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【補足】エレノア視点

【エレノア視点】




モニカの訃報をエレノアが知ったのは、彼女が亡くなってから二週間後のことだった。

王都を追放され僻地へと引っ越していたルウェリン家の悲惨な物語は、一家の一人娘モニカの自殺によって幕を閉じた。


そもそもの始まりは、モニカが通う王都学園へ国の第一王子とその婚約者の公爵令嬢が入学してきたことだった。

王子アレックスは女癖が悪く、色んな女生徒に手を出しては捨てるという最悪な男で、同学年では飽き足らず、入学半年で上級生にも手を出すようになった。

そして不運にもモニカが目をつけられてしまったのだ。


モニカは優しくて純粋な性格だった。

家が近く、母親同士の親交があったエレノアとは幼い頃からの付き合いで、病弱で人見知りのエレノアの、唯一気の置けない友人であった。

顔が良いだけで性格の悪い王子にモニカが目をつけられ、学園内で付きまとわれて困っていたということを、エレノアは知らなかった。

エレノアはモニカより三つ年下で、モニカが王都学園に通っている間、エレノアはまだ中等科にいたからだ。

学園を離れ、エレノアに会っているときには、モニカは悩みを抱えていることをエレノアには悟られないようと気丈に振る舞っていたのだ。病弱で人見知りが強く、自分にだけ安心して笑顔を見せてくれる、年下の親友に決して心配をかけないようにと。


エレノアが全てを知ったのは、モニカ一家が追放されてからだった。

そのときのエレノアの絶望の深さは、筆舌に尽くしがたい。アレックス王子と公爵令嬢オーレリアへの憎しみは元より、二人に荷担した勢力、傍観していたその他大勢の生徒、教師、保護者、そして自分自身をも許せなかった。どうして気づけなかったのか、どうして何も出来なかったのか。

病床にふせがちで、殻に閉じ籠って積極的に外の世界に触れようとしなかったせいで、親友の苦しみに気付くことも出来なかった。

相談相手にもなれなかった、打ち明けてもらえなかったのは、ひとえに自身の無力さゆえだ。


力がほしい。絶大な力が。

アレックス王子と公爵令嬢、いや、そのバックにいる国王さえも圧巻するような。


「ふむ。お前の願いはそやつらを滅ぼしたいと」


悪魔が言った。

エレノアの家ーーセジウィック家は代々、当主が必ず早死にする。エレノアの父も三十代で亡くなり、家は母親が取り仕切っている。

セジウィック家の先祖がはるか昔に悪魔を封印し、封印し続けるために子孫は未来永劫、寿命を削る羽目になったのだと、嘘か真か分からない話を祖母から聞いたことがあった。


母の目を盗んで屋敷中を探索したことのあるエレノアは、門外不出の黒魔術書の在りかを知っていた。そこには封印した悪魔の呼び出し方が記されていた。

召喚に必要な準備を整え、実際に悪魔を呼び出すまでに一年かかった。

召喚した悪魔に願いを伝えると、悪魔は言った。


「人類全てを滅ぼして良いなら手を貸そう」


交渉成立だ。

絶大な力を獲るためには、相応の犠牲を伴う。この国の王子と婚約者、国王、貴族、大勢の無関係な人間。


「知ったことか」とエレノアは呟いた。

全て滅びればいい。この身と共に。




エレノアの「人類滅ぼせるほどの絶大な力」について補足あったほうが良いよとのご指摘を受けて補足話を追加しました。

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