17話 トルート村(6)
竜人族とは、竜の姿から人間の姿になることが出来、その逆で人間から竜になることもできる。
竜人族は他種族とあまり干渉せず、森の中に住居を作っており、その姿を見るのも珍しいとされている。
アルヴァノ王国にも竜人族は1%も満たない数しか住んでおらず、その姿を生涯見ることが出来ない人もいるという程だ。
竜人族は戦闘部族ともいわれており、戦闘に特化した力を持っていて、喧嘩をした時にはほぼ100%竜人族が勝つとまでいわれている。
その竜人族にユウマは一時だが、互角に戦っており普通ならあり得ないことだ。
その当人はというと、今はぐっすりトルート村の家のベットで眠っている。
ユウマが倒れてから、エレナがユウマをおんぶしてシーナの家のベットに運んだのだ。
「いつになったら目を覚ますんでしょう?」
「もしこのまま目が覚めなかったら………」
「それはないと思うのじゃ。最上級の回復ポーションを使ったのじゃ。死ぬことはない」
エレナ達はシーナの家のソファーに座り、ユウマの心配をしている。
初めに出されたコーヒーにも、一切手を付けずに冷めきっている。
「あの、さっきから気になってたんですが、シーナさんはどこに行ったんでしょう?」
「さぁ〜? ゆっくりしててって言ってからどっか行ったけど」
「まぁ、ゆっくりしてたらいいんじゃないかの〜」
ディアはソファーに背中を預けて、静かに目を閉じる。
エレナとアインもソファーにもたれ掛かり、一度目を閉じて気持ちを落ち着かせる。
✼
「う〜、ん」
ユウマは重い瞼をゆっくりと開き、目の前に寝ているシーナを見る。
「ん?………はぁ〜!!!」
ユウマはガバっと起き上がり、何故か隣に寝ているシーナを見る。
ユウマの声に気づいたシーナは、ゆっくりと起き上がる。
「おはようございます〜」
「いや、おはようじゃねーよ! なんでシーナが隣に………って! なんで下着なんだよ! 服くらい着ろ!!!」
ユウマは白い下着姿のシーナを、家中に轟くような大きい声で注意するが、大したシーナは目を擦ってあまり聞いていないようだ。
ユウマの声を聞いたエレナ達は、急いでユウマとシーナがいる部屋を勢いよく開ける。
そして3人ともポカーンと呆然と立ち尽くす。
「え〜と、なんでシーナさんがいるんですか?」
「それに同じベットで」
「しかも下着姿じゃ」
3人はシーナをジッと見ると、シーナはこうなった経緯を話し始めた。
「え〜と、ユウマさんがベットで気持ち良さそうに寝てたのを見てると〜、なんだかこっちまで眠たくなって来てしまって〜、そのまま寝ちゃったんです〜」
「なんで下着姿だったんですか?」
「寝るときはいつも下着姿で寝てるんです〜」
シーナはおっとりした様子で微笑みながら話し、服を着はじめる。
シーナが服を着るのを待ってから寝室から出て、リビングへと皆で行って、シーナが冷めたコーヒーを入れ直す。
「とりあえずこのまま帰るって方針でいいか?」
「大丈夫です」
「いいんじゃない」
「そうじゃな」
皆ユウマの提案に賛成するが、それよりも気になることをユウマが見つける。
「ちょっと待て。なんでディアがいるんだ?」
「なんでって、お主が倒れている時にちゃんと言ったのじゃ。お主と共に行動すると」
「その時俺、意識なかったんだけど」
あの時のことを思い出し、ユウマは苦虫を潰したような顔をする。
「え〜と、なんで俺達と行動するのか理由を聞いてもいいか?」
「うむ。妾と少しの間でも互角に戦えるものは今までいなかったのじゃ。だが、お主は少しの間でも妾と互角に戦うことが出来たので、お主に興味を持ったのじゃ」
「そういうことか」
ディアは竜人族の長の娘なので、村の中では2番目に強い。
故に互角に戦える相手など、今まで村の長しかいなかったが、ユウマと出会い、自分と互角に戦える相手を見つけたのだ。
このチャンスを逃すものかと、ディアは考えたのだ。
「ディアの理由はわかった。それで、エレナとアインは承諾したのか?」
「はい、しました」
「竜人族が仲間になってくれるなら心強いし」
ユウマの問いかけに2人は首を縦にふる。
「2人がいいなら俺もいいぞ」
「本当か⁉」
「ああ。ディアは強いから頼りにしてるよ」
ユウマはディアの肩に手を置いて立ち上がり、出口に向かおうとするが、それをシーナが止める。
「ま、待ってください〜。私も一緒に連れて行ってください〜」
「え? シーナも?」
「はい〜。村長からの許可も貰いました〜。荷物もまとめてあるので、いつでも出発出来ます〜」
シーナは荷物が入ったバックを背負い、いつでも出発出来る準備を整えていた。
だが、いくら出発準備が出来たところで、ユウマ達の許可を得ないとならないのはわかっているようで、ユウマの様子を伺っている。
「皆はどう思う?」
「戦うことが出来ないなら、正直足手まといです」
「それは確かにそうね」
「戦いこそ全てなのじゃ!」
皆シーナが戦えないことを棚に上げて話していると、シーナがおずおずとユウマ達に質問する。
「皆さん、どこで寝泊まりしてますか〜?」
「どこって、宿屋だけど」
「実は私、アルヴァノ王国に家を持っているんです〜」
「「「「………はぁぁぁ!!!」」」」
ユウマ達は同時に驚いたように声を上げてシーナを見るが、シーナはきょとんとしたように首を90度に傾ける。
実はユウマ達も家を買おうと不動産屋を訪ねたが、金貨数百枚から数千枚かかるので、買うのを諦めたのだ。
その家をシーナが持っているというので、ユウマ達は驚いているのだ。
「友達が私にくれたんです〜」
「家をくれる友達って、どんな金持ちなんだよ」
「実はシーナさんって、凄い人なのかも」
ゴクリ、とエレナはつばを飲み込み、シーナを見る。
ユウマはくしゃくしゃと頭を掻きながら、シーナが仲間になるメリットを考える。
まず1つに、家を手に入れることができること。
これはユウマ達にとって、大きなメリットになる。
いつまでも宿屋で宿泊していると、宿泊代がかかり生活費にお金が回せなくなる。
だが、家を手に入れることによって毎日の宿代がなくなり、毎月の家賃だけで済むのだ。
これはユウマ達にとって、かなりのメリットになる。
そして2つ目は、家事をしてくれることだ。
エレナとアインは共に、家事が全くといってできないので、ユウマとしては正直凄くありがたいのだ。
「確かにシーナを仲間にすることで、得られるメリットは大きいな」
「確かにね」
「そうじゃな」
ユウマの答えにアインとディアは頷いて、それに続いてエレナも頷く。
するとシーナはパァ、と笑顔になる。
「シーナ、俺達と一緒に来ないか?」
「はい〜! よろしくお願いします〜」
シーナは嬉しそうに微笑み、その顔を見たユウマ達も自然に笑顔になる。
これでまたユウマの仲間が増え、合計で4人となったユウマ達は、アルヴァノ王国を目指して旅立つのだった。
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