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第10話 ルロダンへの道のり

 道中の露店で干し肉やらクロカというパンみたいなものなどの食料を買い込み。


 背負っているリュックに入れながら進んでいった。


 その道中では先ほどと違ってアメリアとはあまり話さなかった。


 そして馬小屋のある家へとたどり着く。


 どうやらここが馬車を借りられる場所のようだ。


 長いたてがみにスラっとした足とたなびく尾。


 カツカツ鳴らす蹄。


 正真正銘の馬がいた。


 まじまじと見るとやっぱり迫力というかなんか違う。


 馬への感想は、どうでもいいのだが馬小屋に並べられている馬を眺めているとアメリアが「何をしているんだろう。この人」と言わんばかりの視線を俺に向けていた。


「それでは馬車を借りてきますので……ここで待っていてくださいね?」


「お、おう」


 人々の行き交う広場の中央には噴水。


 壊れたり崩れてしまった建物がそこらに見える。


 本来であればとても趣深くきれいな街並みだったのであろう。


 そんな中でも空は青く澄んでいて綺麗だった。


 気温もそんなに高くなく過ごしやすい。


 湿気はなくてどちらかというと乾燥した空気の心地よさを感じる。


 アーグレン国がどういう場所でどういう国なのかを全く知らないが今は秋か春ぐらいの季節なのだろうか。


 あの日「もうすぐこの国は亡びる」なんて言っていた人がいたが今は皆とても強く生きていて滅びる感じなんてしない。


「俺がここの人達の立場だったら生きていけただろうか……」


 しばらくしてアメリアが馬車を引いた馬を連れて戻ってきた。


「おまたせしました!」


 茶色に白の斑点がはいった馬が馬車を引いていた。


 見た目は簡素な帆馬車。


 しかし車輪は木の枠なんかではなくしっかりとゴム製のような何かでできており自転車の車輪のようだった。


 すごいことにスプリングのような緩衝装置もついている。


 これが一般的なものなのだろうか。


「御車は雇わないのか?」


「何を言っているのですか?」


「へ?」


「私はあなたを雇うだけで精一杯なんです! さあ、行きますよ? 護衛は頼みましたからね」


 荷物を一通り乗せ終えてから俺も乗って馬車が走り出す。


 吹き抜ける風がとても気持ちがいい。

 

