44話
※今回は少し残酷描写があります。苦手な方はお気をつけください。
(血のりの描写と生き物の死の描写です。そこまで細かくは書いてませんが、苦手な方はお気をつけください。)
アルとエルの叔母であるインさんが騒がしくも去った後、アイスを食べ終えたぐらいでルナが戻ってきて、疲れ切っているルナにちょっとお高めのアイスをお疲れ様の意味も込めてあげて、その日はそれ以上の騒ぎもなく過ぎた翌日。
朝ごはんを作ろうと台所で作業中です。
子供達もシャドウも朝はしっかり食べるので、朝から作りがいがある。
今日は甘くないフレンチトーストでも作ろうかなと考えながら冷蔵庫から卵などを取り出していると、ドンドンドンッと勢いよく朝も早い時間から扉を叩く音がする。
「ミツル!我だ!!インだ!」
ドンドンッと叩きながらさらに大きな声。
ご近所さんの迷惑になるでしょーが!!と慌てて店のドアに向かい鍵を開けて扉を開こうとすると
「ミツル!!待て!!」
慌てたようなシャドウの声、だけどすでに扉の鍵を開けてしまったので
外から勢いよく扉がひらく
「ヒィッ!!!!」
と、そこに立っていたのは血みどろのインさん。
しかもいい笑顔で、思わず引きつった声が出てしまい体が硬直してしまうが、運悪くその後ろも見えてしまう
そこには現代日本にいるホルスタインの10倍はあるだろう、どデカイ牛のような生き物が、だらんと口を開けて焦点の合っていない目を剥き出しにしたままこちらを向いていて・・・
「見るな!!」
シャドウに視線を遮られたのだけれど
「―――――――――!?!!!???!!」
遮られる瞬間それと目があってしったような錯覚に陥り、声にならない悲鳴を上げて、そのまま人生初、気絶してしまいました。
「この!!大馬鹿者が!!!」
そして、気を失う瞬間、シャドウがインさんを思いっきり殴りつけるのを見た気がします。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「ああぁぁあぁああ・・・・・」
ベッドの上でおでこから目元にかけてタオルを当てて唸っております。
なんというか、脳で処理できない衝撃的なものを見ると人間は気を失うものなんですね。初めて経験しました。
もう二度と経験したくありませんが。
「ミツルさん、大丈夫?」
「ミツぅ・・・」
子供達の心配そうな声に、大丈夫だよ〜と力無い返事をしてしまう。
ベッドの上にいる自分の両側にアルとエルが座っていて、タオルの隙間から見える二人の頭をそっと撫でる。
子供達はこんなに可愛くていい子なのに、なぜ、なぜなのか・・・。
そっと起き上がり、ベッドの下を見る。
そこには土下座をしているインさん・・・いや、もう呼び捨てでいいや、インの姿。
どうやらあの血まみれ姿は怪我したとかではなく、全て返り血だったらしく、今はきれいさっぱりしております。
よかった、血まみれのはままじゃなくて・・・。
そして横を見れば椅子に座って静かに怒ったままのシャドウの姿、その視線で人の一人や二人殺せるよねっていう視線をインに向けている。
頭を打ったりしてないところを見ると気絶した自分を支えてくれたのは間違いなくシャドウだろう。
「シャドウ、ごめんなさい。」
止めてくれたのに、現代日本感覚で知り合いだからとなんの用心もせずに開けてしまったが故のこの状況。
もし、用心していれば扉を開けるなんてことせず、迷惑をかけることもなかったというのに・・・40歳になってもちゃんとした大人になれてない自分に凹む・・・。
「いや、ミツルのせいではない、気に病むな。」
そういって、立ち上がって子供にするように頭を撫でてくれる。
その手つきがとても優しくて、なんだか泣けてきてしまうがそこはグッと堪える。
「コレの行動を予測できなかった私が悪い。そして、朝早くから訳のわからんことをするこいつがもっと悪い」
「インねーちゃん、最悪」
「さいあく!!」
土下座をしたままのインはアルとエル、そしてシャドウからの容赦のない言葉に顔は見えないが、プルプルと小さく震えているのでよほど堪えているのだろう。
でも、自分もシャドウのいうわけわからんことというのには同意です。
朝から近所迷惑だし、自分の心臓に悪いことを平気でするといい、世間の一般常識というものをこの人は知らないのだろうか?
「もう2度と、あんなことをしないと約束できます?」
まぁ、とはいっても3人に冷たい視線を送られているインに多少同情はするので、そう聞いてみると、ガバッと顔を上げて綺麗な顔に鼻水を垂らしながら涙を流して真っ赤になった目でこちらを見てくると
「約束する!!まさか、人族がこんなにもか弱いとは知らなかった。
本当に申し訳ない!!」
いや、人族というか、異世界人ですが。
この世界の人はどうかは知らないけど、現代日本人でお肉は処理をされて売られている国の人間としてはあの光景が衝撃的すぎたってだけです。
もちろん食肉加工の専門業者の方々であればここまでではないだろうが・・・さまざまな食に関わる職業の方々には本当に感謝しかありません。
「アル、エル もうしないって言ってるから許してあげようか」
シャドウもいい?って聞けば、ミツルが許すなら、と承諾してくれる。
アルとエルももうしたらダメだからね!!とインに一言。
「だが、しばらくはこの店に来ることは禁止だ」
そしてシャドウの一言に、インは崩れ落ちる。
アルとエルに会えなくなるのがショックらしい。
「い、いつまでだろうか・・・?」
「1ヶ月。ただし、お前の行動しだいではさらに伸ばす。」
シャドウのその言い方だと、行動次第では挽回できるってことだね。
それに気づいていないらしいインは1ヶ月・・・と言って落ち込んでいるが、わざわざ言わないことにする。
一般常識を知らないっぽい彼女が自分で気付いて、考えなければ意味がないからね。
多少、仕返しの気持ちもありますが。そんなに心は広くありませんので。
その後、お店の外に追い出されたインは見えないようにカーテンで遮られていたが外にあの巨体が置いたままだったらしくそれを担ぎながら冒険者ギルドへ行ったそうです。
外に血だまりとかあるんじゃ・・・と不安に思ってたら、そこはシャドウが他の妖精に指示を出し、魔法で綺麗に浄化してくれたそうです。
よかった・・・本当によかった。血だまりがあるとかだと外に出れないところだった・・・。
ご近所様にはイン自らが謝罪に回るとのことなのだが心配なので、後でクッキーを大量に焼いて持って行っておこう。
気絶したということで、今日は安静にということで作業をすることを禁止されたので明日、アルとエルに協力してもらえるか聞いたら作る!と嬉しそうにOKをもらったので、今日はシャドウの言葉に甘えて、安静にすることにする。
ご飯はどうする?と聞いたら、買ってくるから心配するなと再び頭を撫でられる。
優しい手つきに、なんだか恥ずかしくなってしまうが、シャドウに他意はない。
ただ、心配してくれているというだけだ、なので素直にありがとうといって、アルとエルと共に部屋でゆっくり1日をすごしました。
ただ、今日、学んだ大事なことは、インが来たら最大限に警戒しようということです。
読んでいただきありがとうございます。(*^^*)
インはトラブルメーカーです。
彼女が一般常識を知らないのはさてさて、何故でしょうね( *´艸`)




