第7話 人気解説者は、俺を人殺しにした
追悼配信の一時間後。
黒峰ユウマが配信を始めた。
タイトルは、さらに分かりやすかった。
白河レナ事故、久我蓮の責任を考える。
黒峰ユウマは、人気ダンジョン解説配信者だった。
元探索者ではない。
現場経験は少ない。
だが、説明がうまい。
難しいログを、一般視聴者向けに言い換える。
事故の構造を、図で見せる。
誰が悪いのかを、柔らかい言葉で示す。
登録者数は百八十万人。
生配信の同接は、開始十分で二十万人を超えた。
久我は配信を開いた。
黒峰は、落ち着いた声で話していた。
「まず、前提を整理しましょう。感情論ではなく、ログを見ます」
画面には、公式発表のログが表示されている。
警告コード。
帰還ゲート認証不一致。
確認者、久我蓮。
状態、確認済み。
久我はそれを見た。
自分が見たログではない。
だが、黒峰の画面では公式資料として表示されている。
「白河レナさんは、現場で戦っていました。同行者を先に帰し、自分は最後に帰ろうとした。では、その時、安全を見るべき人間は誰だったのか」
黒峰は視聴者に問いかけるように、少し間を空けた。
「安全管理担当です」
コメント欄が流れる。
――コメント欄――
《そうだよな》
《久我だろ》
《止める役だもんな》
《帰すのが仕事って言ってたのに》
《黒峰さん整理うまい》
《感情論じゃなくてログの話してくれるの助かる》
黒峰は続けた。
「現場にいない裏方が、命を預かる怖さを分かっていなかった。僕は、そこが一番の問題だと思います」
罵倒ではない。
だから効いた。
久我を人殺しと叫ばない。
死ねとも言わない。
ただ、正義側の顔で、責任の矢印を置く。
「もし安全管理担当が止めていれば、白河レナさんは死ななかったかもしれない。もちろん、断定はできません。ただ、ログ上では警告が出ていた。そして確認済みになっていた」
黒峰は指で画面を示した。
「ここです」
赤い丸がつく。
確認者、久我蓮。
「僕たちは、怒りに任せて個人攻撃をしてはいけません。ただし、責任を曖昧にしてもいけない」
コメント欄は、ほとんど答えをもらったような空気になった。
《黒峰さんが言うならそう》
《個人攻撃じゃなくて責任追及》
《久我は説明しろ》
《安全管理担当が止めなかったのは事実》
《レナ様の死を無駄にするな》
《冷静に見ても久我アウト》
久我は、配信を閉じなかった。
自分が殴られているからではない。
黒峰が使っている資料の出所を見ていた。
画面右下。
[画面]資料提供、オーロラゲート広報部。
久我は、その文字を保存した。




