第35話 龍脈の秘跡
龍脈の秘跡と呼ばれる物はとても古めかしいものだった。
石造りの塀と石畳の上にひっそりと作られた彫像。
その彫像は1m程の大きさで鋭い顔つきのフクロウの像だった。
龍脈の秘跡というくらいだからてっきり遺跡か何かがあると思っていけどなんでフクロウなんだろう。
俺はとりあえずよくわからない光景を前にリィナに聞く。
「これが龍脈の秘跡?」
「はい。私も昔見学させてもらいましたが、いつ見ても神聖さが伝わりますね……」
「……確かに神聖っぽい感じはあるな」
「あれは架空の生き物とされています。12勇者物語で魔獣使いの勇者様が語り継いだ伝説の生き物なのです」
「え、フクロウが?」
「フクロウ?……ソラさんは見たことがあるのですか?!」
「本物はペットショップとかで見たことはあるけど、これ……どうみてもミミズクだよな?」
「ミミズク?……」
「そうそうミミズク。それより魔獣使いなんてのがいるんだな」
「はい。魔獣や魔物を巧みに手名付けて主従関係を結んで操るのだそうですが実際にやってる人は直接見たことはありませんね」
「結構希少な存在なんだね」
「はい。他の国で慣習や伝統になってたりしているそうなのですが、にわかには信じがたいです」
「へぇ……と、とりあえず。クリスさんだったかな?」
後ろに控えているギルドのサブマスターに話しかける。
「はい。いかがなさいましたか?」
「触っても……大丈夫?」
「策は設けてありますがカールさんが通した方ですし問題はございませんよ」
なんだかんだでカールは信用されてはいるようだ。
それから簡易的なロープのついた策をクリスはどけてくれる。
俺は恐る恐る龍脈の秘跡に近づいた。
「さ、触るぞ?」
ただの石像であるのに何か力のような物を感じる。
多分気のせいだとは思う。
リィナとクリスが見守る中で手を伸ばしフクロウの頭を触った。
瞬間、触ると同時に周囲の景色が変わったのだ。
何かに吸い込まれたようなそんな感覚があった。
けれど一瞬で真っ白い世界に来てしまった。
周囲を見渡したかぎり誰もいない。
「リィナ?!」
呼んでもリィナは返事をせず辺りはとても静かだった。
そしてふと昨日リィナが言っていたことを思い出す。
「ここで言ってどうなるものなのかどうかはわからないが……」
だがほかにこの変な状況を進める方法はない。
というか帰れるのだろうか。
俺は意を決して手を前に出し唱えた。
「リンク!」
すると周囲に光の線やら輪が現れたのだった。
それらは幾重にも折り重なり俺の手とつながる。
しばらく何かを構築するように光の線は動いてから女性の機械音声が響いた。
「リンク開始。個体識別完了。6番目の勇者ロード完了。機神データ照合、新規データ構築……完了。龍脈リンク開始……ロード中、ロード中……失敗、失敗」
なぜか失敗を繰り返し不穏なエラー音だけが鳴り響く。
すごい不気味だ。
「再度実行……失敗。致命的なエラーが発生。エラー要因特定不能。他の勇者とのリンク接続不可。再接続不能。これらの工程をスキップしますか?」
すると光の線が目の前で折り重なり「はい」「いいえ」の文字を作る。
そして俺は「はい」に触れてみた。
瞬間、そのタッチ操作で良かったようでシステムっぽい何かがまた動き出す。
「ステータスアナライズ完了。魔術形成不可。予備として光電子術式の展開を開始します」
そこで機械じみた成功音が響く。
すると目の前に光の枠のような物が現れるのだった。
「空中に浮かぶウィンドウとか元の世界より最先端行ってる気がするな……」
そこにはステータスの選択肢と勇者リンクという文言がある。
「ゼルで────」
いやいや、とりあえずその発想から離れよう。
その下は文字化けしていてステータスと書かれた文言以外は選べない。
仕方がないのでステータスを開いてみると枠は大きくなり光の線が次々と文字を書き上げた。
するとそこに浮かび上がってきたのはゲームでもよく見るようなステータス画面だった。
〇名:カタナシ ソラ
〇年齢:28歳
lv:3
・体力:123
・力:6
・魔力:###########
・防御力:2
・速さ:10
・耐性:###########
〇天性
・力のある凡人
・億の死を超えし者
・魔に疎まれし者
まず最初に、この世界にレベルの概念があったのか。
いやでも、リィナやほかの人たちを見ている限り何かしらレベルがあるとかそういう話はない。
ただ俺が知らないだけなのだろうか。
けどレベル3って致命的に弱いんじゃないか?
それに魔力と耐性がバグり散らかしてる。
防御2ってもしかしてダンテの攻撃かすってたりしたら死んでたのかな。
いやでもロンダインのショットガンみたいに石飛ばしてきた奴にはあたっちゃったな。
ただ、俺自身が勇者と言われそこまで強いかと言われるとそうでもないのではないかと感じている。
その感覚が事実で、このステータスを実際に目にしたからそう感じるのかはわからない。
それに天性ってなんだ。
力のある凡人ってそういえば召喚された時に言われたような気がする。
無駄に体力があるのはこのおかげなのだろうか。
億の死はもう意味がわからん。
魔に疎まれし者のせいで魔法使えない説はある。
わからないことだらけだが、こういうものは触ったりクリックしたら説明文が浮かび上がったりするものだ。
「とりあえずものはためしと……」
力のある凡人を触ってみるが何もでない。
あまりに説明不足すぎる。
というかこういう世界に説明不足も何もないよな。
魔力がなんなのかとか力がなんなのかとか速さってもう筋力次第なんだから力って言ってもいいだろうに……。
意味がわからない。
まあ人生って意味がそもそもあってないようなものだしなぁ。
生きるって何か目的があるようでいてその実は何もないんだよな。
とりあえず一旦置いておくとしよう。
これ以上みるとちょっとこの先大分不安になる。
考えてたって仕方がない。
一旦光のウィンドウに退出と書かれている文言があったのでタッチしてみることにした。
すると周囲の霧と光が晴れていく。
それからまた何かに吸い込まれるような感覚に襲われ元の場所へと戻ることができた。




