表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
119/122

第118話 どうしても目立つ

 旅支度を進めるべくリィナがギルドに行こうと言うので俺達はレラデランの街を歩いていた。


 思えばこうして4人でレラデランの街を歩くのは初めての事だ。


 確か、ここへ来た時はニャーの馬車に乗ってたし買い出しもニャーの馬車に揺られてた。


 きっとそれはそれは異様な光景だったのだろうということが、ひそひそと聞こえる声が物語る。


「勇者様方だ!」


「へぇ、アメリア様の髪の色が白くなられたって本当だったんだ」


「あぁ、ニャー様。なんと凛々しいお姿なのでしょう」


「あの赤毛の男……奇抜な恰好をしているな」


 道行く人たちの反応は尊敬ともとれるものや珍しいものを見るようなものだった。


 俺達が通り過ぎれば振り返り、正面から向き合えば脇に避けて道を譲ってくれる。


「なぁリィナ……俺達って悪目立ちしてないか?」


「悪目立ちということはないと思いますよ? ですが二人だけだった時はあまり注目されるようなことはありませんでしたのでやっぱり……」


「ああ……この二人だな」


「ですね?」


 くすくすと笑うリィナと俺は、のほほんと歩いているザンカとあちらこちらに興味を寄せているニャーを見る。


 俺は俺で人の事は言えないのだけれども……身に着けているのはニャーからもらった不思議な黒い羽織に軽めの板金が入った騎士の衣装。


 冒険者というには異質で騎士や兵士と言うには服務規律がないため、これも目立つような恰好だろう。


 対して、あの二人は異質だからなぁ。


 ザンカは黒いひもで長い赤毛を束ねて身に着けている物も赤黒い帯を巻いてすらっとのびる黒い袴。


 袴の裾はなかなかにボロボロで雪駄というのか下駄というのか……明らかに自分で取り繕ったものを履いている。


 そして上半身はそのままに鍛え抜かれた筋肉がむき出しの状態。


 つまり半裸だ。


 その横を歩くのは赤い羽根付き帽子にひらりと赤いマントをなびかせながら赤い長靴でコツコツと地面を鳴らす猫。


 目立たないと言う方がおかしい。


 これが有名になったせいなのか、それとも悪目立ちをしているせいなのかわからないけれど周りの視線が痛い。


 思うんだけどリィナはこの状況が気にならないのかな。


 俺としてはやっぱり同調圧力と言うか……やっぱり周りにたくさん人がいるとそれをつい気にしたくなるのだけれども。


 そう思考を巡らせたところで俺は想った。


 葉っぱ一枚でうろついてたやつの言うことじゃないか。


 そんな視線の雨あられをしばらく潜り抜けて歩いた先にリィナ。


「あれがギルドレラデラン支部です!」


「やっと着いた……あれがレラデランのギルドか。ルロダンのと違って結構大きいんだね」


「はい。やっぱり王都なので人通りも多いですし、お仕事も集中しますからね。それと食堂も併設されているので一日中賑わってますよ!」


「へぇ、食堂もあるんだ」


 するとザンカ。


「良い匂いがするな。飯食えるのか?」


「それはもちろんです! でもザンカさん? さっき朝食を摂ったばかりじゃないですか?」


 するとザンカは、お腹に手をあてて何かを考えている。


「ん? うん……んんん? そうだな。確かに今はまだいいな」


 クスクスと笑うリィナ。


 そこにキョロキョロしているニャーが俺の裾を引っ張る。


「人がいっぱいでなんだか落ち着かないにゃ」


「ああ、ほんと賑わっているな」


「これから冒険者の方は仕事を受けて王都の外へと出ることが多いんです。ちょうど今が人混みの多い時間帯ですね」


 周囲を見渡せば剣や盾、杖や弓、風体も剣士か魔法使いか弓使いかと様々な人達。


 そのおかげで少しは俺達の異質さも中和された気がする。


 そんなまさに異世界とでも言わんばかりの光景。


 俺も最初に、ここへ来てたらいかにもな異世界生活を送っていたのかな。


 まあ、結局なるようにしかならないんだしね。


 それにこういう所へ来るとなぜだかわくわくする。


「まあ、とりあえず中に入ろうよ」と一言声をかけて「そうですね。みなさんはぐれないでしっかりとついてきてくださいね?」とリィナ。


 俺達はリィナの後に続きギルドの扉を開けて中へと入る。


 たくさんのテーブルが設けられており各場所でいろいろな冒険者が何やら話し合っている光景が広がっていた。


 そしてあちらこちらでギルドの制服を着た人達が忙しなく作業をしている。


 そんな賑やかな中を歩いてると気になることを話している声が聞こえてくる。


「ビースティアも出入りしやすくなったおかげで稼ぎやすくなったな」やら「立ち入り禁止区画ももう無くていいんだよね?」だったり「支援金のおかげで武具を新調できた!」などなどビースティアについての会話。


