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第30話 仲間との一歩

 謙遜でもなく俺は勇者になれるような人間ではないと思っている。


 そんな人間が勇者をやらなければならない。


 となるとこの先で何が起きるのか予想が全くつかない。


 だからここで俺は無責任なことは言えない。


 前に12勇者物語があることをリィナから聞いたのを覚えている。


 昔の勇者のその後が気になった。


 勇者が良い行いをしていればこの世界の勇者の信頼は厚いだろうが……そうでなかった場合はどうしよもない。


 何を成して何をやってしまったか次第で恨まれていたりもするはずだ。


 今は誰も俺が勇者だと知らないはずだ。


 見破る方法でもあるのかはわからない。


 けれど迂闊に勇者であるなど言わないほうがいいだろう。


 それに、ここでリィナに言ったとて信じてもらえないような気もする。


 まあ、それはそれで別に良い。


 普通の剣客としてこの刀を振るおう。


「リィナ……」


「どうしましたか?」


「ごめん……今までずっとあの日アーグレンに至るまでの経緯を全部話してなかったと思うんだけどさ……」


 リィナは表情を変えずに答える。


「……そうですね。何か言えない事情があるのだと思ってました」


「察しがいいな」


 すると呆れたようにリィナ。


「察しがいいな……じゃないですよ?」


「え、え?」


「ソラさん嘘が下手なんです!」


「そ、そうか? なんとかできてたつもりでいたんだけど」


「つもり……で終わってますよ?」


 少しため息をついてからリィナは続けた。


「さっき、その刀は我が家に代々受け継いできたなんとかだ。って言ってましたよね?」


「あ、あぁ……」


「もうなんとかって言ってる時点で濁してるじゃないですか! ちょっと盗品を疑いました」


「あははは……ごめん」


「いえ、誰でも話したくないことの一つや二うくらいあると思います」


「それは……その通りだと思うよ」


「ですがパーティを共にする以上……話しておかないとまずいことなのですか?」


「たぶん……よくわからないんだけどさ」


「そうですか……その話はなんですか?」


「うん。実は俺はあの日、俺は別世界からこの世界に召喚されたんだ」


「え?」


 それから事のあらましをすべて話した。


 6番目の勇者とか言われたこと。


 召喚された時に変な声でいろいろ言われたこと。


 世界をどうのとか言われたこと。


 元から葉っぱ一枚と刀しかなかったこと。


 俺は変態じゃないこと。


 それは否定された。


 レラデランのあの城塞で魔国メールヴァレイの魔物や多分その兵士達、四大従魔と戦ったこと。


 酒でゆれてる記憶を頼りに話した。


 本当に禁酒した方がいい気がしてきたがやめられないとまらない。


 だからしょうがない。


 この話を聞いてリィナは唖然とはしていたがすぐに受け入れたような顔をしていた。


「四大従魔の件は、おおよそ見当はつけてましたが……ソラさんが6番目の勇者だなんて……」


 リィナは俯き深く考えるように視線を落とした。


 なにかまずかったのだろうか。


 その沈黙に耐えられず俺は話始めてしまう。


「そうらしい。だが特に証明する物なんて持ってないから何とも言えない」


 すると唐突にリィナは右腕を前に出した。


「手をこんな感じに開いて前にだしてみてください」


「こうか?」


「そうです。そしてリンクと言ってみてください」


「リンク……」


 だが何も起きなかった。


「何もおきませんね……」


「これは……なに?」


「勇者様がそうやって何かをされていたみたいです……」


「へぇ……伝承か何か?」


「いえ、実は私のひいおばあ様が勇者様と旅をされていたのです。そのお話をおばあ様より聞いて────」


「え? そうだったの?!」


 まさかのリィナのひいおばあさんが勇者と旅をしていた人だったとは驚いた。


「早く言えばよかった。勇者って結構いろんなところにいるものなのか?」


「ああ、いえ。そういうわけではまったくありません」


「ん? たまたま共にしたような感じ?」


「出会いについては私も幼かったのであまり聞いていないんです……」


「そうか……」


「ですが勇者様についてはいくつか知ってます」


「おお、助かる。それで知ってるというのは?」


