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秒速100m  作者: 楼榮 槐
1巻
7/23

異力(イリョク)×勝負


「ドン!!」

 流石さすがだ、峰里ミネサト先輩。柘榴ザクロは走りながら思った。一歩分、峰里先輩の方が速い。でもそう思った瞬間、何かがプツンと切れたように、自分のスピードが変わったのを感じた。



 おいおい嘘だろ!?峰里は自分の目を疑った。後ろから迫ってきた足音に気づき振り向いたが、そこには柘榴の姿はなく、自分の歩幅の二倍は先にいた。

「そうはさせねぇぞ」峰里は呟き、更に加速した。しかし、柘榴には近づくどころか遠ざかる一方で、ちっとも差は縮まらない。まるで時の悪戯いたずらで…自分だけが止まっているようで…

「ゴール!!」その声で、自分がゴールを過ぎたことに気づいた。自分とゴールまでの距離なんて関係なかった。見ていたのは柘榴。それも自分をやすやすと抜き去った後輩。

「マジかよ…負けたのかよー!!」いさぎよく負けを認めた。認めないようならば最初から誘わなければいい。どこかの先輩は、手加減を理由に、自分が負けたことを認めなかった。そんな奴になりたくない。認めなければ自分も前進するはずがない。ならばいっそ、自分のこころざしに従いたい。

     


「すごいなあ。峰っち先輩に勝ったんやで!!」隼都ジュントが柘榴にタイムを知らせるために、目を爛々(らんらん)と光らせて近づいてきた。

「ああ…」

「柘榴?」もっと喜べよというように、隼都は眉をよせる。

峰里先輩に勝った。さっきの感覚を思い出す。あの切れた感じは?

人間の限界線っていうのがあるとしたら、その線が切れた感じ?つまり人間を超えたという…


もしかしたら、この力さえあれば部長にだって勝てるかもしれない。いや、全国大会進出だって夢じゃない…!!


でもどうして―?心の中に問いかけてみる。

どうして…嬉しくないんだろ―?




 目を見開いたまま硬直している柘榴に、

「まーたまた~!嬉しすぎて言葉も出ないってかー?幸せな奴だな!!」と、隼都は背中にど突いてきた。

ドサッ…鈍い音が柘榴の背後で聞こえた。

「おい!!小東!!」いち早く気づいた峰里が隼都を揺さぶる。柘榴は動けなかった。すぐに気づいた。今、自分の手に触れたのだと。自分のせいで隼都は倒れたのだと。その姿を、茫然と見たまま、一歩も動けなかった。いや、本当は自分が化け物に見えて動けなかったのだ。

「柘榴!!先生呼んでくれ!!…柘榴!?」柘榴は、もう目を見開いてはいなかった。光が眩しいように、目を細めている。その瞬間、気を失って倒れた。





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