 横に流れる景色は荒れ果てた畑。


 奥には壮大な山々が見える。


 しかもその遠くには、なんと浮島も見えたのだ。


 いつか行ける日が来るのだろうか。


 本格的に異世界へと来たのだと実感する。


 エルフとかドワーフとかそんな種族もいるのだろうか。


 そういえばアメリアからまだ依頼内容しか聞いていなかったことを思い出す。


 「それで俺はアメリア様の故郷に向かうとしか聞いていなかったけど、それはどこなんだ?」


「はい。ここから西に向かったところの山岳地帯がアメリア領なんです。そこのルロダンという町に向かいます」


「へぇ、ルロダンか」


「それと私のことはリィナと呼んでくださって大丈夫ですよ。とっさの判断を強いられた時はそちらの方が呼びやすいでしょう?」


「わかったリィナ。それで、そのルロダンにはどのくらいで着くんだ?」


「この馬車でだいたい……4日でしょうか」


「4日?! すごい距離だな」


「あはは……偏狭な地にありますからね。ですがソラさんはもっと遠くからいらしているのでしょう?」


「ま、まあ……」


 墓穴を掘ってしまったがリィナはそれ以上は聞かなかった。


 そこからは穏やかな時間が流れた。


 行く道の隣を流れる川のせせらぎを聞きながら木漏れ日の美しさに浸る。


 酒屑には無い忘れてしまった感性が蘇る。


 その後、周囲を警戒しながら外に出て馬を休めつつ歩いたりした。


 それからは無事に夜を迎えて満天の星空の下で朝に買い込んだものを食べる。


 とても綺麗な星空だった。


 道中あまりリィナとは話さなかったのだがここでリィナが俺を見て、なぜか不安げに言うのだった。


「星が……珍しいですか?」


 一瞬だけ俺は戸惑ってしまったけれど素直に答えることにした。


「……珍しいよ。すごくきれいだ」


 王都の町明かりは夜まで続いているため星がこんなに綺麗に見えることはなかった。


 いや、見ようとしてなかったのかもしれない。


 パンに挟んだハムとタマゴ焼きがとても美味しい。


 加えて目の前にいるのは金髪美女の聖女様ときたものだ。


 きっとこういう時はドキドキの一つもするような場面なのだろう。


 けれど、そんなことはどうでもいいほどに空気は澄んでおり星空が綺麗だった。


「珍しいですか……きれいですよね。私も星は好きです」


「もしかしてだけどさ。星に名前はあるの?」


「星座ですね。詳しくはないのですが……あの綺麗な青色の星はセライ・エノリスと言うみたいです。セイレン達の崇める神様が象られた星らしいですよ?」


「セイレン? なんだそれは」


 再び沈黙。


 しばらくしてリィナは首を傾げながら問うのだった。


「……神下の七種族って知ってます?」


「……」 


 常識だったのだろうか。


 これ知らないとまずいのかもしれないがどうしたらいいのかわからない。


 そんなこんなとしばらく黙ってしまっていると急にリィナは笑い出すのだった。 


「ふふ。そんなに困った顔をしないでください。本当に知らないことだらけなんですね?」


「世間には疎かったもので……あははは」


「疎いってだけの話じゃないですよ? 変わった方ですね」


「よく言われる」


「いいでしょう」


 こほんっと咳払いしてからリィナは俺に神下の七種族がどういうものなのかを教えてくれるのだった。



────すごい遠い昔に神々の戦争がありました。


 それら神々は自身の創造した種族どうしで争わせ世界の覇権をとろうとしていたのです。


 ある日戦いに疲れた種族達は互いに力を合わせなんと創造した神々を打ち倒すことができたのです。


 後に残った種族は、この世界の創造主を復活させ大地に恵みをもたらし壊し合った世界を元に戻して永遠の繁栄を誓い合ったとさ。



「そんな昔話があります」


「いがみあっていた者同士で力を合わせるなんてなんか変わった昔話だな」


「魔人や魔族なんかともそうできたら今は平和なのかもしれませんね……それで残った七種族の私達ヒトとビースティア、ドワーフ、エルフ、セイレン、ドラゴナ、ピクシーが神下の7種族と呼ばれています」


「だがアーグレンでは他の種族は見なかったぞ?」


「そうですね……南のレラデランも、それに王都アーグレンと北のローゲン、東のドルダンは特に難しいでしょう……投獄か……最悪殺されてしまいます」


「どうして?」


「人種覇権国家ですので他種族は排斥されてしまっているんです。いたとしても北西のノグランという貧民街か先ほどの東の貴族特区で奴隷になってしまっているのを見るだけかと思います……」


「そうか……」


 奴隷は異世界あるあるの一つだろう。


 日本じゃ別次元の話だったが日本以外のどこかの国なら……まあいいか。


 俺も社畜だったしな。


 今まで他種族なんてファンタジーめいたやつは魔物しか会ってこなかったせいで存在をあきらめてはいたが、とてつもないファンタジー臭を感じて心が躍る。


 しかし奴隷になってしまっているのは何とも言えない。


 神下七種族とか言われて力を合わせた仲だろうに現代ではうまくいっていないのだろうか。


「さてと。そろそろ休みましょう」


「ああ」


「見張りは4時間で交互にして先に私がお休みをいただいてもよろしいですか?」


「問題ない。ずっと御車で疲れただろう?」


「久々に馬車を動かしてとても疲れました……」


 それからおやすみなさいと挨拶を交わし見張りを交代で続けるのだった。


 翌日は夜明けと共に起きて目的地へと進んでいく。


 よく見ると初めて見るような植物や花が広がる世界。


 見たことのない木。


 見たことのない空。


 馬車から降りて馬を休めながら俺は一歩一歩大地を踏みしめていく。


 しかし、その感動に浸る心は一瞬の出来事で緊張へと変わるのだった。

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