「一つの時代に世界で勇者様は12人いらっしゃるそうです」


「12人……12勇者物語と同じか」


「はい。ですがいつどこでどのように誕生され、どうなるかはわかりません」


「へぇ……結構わからないことだらけなんだ」


「すみません。私も詳しく知ってるわけではないのですが……」


「いや、知ってることを聞けるのはありがたいよ」


「先ほどソラさんが言っていた12勇者物語はずいぶん昔のお話なのです」


「どれくらい?」


「どうでしょう……私も遥か昔とざっくりとしたことしかわかりません……」


「一致団結して魔を打ち払うようなことをすることはまずなかったと聞いています」


「じゃあ、たまに見るよねくらいの存在か……」


「その感覚も違います」


「あら、そうなの?」


「はい。私ちょっと呆然としてしまって……」


「呆然?」


「そうですよ。まさか勇者様にお会いできる日がくるなんて……それに一緒にパーティを組めるだなんて」


 リィナは深呼吸をする。


「ちょっと頭の整理が……」


「信じてくれるの?」


「信じますよ」


 即答だった。


「ソラさんがそんな嘘ついたってしょうがないですからね」


「まあ、そうだね」


「ソラさんが葉っぱ一枚でいることや常識に疎い点なんかは説得力が強いです……」


「葉っぱ一枚は全部仕方ないことだったんだが……」


「私としては勇者様方は伝説で語られる方々です。早々お目にかかれる方ではないです」


「あら、ひょっとして俺は貴重な存在?」


「そう……ですね」


 なぜかリィナは目を逸らす。


「それにひいおばあ様が共に旅をされた勇者様はその時の最期の生き残りの方だったと聞いてます」


「へぇ……じゃあ結構なおじいさんだったのか?」


「ここへ来たときはそうだったらしですね。その方はあまり表では語られてはいませんが天を穿つ滅びの邪神を地底に封印したという功績を残してます」


「そりゃすごい」


「とてもすごい方だったらしいですね」


「でもその人はもう亡くなってるとして……勇者ってこんな頻繁に現れるものなのか?」


「んー……数百年に一度勇者様が各地に現れると聞いたことはあります」


「結構な年数だね……」


「ひいおばあ様の頃からまだ年数も経ってませんしどうしてソラさんが召喚? されたのかは私の知る範囲ではわかりませんね……」


 そして俺はリィナに信じてもらえただけでほっとしてしまい勇者の情報について結構どうでもよくなってきていた。


「まあ、そのうちわかるか」


「なんだかソラさんらしいですね?」


「わからないこと考えてたってしょうがないだろ? 酒飲んでた方がましだ。今まで勇者だってのに飲んだくれだったんだし」


「お酒はちょっと控えましょ?」


「えー」


 ニコニコの笑顔が怖いが反抗せずにはいられない。


 酒は魂なんだ。


「ですが一応確かめる術はありますよ?」


「なんと!」


「はい。明日にでもルロダンにあるギルドへ行ってみましょう」


 前に聞いた冒険者登録ができると言う場所か。


 ギルドってどういう場所なんだろ。


 それぞれの店で組合を作って仕事を斡旋してるとかなのだろうか。


 でも冒険者とかファンタジーであるようなものがあるってことはそうじゃないのか。


 興味が尽きない。


「ソラさんが勇者様なら冒険者のことを知らなかったり常識に疎かったり葉っぱ一枚になってる理由がもうなずけますね。ニホンでの文化だったのですね」


「そこ強調するね……なにか勘違いしていると思うが葉っぱ一枚は人気になったことはあれど日本の文化じゃないぞ? あの精神は見習いたいが」


「に、人気……えぇ?」


「すごい疑ってる目をしてるな」


「それは、もう……ニホンって変態さんの国なのでしょうか……」


「あってるけど違うぞ? まあ、それはさておきとりあえずギルドだな!」


 こうして俺たちは一旦互いの部屋へと戻り夕食の時間までゆっくりと過ごすことにした。


 それからはとても熱い夜を過ごした。


 久しぶりの酒。


 そして宴。


 領民の人達や領内を統括する偉い人を呼んでの晩餐会が開かれた。


 集められた偉い人というのはアメリア領内に役場のような所がある。


 そこで定めた条令や支援、施策が円滑に行えるように手続きしたり整備を行う所の長のようだ。


 皆は条長と呼んでいる。


 そしてお待ちかねのヴァティス酒だ。

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