。それに関しては感服の念すらあったのだが、それを一瞬で否定された。


「パーティメンバーと合わせるのは好きじゃない。それに、これを膨張状態で放置しとくと魔力の流れを乱すから魔法使いとの相性が悪い」


「ひょっとして、この前プルエアさんが愚痴っていたのはマナゾーンを試したからですか?でも、今回はちゃんと魔法使えてましたよ?」


「今回はゲルドのパーティが戦っている間は小さくして、邪魔しない様にした」


 パチンと指を鳴らすと、部屋のあちらこちらで何かが弾け飛んだ様なパツンと音が鳴り響く。


「龍の身体を固定している奴も解除した。もう暫くすれば動ける様になると思うから、行くよ」


「どこに行くんですか?」


「ゲルドの本性を垣間見に」


 フードを深々と被り直し、そのため息まじりの一言は今までで1番重苦しく聞こえてきた。


(かなり昔に出現したダンジョンみたいで、古い魔物ばかり出現していたのに、新しく発生した魔物は見たことない新種だった。一体何が起こってるの?これが幽霊屋敷の近くで発生してたら....)


 幽霊屋敷の孤児が惨殺されているイメージが一瞬浮かび、それを振り払うように足を進める。


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