 きっとマリィ王女の進めてる改革の結果なのだろうな。


 この中にいる種族は人ばかりだけれど、ちらほらとビースティアの姿もある。


 そして一番驚いたのはドワーフがいたことだった。


 ずんぐりむっくりとした筋肉質の体形という想像通りの背格好をしている。


 初めて見たドワーフにすごい見入ってしまったけど、それ以上にすれ違う冒険者達が一様に俺達をじっと注目しているため緊張してしまう。


 ああ、ちょっとあのドワーフと話をしてみたかったなぁ。


 やはりギルドでも俺達は注目の的だったようですれ違ったり俺達を見た人達は口々につぶやく。


「あの方ってレラデランの英雄様じゃない?」


「ということは、あれが勇者様?!」


「えー! すごい。本当に勇者様と英雄様が目の前に?!」


 そんな言葉が聞こえる度になんだかこそばゆい気持ちになる。


 ほんと、長い間歩いたみたいな気分にさせられようやく受付へとたどり着いた。


「ようこそ。ギルドレラデラン支部へ。ご用件をお伺いしてもよろしいですか?」


 そうにこやかに応対してくれたのは、ギルドの制服が様になっている淡い青髪の娘だった。


 対してリィナは胸から冒険者の証であるタグを取り出して受付に見せてから挨拶をした。


「おはようございます! 今日は地図を拝見したく参りました」


 なるほど地図を見るためここへ来たのか。


「地図の閲覧ですね? かしこまりました。恐れ入りますが、そちらの方々のギルド証をお見せください」


 俺とニャーもギルドのタグを取り出して見せる。


 しかしザンカ。


「なんだそれ?」


「あれ? ザンカってギルド証を作ってなかったっけ?」


「あ……そういえば作ってないような気がします……」 


「その証? がないとどうなるんだ?」


 ザンカのその疑問に対し受付の人は答える。


「そうですね……地図は国の重要機密文書でもありますので悪用等されないよう冒険者ギルドの一員である必要がありますので証の無い方は閲覧をお断りしております」


 地図が国の重要機密文書?!


 え、地図ってそんな大事な物なのか。


 そんな疑問を差し置いてリィナ。


「ザンカさんは、冒険者ギルドに加入しますか?」


「加入?」


「はい。加入すると冒険者としてのお仕事を斡旋してくださいますし依頼を遂行したら報酬もでますよ?」


「あっせん……すいこー……ほーしゅう……うん……ニャーはどう思うか?」


 ザンカはどうやら思考を放棄した結果、全てをニャーに託したようだった。


「いや加入したらいいと思うにゃ」


「わかった! 加入する!」


 即答するニャーに即答するザンカ。


 この二人、俺とリィナがいろいろやってた裏でなんだかよくわからない絆が芽生えている気がする。


「わかりました! それでは……あ。んんん……」


 なぜか唐突に受付嬢は人差し指を口元に当てて考え込んでしまった。


 それにリィナは首を傾げる。


「どうしましたか?」


「申し訳ございません。地図の閲覧について本来ならギルド職員が目視や質問し問題ないと精査した方のみに許可をだしているので……ギルド証の無い方が同行しているパーティについては許可を出していないのです」


「はい。存じております。なので新しく登録をしていただこうかと」


「アメリア様の御身分で充分問題ないのですが……それでもそちらの方のギルド証を発行してからの閲覧になるので……そうですね。一旦、上に確認してまいりますね」


「上に確認ですか?」


「はい。これですとギルド証を発行している間、アメリア様とカタナシ様、ニャステンブルク様をお待たせしてしまいますので……少々お待ちください」


 なにやら若干特別待遇の匂いがする。


 それから程なくして受付嬢は戻ってくるのと同時に上の人と思われる人物が来た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