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[18万pv突破〕異世界逆襲談 貴族パーティから追放された平民のアサシン。屈辱を与える為の成り上がり  作者: ディケー
お家取り潰し

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第32話 私的な取引

第32話 私的な取引



 身体を伸ばし、獲物に咲いた花を歓喜の目で見る。獲物を餌として認識した瞬間だ。


「そんなに私の事を食べたいか!?一筋縄じゃいかないよ!!」


 蛇の様な威嚇から山なりに飛び跳ねユエルに飛びつく。大きな口を開け、腹をすかせた狩人の様に目を煌めかせる。


「障壁で動きを...!」


 直線的な身体に障壁を嵌め込み空中に固定する。その間に解除が部分的に終わっている背後の柵の解除を行い、ダンジョンの外からの救援を待つ。生き残るにはそれしか無い。一人でも、死に戻れていれば救援が来る可能性は高い。


 体に咲いた花の影響で出血しようともある程度は聖典の加護を受けた回復魔法である程度回復はできる。


 助かるにはそれしか無い。障壁を張ろうと聖典に手を伸ばすのだが、その聖典が見当たらない。



「嘘...?」


 眼前には龍の愉悦に満ちた龍の表情が広がって居た。


「だれか..........助けて」


 勇気を絞り出した後の残り滓。そこから出た言葉はあまりにも弱々しく自分をこうも簡単に裏切るのかと驚きを隠せない。



 暗い先、光が差さないそこはあまりにも無機質で耐え難い。その中で声のする方向を向きひたすらに走る。その先に待つのが耐え難い苦しみを齎す地獄だとしても何かが存在するという藁の様な事実に縋り付く事しかできないのだ。


 声が聞こえてくる。ただひたすらに。それがどんな声なのかは理解できない。ただ、こちらを心配しているという事だけは理解できる。


 ツンと鼻を刺す様な耐え難い匂いに無理矢理促され、目をゆっくりと開けるといの一番に入ってきたのは薄汚れた布。状況を飲み込めずに、身体を動かそうとするのだが、動かない。


 首がどうにか動き、自分の体の状況を確認する。


 清潔感のある白いベッドの上に全裸で寝かされており、下半身の重要な部分を隠す様に毛布が覆い被さっていた。


 しかし、そんな事では驚かない。筋肉質な体だが腕や脚が部分的にマダラ模様のように青紫色に変色しており、腹の中心には馬鹿でかい大穴が空いていたと思わせるように体の肉が青紫に変色して居た。


 首を少し捻ると、白い修道服に赤い十字架が書かれた帽子を被った古風なシスター数十人が回復の魔力を倍増させる革手袋を嵌め、高等治療を展開して居た。


「だれか...いる...の?」


 自分の声とは思えない程嗄れた声が出てきた。


 あまりにも小さな声だったせいか誰も気付かない。それだけ、重症の者がいるのだ。


「ゲルド様、此処がどこかお分かりですか?」


「テントの中」


「あまりにも抽象的ですな。ゲルド様4名を始めとするパーティーが挑んだダンジョンの外の治療テントです」


 巧みな馬車の操縦技術を持ついぶかしい雰囲気の年配の執事が心配そうにゲルドの顔を覗く。


「そうか......事後報告をしろ」


「わかりました。ゲルド様のパーティーがダンジョンに潜られて数時間後、本家に住む旦那様の計らいで所有する上級回復魔導士が到着し、傷付いた冒険者達を回復。殆どのものが、ゲルド様直属の冒険者を辞めたいと申し出ております。また、損害金もかなりの額になるかと....」


「なるほどな。金を馬鹿みたいに浪費した愚息の尻拭いで親父が動いた訳か....こりゃあ、しばらくの間、頭が上がらねえな。報告を続けてくれ」


「暫くして冒険者達が解散し、ダンジョン攻略を心待ちにして居た矢先、ガジン様が無残な姿で死に戻られました。上半身と下半身が引きちぎれそうなまでの傷を負い、特殊な毒を受けた状態だったので今も治療が続いておりますが助かるかどうかは五分五分。最低限治療が済みましたら、ご本人様の邸宅で療養させる手筈となっています」


「そうか...ガジンの後に...俺が出てきたわけか...」


「はい。未だにプルエア様とユエル様は帰ってきません。おそらくまだ戦っているのかと....一体、踏破済みのダンジョンで何があったのですか?最高級、新シリーズであるゴールド装備がこんな姿になってしまうとは....」


 ゲルドが寝ている横の地面には無惨にも散った鎧が置かれている。


「俺にも分からない。突然見たこともないような上位魔物に襲われた...」


 そう呟いた途端、テントの外が急に騒がしくなる。


「少し外を見てきます」


「ああ、頼む...」


 頭に霧が掛かったようにぼんやりとする。何か大切な事を忘れているようで思い出せない。何故、踏破済みのダンジョンであんな大物が居たのか見当もつかない。考えが頭の中で纏まろうとしないのだ。


「プルエア様が帰られました!!しかし、毒が身体中に周り非常に危険な状態であるそうです!」


「急いで解毒し、回復させろ!!プルエアは俺のパーティーに欠かせないメンバーだ。絶対に...死なせるな!」


『は...はい!』


 急いでテントから出ていき、現場にゲルドからの指示を伝えようとする。


 ゲルドは身体を起こし、ぼんやりと考える。毒と言う言葉に何かが引っかかるのだ。


 無惨に散った鎧の間に挟まった一枚の紙。ダンジョンの権利書。そこでようやくキノに貰った毒のことを思い出し、まんまとキノにはめられた事に気がつく。


 身体を起こし、地面に足を付ける。これ程まで身体が重かったかとうんざりする程の重力が身体にのし掛かる。足元に置いてあった毛布を身体に巻き付けダンジョンの権利書を持ちそのまま治療用のテントから身一つで出る。


「ハァハァハァハァハァハァ...」

 

 走ったわけではない。ただ、身体を起こし、数歩歩いただけでこのザマなのだ。


「誰か...居るか!?居るならきて...くれ...」


 膝を地面につき前かがみになり、胃の残留物を地面にぶち撒ける。


「ゲルド様!誰か!手を貸してください!」


 プルエアを治療するテントの中から先程の執事が飛んでやってくる。その呼びかけに呼応する様に手の空いている上級回復魔導士二人がやってきて革手袋をはめると背中をさすりながら、ケアを行う。


「まだ動けるような体ではないんですよ!?何をしようとしているんですか!?」


 再び身体を起こしダンジョンに向かって歩きだす。フラフラとまっすぐ歩く事すらままならない。しかし、それでも前に進もうとしていた。


「直ぐに動ける者を集めてくれ...金はいくらかかっても良い。腕利きの冒険者を集めてくれ!」


「今から集めるのでは時間が掛かります!最低でも3日は辛抱しないと....」


「そんな事は無理も承知だ!それでも行かなくてはならない!」


 静止を振り払い、ダンジョンの入り口へとまた歩きだす。


「そんなボロ雑巾のような身体で行っても為せる事など何もありませぬ。それどころか、今の魔力量では致命傷を受けた時に外まで戻れる術式さえ組み込む事はできますまい....」


「クッ...!」


 そこでようやく自分の体の状況を理解する。ボロボロになった体。一歩歩く毎に骨が軋み頭の中にギシギシと不快な音が響き渡る。自分の身体とは思えないほど重く、既に死んでいるのではないかと思えるほど冷たくなっていた。


 自分でも容易に理解することができる。


「だが、行かねば....」


「であれば、何故またあのダンジョンに向かおうとしているのかお聞かせ願えますかな?」


「それが道理か....分かった。だが、冒険者は一時間で熟練の者を集め、この身体を動くように治療しろ!それが条件だ!」


「分かりました。直ぐに手配致しましょう」


 手配のため、伝書鳩に書状を持たせ何処かに飛ばす。回復魔導士が背もたれのある木の椅子をテントから持ってきてゲルドを座らせ、身体を動かすのに必要な大きな筋肉の集中治療を行う。


「冒険者の手配完了致しました。期待はあまりできませんが...」


「原石の中にダイヤモンドが一つ有れば良しとしよう...」


 集中的な治療は絶大な痛みを伴う。しかし、その痛みを感じさせないように表情を取り繕う。


「そろそろ話していただきましょうか?ダンジョンに戻ろうとした理由を....」


「嵌められたんだ。このダンジョンを踏破したのはキノだ。そして、俺のダンジョンに戻りたい有用性を示したからパーティに戻して欲しいと交渉してきた」


「どうするつもりですか?パーティメンバーは4名まで。人数定員を越えてしまいますぞ?」


「そう....。だから、キノからの提案でメンバーを一人消すことにした。キノが調合した毒でガジンをダンジョンに閉じ込めるつもりだったんだが、そこで上位魔物に襲われた。今考えるとキノに嵌められたんだ....」


「一体何の為にですか?」


「パーティを追放した腹いせだろうな...もしかしたらプリーストを殺害し、弱体化を狙うのが目的かも知れん。一体、あの顔面偏差値レベルのプリーストを雇うのに幾ら教会に金を払ったと思ってるんだ!救出にも金が掛かる!クソ!クソ!」


 治療を受け余裕が出てきたのか感情を露にする。


「もし、嵌められる事が分かっていればこんなダンジョンに来る事はありませんでしたか?」


「当たり前だ!誰が嵌められると分かっている場所に赴くものか!」


「こんな屑ダンジョン、要らない。誰かにくれてやると思っておられますか?」


「ああ!!たいした資源もないようなこんなクズのようなダンジョン物好きな奴にくれてやる!!視界に入るだけでキノの顔が浮かび、虫唾が走るわ!!」


 ダンジョンの所有権の書かれた書状を力の限り地面に叩きつけた。


 それを執事が拾い上げ、ゲルドの前に差し出す。


「すまないな」


 受け取ろうとするのだが、手に力を込めそれを離そうとしないのだ。


「ダンジョンの手放しを承諾いたしました。係のものが来るまで少々お待ち下さい」


 老人である執事から女性の甲高い声が聞こえてきた。


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